村落・都市 | 0から始める高校地理まとめ

本単元では、村落や都市の成り立ちから諸問題にまで焦点を当てていきます。学習する際には、お手元に地図帳や用意して学習することで、内容の理解が効率的に進みます。

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はじめに

村落や都市の発達する場所には、自然的・社会的な背景が隠されています。例えば、水の確保しやすい場所に人は集まってきますし、そこで産業が発達すると、村落は都市へと拡大していきます。
自然的な背景には、水が得やすいかや災害が起きにくい場所かなどが挙げられ、社会的な背景には、交通に便利かや、交通の便が良い場所であるかなどが挙げられますので、それぞれどのような背景で発達したのかを理解していくことが本単元では重要になってきます。

村落

散村

散村とは、住居が散在している集落を指します。住居が散在している理由には、大規模な火災を防ぐためであったり、水田を維持するための用水路を引いてきたことによる区画管理が原因になっていたりします。代表例としては、富山県の砺波平野や、島根県の出雲平野などが挙げられます。
下記の図は富山県の砺波平野になります。

散村

集村

集村とは、住居が密集して形成された集落を指します。集村には様々な種類があり、街道沿いに密集した路村や、氾濫原の自然堤防上に並んで形成された連村などが代表的な事例になります。

村落の歴史

本項目では、村落が発達した歴史をその古い順番で見ていきます。どれも非常に重要な内容であるため、繰り返し学習をしていきましょう。

条里制集落

条里制集落は、大化の改新後に施行された班田収授法や、奈良時代の墾田永年私財法を基に、計画的に地割された集落で、碁盤目状に道路が張り巡らされている点が特徴的です。
最古の計画的集落と言われており、区画は正方形や長方形に分けられ、「条」という文字が含まれた条里制集落の名残と思われる地名も見られます。
下記の図は奈良県の奈良盆地になります。

条里制集落

荘園集落

平安時代以降、私的所有地(荘園)の拡大が顕著になっていき、それらが集まって形成された集落を荘園集落と言います。荘園集落には、地方の名主が自ら開墾し、地名にはその名主名がつけられた名田百姓村や、地方の豪族が開墾した豪族屋敷村などが見られます。前者には、「三郎丸」や「五郎丸」など、後者には「館」や「根古屋」、「構」などが含まれた地名が見られます。

新田集落

新田集落は、江戸時代に徳川吉宗によって行われた享保の改革以降に開墾された集落を指します。
江戸時代には人口が急増した背景があり、積極的な新田開発が推奨されたため、各地には新田集落が発達するようになりました。
地名には文字通り「新田」や「畑」、さらには「在家」といったものが有名です。
下記の図は埼玉県の富士見市周辺になります。

新田集落

屯田兵集落

屯田兵集落とは、明治時代に北海道の開拓を目的に派遣された屯田兵によって形成された集落を指します。
屯田兵集落では、アメリカやカナダで実施された土地の分割制度であるタウンシップ制を採用しており、計画的に区割りされている点が特徴です。
下記の図は北海道札幌市の新琴似駅周辺で、「屯田」という地名が屯田兵集落の名残と思われます。

屯田兵集落

都市の形成

都市は、様々な産業や人口が集積し、高度な文化的・政治的・経済的機能の中心地となっている地域を指し、規模は先述の村落よりも大きくなります。
大規模な都市が発達しやすい条件として、交通のアクセスが良いことや、大河川が付近を流れていること(河口が近いこと)、標高差の小さい平野部であることなどが挙げられます。
代表的な事例を挙げると、東京は日本一広い関東平野に位置していますし、パリはパリ盆地の中心に位置しています。また、河川に焦点を当てると、東京はに荒川や多摩川、パリにはセーヌ川、ロンドンにはテムズ川などが流れています。同様に交通面を見ると、やはり高速道路や鉄道、空港などが付近に位置していることから、交通の便も非常に良いことが分かります。
先述の条件を満たしている地域では、大規模な都市が発達しやすい傾向がありますので、大都市に焦点を当てる際には、どのような理由で都市が形成されたかを考える癖をつけると良いでしょう。多くは上記の理由になっています。

都市の種類

都市は、様々な機能に特化しており、それぞれの特徴に合わせて分類されます。例えば、工業が盛んな都市や政治や経済機能が集約されている都市、観光地としての機能を持つ都市など、様々な種類の都市がありますので、それぞれの都市がどういった特徴を持っているかを理解しましょう。

商業都市

商業機能が発達している都市で、代表例には、ニューヨークや香港、大阪市などが挙げられます。

工業都市

工業機能が発達している都市で、代表例には、武漢や西安、神奈川県川崎市などが挙げられます。また、伝統工芸品の生産で有名な日本の新潟県燕市や群馬県桐生市、岐阜県関市なども工業都市に含まれます。

政治都市

政治機能が発達している都市で、代表例には、ワシントンD.C.やキャンベラ、ブラジリア、オタワなどが挙げられます。

宗教都市

宗教機能が発達している都市で、代表例には、メッカやエルサレム、バラナシ、ラサ、奈良県天理市などが挙げられます。

学園都市

大学や研究機関などの機能が発達している都市で、代表例には、オックスフォードやケンブリッジ、茨城県つくば市、東京都国立市が挙げられます。

交通都市

交通機能が集積している都市で、代表例には、シカゴやシンガポール、カイロ、ドバイ、群馬県高崎市、滋賀県米原市などが挙げられます。

都市圏の概念

都市が拡大してくると、それぞれの都市が密接な結びつきを果たすようになり、周辺地域に大きな影響を与えるようになります。複数の都市が影響を及ぼしあう地域を都市圏と言いますが、これは世界中で見られる傾向です。都市圏は、様々な機能が集約しているため、多くの人やモノが集まり、結果として、人口が他地域よりも多くなっています。
身近な日本の事例を挙げると、首都圏(厳密に言えば一都三県)や関西圏(大阪・神戸・京都)がありますが、先述の通り、鉄道の発達や様々な機能が集積していることから、密接な都市圏を形成していると言えます。
私たちの生活にとって非常に便利な都市圏ですが、様々な問題点も抱えています。その代表例に挙げられるのがドーナツ化現象スプロール現象になりますので、それらの問題点を押さえましょう。

  • ドーナツ化現象

ドーナツ化現象とは、昼間に都心部に人口が増加し、夜は郊外の人口が増加する現象です。これは、昼間はオフィスや学校のある都心に通勤・通学し、夜は郊外の自宅へ帰るという構造から生まれるものです。
これは、都心部に様々な機能が集積していることが原因で発生しており、後述のスプロール現象が発生する一因にもなっています。

  • スプロール現象

スプロール現象とは、郊外が無秩序にかつ虫食いのように開発されてしまう現象です。これは、後の都市開発に大きく影響してきますし、様々な機能が都心部に集積し、住宅地は郊外へ拡大せざるを得なくなった結果、郊外の無秩序な都市化が進行します。

都市内部の構造

大都市へと発達すると、その内部構造にもある一定の傾向が見られるようになります。それは、オフィスや官公庁が集中している地域、商業施設が集中している地域、工場が集中している地域、住宅街、その他、場所によって、機能の住み分けが為されるようになります。
東京を事例に挙げると、オフィスや官公庁が集積している地域に丸の内や大手町などが挙げられ、これらはC.B.D.(=Central Business District:中心業務地区)と呼ばれ、日本の政治や経済の中心となっています。
また、C.B.D.に集中している機能を分散するために、交通の便が良いところに同様の機能を移転させた副都心も作られ、こちらには新宿や渋谷、池袋が該当します。
商業施設が集中している地域は、副都心やそれに近い地域、さらにはウォーターフロント周辺の地域が該当し、先述の副都心に加え、表参道や原宿などが該当します。
住宅街については、都心や副都心などから離れた郊外に形成されやすくなっています。なお、高度経済成長期以降、郊外からの通勤・通学客によるラッシュが問題となっていますが、最近は通勤・通学時間を意図的にずらし、混雑緩和を目的とした朝ビズなどが行われています。

首位都市と都市群

首位都市

首位都市プライメートシティ)とは、その国で最も人口の多い都市であるだけでなく、2位以下の都市との人口を大きく引き離した都市のことを指します。政治や経済、文化などの機能が一極集中しているため、生活するうえでは非常に便利であるが、機能の分散や早急なインフラシステム整備、交通問題、環境・衛生問題などを慢性的に抱えています。
代表的な都市として、タイのバンコクや、メキシコのメキシコシティ、フィリピンのマニラなど、主に同国首都が首位都市に該当しますが、オーストラリアのキャンベラや、ブラジルのブラジリアなどは該当せず、それぞれ同国最大の都市はシドニー、サンパウロになります。

メガロポリス

メガロポリスとは、大都市が帯状のように隣接している地域で、政治や経済、文化、情報などの一大集積地となっている巨帯都市圏を指します。代表的な事例として、アメリカのボストン~ニューヨーク~フィラデルフィア~ボルティモア~ワシントンD.C.や、日本の東京~横浜~名古屋~京都~大阪~神戸(東海道メガロポリス)、ヨーロッパのブルーバナナ(工業の単元参照)などが該当します。

コナーベーション

コナーベーション(連接都市)とは、隣接する複数都市が結合している地域を指します。都市間の結びつきが強く、政治や経済、文化などが結合しているため、都市の境界線が不明瞭になっています。代表例としては、東京・千葉・埼玉・神奈川や大阪・京都・神戸などが挙げられます。メガロポリスと混合しやすいですが、コナーベーションはあくまで土地利用的な観点が強いと言われています。

都市計画と都市問題

大ロンドン計画

第二次世界大戦後、ロンドンの人口急増とそれに伴う周辺のスプロール現象を防ぐために、ニュータウンの建設、さらにはロンドンの中心部にあるドックランズの再開発を実施しました。これを大ロンドン計画と言います。大ロンドン計画の根底にあるのは、1898年にハワードが提唱した田園都市構想にあると言われています。これは、良好な環境を維持していきながら、住みやすい街を作るべきであるという考えで、今日においても、都市計画の基本的な理念になっていると言っても過言ではありません。
なお、田園都市構想に影響を受けて建設されたのが、東京都大田区にある田園調布で、下記地図からも分かる通り、駅前の道路が放射状に張り巡らされていたり、駅のホームが地下化されていたり、快適で住みやすい街づくりが計画的に行われています。

田園調布

インナーシティ問題

インナーシティとは、都市の内部で最も古く開発された市街地を指し、インナーシティ問題はこの地域で起こる問題を指します。
従来のインナーシティは開発がいち早く行われていたため、様々な機能が集積していましたが、地域の老朽化が進行することで、機能が移転し、結果として、さらに地域が衰退してしまいます。
インナーシティ問題で挙げられる課題には、建物の老朽化や人口減少による空洞化、行政サービスの撤退、治安の悪化、スラムの形成が挙げられます。
これらの問題を解決するために、一般的には地域の再開発が挙げられます。先述の大ロンドン計画で取り上げたドックランズはインナーシティに該当し、様々な問題が発生していましたが、再開発によって、都市の再生と活性化を実現させることが出来ました。

さいごに

ここまで村落や都市の成り立ちや現状、課題を見てきました。非常に重要な内容ですが、取り扱う内容が膨大であるため、まずは、赤文字で表記された単語やその周辺の内容説明を重点的に学習していきましょう。さらには、様々な都市がある中で、「Aの都市はどういった特徴を持っているのか」のように、大まかな内容を押さえておくことが大切です。こうすることで、各都市を差別化することが出来ますし、記述問題にも十分対応出来るようになるでしょう。
また、都市が抱える課題や再開発については、記述問題で問われやすい内容となりますので、「どういった問題が起こっているのか」や「なぜそれが問題なのか」といった観点を意識しながら、学習に臨むと効率が上がります。
一通りの学習が終わったら、各国の代表的な都市を見ておくと良いでしょう。

大切なポイントを理解出来たら、各都市の人口を確認してみましょう。都市の人口を知っているだけで、都市の判別問題を解く際、とても役に立ちます。
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