北アメリカ | 0から始める高校地理まとめ

北アメリカの単元では、特にアメリカが重要になってきますので、他国以上に細かく内容を見ていきます。もちろん、カナダとメキシコも北アメリカを構成する重要な国となりますので、基本的な内容を押さえていきましょう。

北アメリカ_0から始める高校地理まとめ

はじめに

北アメリカに位置する国は他地域と比較すると少なく、地誌の対象として出題されやすいのが、アメリカ、カナダ、メキシコの3か国となります。ただし、アメリカについては、世界を牽引する大国であるため、どの国よりも取り扱う内容が豊富でかつ濃くなっていますし、出題されることが多い点が特徴です。
また、北アメリカの国々は様々な民族が共存して暮らしていますので、それぞれの民族にはどのような文化的背景があるのかを押さえていく必要があります。特に、先述の3か国をはじめとして、ヨーロッパ諸国の植民地支配を受けていた国々がほとんどであるため、それらの文化が引き継がれている点を頭に入れておきましょう。

北アメリカの位置

北アメリカ

北アメリカの国々

アメリカ

アメリカは、あらゆる面で世界を牽引する大国です。先述の通り、細かく出題されやすい国ですので、様々なテーマを一つずつ見ていきます。首都はワシントンD.C.です。

  • 地形

アメリカの地形は場所によって、大きく特徴が異なりますので、問題で出題されやすい傾向にあります。アメリカ西部は、環太平洋造山帯(新期造山帯)に属する地域で、ロッキー山脈に代表されるように、急峻な山地が広がっています。アメリカ中央部は、平坦な地形が広がっている草原地帯が構成の中心となっており、カナダの国境付近には氷河の浸食を受けて形成された五大湖があります。アメリカ東部には、古期造山帯に属するアパラチア山脈を中心に比較的なだらかな地形が広がっています。

  • 気候

こちらも地形と同様に、場所によって大きく特徴が異なってきますので、特に狙われやすい点を押さえておきましょう。
アメリカ西部は、ロサンゼルスやサンフランシスコ、シアトルに地中海性気候(Cs)、ロッキー山脈の麓周辺はステップ気候(BS)が広がっている点に注目しましょう。
アメリカ中央部の中でも、ロッキー山脈の東麓は偏西風の風下になるため、ステップ気候(BS)、中央平原周辺は温暖湿潤気候(Cfa)、五大湖周辺は冷帯湿潤気候(Df)が広がっています。
アメリカ東部、特にニューヨークやボストン、ワシントンD.C.などの都市が密集している地域は、温暖湿潤気候(Cfa)に該当します。

  • 農業

アメリカ本土が広く、その地域によって土壌の性質や気候が大きく異なるため、その土地に特性に合わせた農業(適地適作)が行われています。各地で行われている農業がどういった特徴を持っているのかが出題されやすい傾向にあります。
農業分布を理解する際には、どのような気候が分布しているのかを押さえなければいけませんので、気候と併せて理解することが大切です。

西海岸では、地中海性気候が広がるサンフランシスコ周辺では、夏にオレンジやコルク、オリーブなどを栽培する地中海式農業が行われています。

ロッキー山脈の東麓では、放牧(牧畜)が盛んに行われています。これは、乾燥していることから、あまり水を必要としない放牧が、気候の性質に適する為です。
アメリカは、世界トップクラスの畜産国で、低価で良質な肉牛を大量生産しています。これは、広大な農地で、大型機械を利用する生産性の高い手法で生産が行われている点と、フィードロットと呼ばれる施設で集中的に家畜を太らせる飼育方法が用いられているためです。

中央平原周辺では、混合農業が行われています。その中でも北部ではトウモロコシの生産んが非常に盛んで、コーンベルトと呼ばれます。

五大湖周辺は、冷帯が広がっているため、主に酪農が広がっています。これは、冷涼な気候のため、他の農業が展開しづらい点であることや、シカゴやデトロイトといった大都市に近いことから新鮮な乳製品を輸送しやすいというアクセスの良さが要因となっています。

北緯37度未満の南部では、綿花の栽培が盛んです。これは、アフリカから連れてこられた黒人奴隷を利用したプランテーション農業が所以です。
しかし、現在でも、綿花の単一栽培が大々的に行われているため、農業の複業化を目指し、大豆やトウモロコシの生産も拡大しています。

なお、アメリカでは、西経100度を境に、農業分布が大きく変わります。これは、降水量の違いが原因となり、西経100度以西では、年間降水量500㎜未満、以東では、年間降水量500㎜以上になることから来ています。
そのため、西経100度以西は、乾燥地域(グレートプレーンズ)が広がっていますし、以東では、湿潤地域(プレーリー)が広がっています。
この降水量の違いから、農業分布にも相違が生じるというわけです。

このように、世界最大の農業国としての地位を築いているアメリカですが、様々な課題を抱えているのも事実です。

例えば、降水量の少ない地域では、地下水を円形に噴出するセンターピボットが普及しています。この設備のおかげで、農産物の生産量は比較的に拡大しましたが、地下水の汲み過ぎによる土壌の浸食や塩類化が発生しています。また、標高差の大きい土地が多く、土壌の流出が起こる可能性を考慮し、等高線に沿った農地開拓が行われています(等高線耕作)。

  • 工業

アメリカでは、工業の歴史に焦点を当てた問題と、どういった地域でどの種類の工業が発達しているかを押さえておくことが大切です。

まず最初に工業化が進展した地域は、五大湖周辺となります。この付近には、メサビ鉄山アパラチア炭田が位置していたことから、鉄鉱石と石炭が豊富に採れたため、ピッツバーグやクリーブランドでは鉄鋼業、デトロイトでは自動車工業が発達しました。

しかし、鉄鋼業においては、徐々に生産量が低下してきたり、自動車においては、国際競争が激しくなったりしたことから、五大湖周辺の産業は徐々に衰退していくことになります。

1970年代に入ると、サンベルトと呼ばれる北緯37度以南の地域で、工業が発達していきます。
これは、未開発の土地が多く地価が安いことや、黒人奴隷が多くいたことから北部と比較すると人件費が安いこと、メキシコ湾岸で豊富な石油が産出されるなど、様々な要因が重なったためです。

初期に発達した北部の工業地域は、サンベルトに対し、スノーベルトフロストベルト)と呼ばれます。

なお、サンベルトの位置するアメリカ西海岸・サンノゼと付近には、AppleやGoogle、Facebook、インテルといった世界的なIT企業や、スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校といった学術機関が集積しています。この周辺は、世界的なIT企業や半導体産業の集積地となっており、シリコンバレーと呼ばれます。

その他にも、シアトルでは2001年までボーイング社の本社(現在はシカゴ)があったことから航空機産業、ヒューストンでは沿岸で産出される石油の影響で石油化学工業、東海岸のボストンやニューヨーク周辺はエレクトロニクス・ハイウェイと呼ばれており、電子工業が盛んです。

  • 民族・人種

アメリカには、元々ネイティブアメリカン(インディアン)と呼ばれる先住民が住んでいましたが、大航海時代以降、ヨーロッパ人による入植の影響を受けました。
イギリスの植民地支配を受けていたことから、現在でも白人の割合が多く、WASPが現在でも政財界で大きな力を持っています。

WASPとは、white(白人)、Anglo Saxon(アングロサクソン系)、Protestant(キリスト教プロテスタント)に該当する人々を指します。

また、メキシコ湾岸沿岸に位置する南部では、アフリカ大陸から連れてこられた黒人奴隷の子孫が多いため、黒人の比率が高くなる点が特徴的です。

メキシコとの国境付近は、ヒスパニックと呼ばれるメキシコや中米からのラテン系移民が多くなっています。

このようにアメリカは、様々な民族が共存し、その民族の伝統や文化を尊重する社会となっていることから、人種のサラダボウルと呼ばれます。

カナダ

カナダは、北アメリカ大陸北部に位置する国で、ロシアに次いで、世界で2番目に広い面積を誇る国です。首都はオタワです。

面積は広大ですが、その大半は森林や山地、または永久凍土となっている点にも注目しましょう。

カナダは、アメリカと同様に、イギリスの植民地支配を受けていたため、いまなお、イギリス文化が色濃く残っています。例えば、人種の大半が白人で構成されていたり、公用語が英語であったりするなどが挙げられます。
ただし、カナダ東部のケベック州はフランスの植民地支配を受けていたことから、いまだにフランス系の住民が多く在住しており、公用語にはフランス語が設定されています。
ケベック州は、文化や民族という観点の違いから、1995年にカナダからの独立を問う住民投票が実施されましたが、僅差で否決されました。

カナダでは、寒冷な気候が広がっているため、あまり盛んではありません。しかし、アメリカと面する南部では、春小麦(春に種を蒔き、秋に収穫する小麦)の栽培が広く行われています。

カナダの工業には、あまり焦点は当てられませんが、水資源が豊富であるため、アルミニウム産業が発達している点だけ押さえておきましょう。これは、豊富な水を利用した水力発電の恩恵を受けているためです。

また、カナダ北部に位置するヌナブト準州は、先住民であるイヌイットによる自治が認められている州です。このように、特別な措置が取られているのは、ヌナブト準州ではおよそ85%の住民がイヌイットであり、彼らが独自の文化と伝統を保護するように訴えてきたからです。

メキシコ

メキシコは、アメリカ南部に位置する国で、1億人以上の人口を擁する大国です。首都はメキシコシティで、人口の一極集中が進む首位都市プライメートシティ)となっています。

メキシコは、スペインの植民地支配を受けていたため、公用語にはスペイン語、信仰されている宗教の大半はキリスト教カトリックなど、様々なラテン文化が見られます。
メキシコは、地理的には北アメリカに分類されますが、文化・民族的な観点から観ると、ラテンアメリカ(中南米系統)に分類されます。

人種面で見ると、白人とインディオ(先住民を指す。インディオはスペイン語で、既出のインディアンは英語が由来)の混血であるメスチソが多くを占めています。

首都のメキシコシティは、高原の盆地に位置しており、自動車から排出されたガスなどが溜まりやすいため、光化学スモッグの発生による、都市の環境汚染問題が深刻化しています。その他にも、人口の一極集中により、生活環境や公衆衛生が悪化、都心や山の斜面には、スラムが形成されています。

メキシコは、メキシコ湾岸で豊富に産出される石油の影響から、石油に大きく依存したモノカルチャー経済となっています。そのため、早急な工業化が課題となっており、後述の自由貿易協定やマキラドーラ(税制などを優遇する地区もしくは措置のこと)などが設けられました。

NAFTA

1992年に、アメリカ・カナダ・メキシコの3か国間では、互いの貿易促進や経済発展、公平な国際競争を実現するために、北米自由貿易協定(NAFTA)が締結されました(発効は1994年)。
この協定により、3か国間での貿易が活発となり、経済発展の躍進に貢献し、中でも、メキシコに大きな恩恵をもたらしました。
貿易が活発化している各国ですが、アメリカは世界最大の貿易赤字国となっており、2018年には約100兆円の貿易赤字となっています。貿易赤字を解消するために、特に大幅な貿易黒字を計上している中国や、結びつきの強い日本には、強硬な外交交渉を推し進めています。

さいごに

以上で、北アメリカの単元は終了となります。他の地域と比較すると分かりますが、一国に大きく焦点が当てられられるのは、本単元で扱ったアメリカと中国くらいと言っても過言ではありません。それだけ、現代においては、大きな存在感を放っているアメリカですから、様々なテーマで問題が出題されるというわけです。ですので、テストや大学受験で出題されたアメリカの問題を、繰り返し演習することで、出題傾向の理解や知識の定着を図りましょう。
また、カナダやメキシコも、アメリカと同様に、北アメリカの地誌が扱われる際には、必ずと言って良いほど出題される国となりますので、それぞれの特徴を理解しておきたいところです。
なお、北アメリカは先述の通り、文化や伝統、言語に至るまで、ヨーロッパの影響を色濃く受けていますので、その点を理解して学習を進めると、より一層効率的に知識を吸収出来るでしょう。これは、北アメリカに限らず、ヨーロッパの植民地支配を受けていた東南アジアやアフリカ、南アメリカにも言えることです。

北アメリカの単元では、特にアメリカが重要になりますので、自然から地形、農業、人種や民族に至るまで、細かい学習を実践していきましょう。 また、カナダやメキシコでは、アメリカと同様にヨーロッパの影響をどのように受けているのかを意識しながら学習していきたいところです。その中でも、人種や民族については、様々な観点から問題が出題されますので、どういった人種がどの地域に多いのかを頭に入れておきたいところです。 貿易面では、NAFTAがどういったものであるのかを理解し、その経済圏がEUにも匹敵する規模であることを理解しておきましょう。
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