アフリカ | 0から始める高校地理まとめ
本単元では、いまだに経済発展が遅れている国の多いアフリカで、どのような産業が発達しているのか、さらには植民地支配を受けた歴史をどのように受け継いでいるのかに注目します。
はじめに
アフリカは大航海時代以降、ヨーロッパに植民地支配を受けてきた国が多く存在する背景から、ヨーロッパの言語や文化がいまだに根強く残っていますので、その点を意識しながら学習することが求められます。
また、アフリカも他地域と同様に、場所によって自然環境が変わってきますので、地形や気候を頭に入れながら、農業分布を見ていくことが求められます。
アフリカは他地域と比較すると、経済発展が遅れている国々が多いので、各国がどのような産業で成り立っているのかを理解する必要がありますし、その大半は一種の産業に依存するモノカルチャー経済となっています。
アフリカには50を超える国々がありますが、アジアやヨーロッパなどの主要国が多く分布する地域と比較すると、一国に焦点を当てた問題は多くありません。ですので、細かい学習が求められる地域ではありませんが、エジプトや南アフリカなど、アフリカでも経済発展が進んでいる国には注目する必要があります。
アフリカという地域の概要を掴むことに重点を置いて学習していきたいところです。
アフリカの位置
アフリカの国々
エジプト
エジプトは、アフリカ大陸の北東部にあり、アフリカとアジアの境界に位置する国です。首都はカイロとなります。
国土の大半が砂漠となっており、ケッペンの気候区分では砂漠気候(BW)に該当しますが、国土の中央部を流れるナイル川沿岸では、灌漑による小麦や綿花の栽培が広がっています。ナイル川は外来河川の一種で、上流では雨季の時期に水量が増加するため、ナイルデルタ(円弧状三角州)では局所的に洪水が発生します。乾燥地帯にも関わらず、灌漑による農業が発達していますが、灌漑が原因で、土壌の塩類集積が発生し、砂漠化が進行している地域もあります。
エジプトはアフリカの中でも経済が発展している国で、アフリカ諸国を牽引していますが、その要因には、他のアフリカ諸国よりもいち早く工業化に成功した点が挙げられます。
アルジェリア
アルジェリアは、アフリカ大陸北西部に位置しており、アラブ石油輸出国機構(OAPEC)にも加盟する、石油の生産が盛んな国です。首都はアルジェとなります。
その他、アルジェリアで押さえておきたいのは、フランスの植民地支配を受けていた点で、アラビア語やベルベル語以外にフランス語も日常的に使用され、フランスへの出稼ぎ労働者が多いことが特徴的です。
アルジェリアの代表的な輸出品目は、石油や天然ガスとなり、輸出先はイタリアやフランス、スペインなどの南ヨーロッパ諸国が多くなっています。
リビア
リビアは、アフリカ北部に位置し、アルジェリアやナイジェリアと並んで、アフリカ有数の石油産出国となります。首都はトリポリとなります。
石油が豊富に産出されることから、石油産業に依存するモノカルチャー経済となっており、情勢によって、経済が不安定になりやすい傾向にあります。
2011年には、長期間の独裁政治を行っていたカダフィ政権が崩壊し、民主化(アラブの春)が実現しましたが、その後も新政権の成立に伴った内戦が発生し、不安定な情勢が続ています。
エチオピア
エチオピアは、アフリカ大陸東部の「アフリカの角」と呼ばれる辺りに位置しており、大航海時代以降、アフリカ諸国で唯一植民地支配を受けずに独立を保った国です。首都はアディスアベバとなります。
国土の西部を占めるエチオピア高原は標高が高いため、低緯度地域にも関わらず、比較的冷涼な気候が広がっています。なお、アフリカ大陸は全体的に標高が高い点を理解しておき、その中でもエチオピア高原は出題されやすいので、要確認となります。
エチオピア高原はコーヒーの発祥地と言われており、現在でもコーヒーの生産が盛んです。
植民地支配を受けてはいませんが、4世紀頃にキリスト教が伝来したとされ、キリスト教コプト派が大半を占めています。
アディスアベバには、アフリカ連合(AU)の本部が設置されており、アフリカにおいて中心的な役割を果たしています。
ケニア
ケニアは、アフリカ東部に位置しており、かつてはイギリスの植民地支配を受けていた国です。首都はナイロビとなります。
先述の通り、イギリスの植民地であったため、植民地時代には多くの白人がケニアに入植しました。その結果、現在も首都のナイロビが位置するケニア高原は、ホワイトハイランドと呼ばれます。ホワイトハイランド周辺は標高が高いため、赤道直下にも関わらず、比較的冷涼な気候が広がっています。
農業においては、茶とコーヒーの栽培を目的としたプランテーション農業が普及しており、同国の産業を担っています。
イギリスに植民地支配されていた影響から、宗教はキリスト教、公用語には英語が定められています。
タンザニア
タンザニアは、ケニアの南部に位置している国です。首都はダルエスサラームとなります。
タンザニアは自然資源が多く、東部にはアフリカ最高峰のキリマンジャロや、ケニアとウガンダ国境付近に跨るヴィクトリア湖は、世界で三番目に大きい湖として知られています。
タンザン鉄道は、銅が豊富に採れるカッパーベルトから、銅を輸送するため、中国主導で建設されました。ダルエスサラームはタンザン鉄道の終点で、ここまで運ばれた銅はダルエスサラーム港から世界中に輸出されていきます。
ナイジェリア
ナイジェリアは、アフリカ中央部に位置し、ギニア湾に面する国で、アフリカでもっとも人口の多い国です。首都はアブジャとなります。
1960年に独立するまで、イギリスの植民地だったため、キリスト教を信仰する国民が多い点が特徴で、主にナイジェリア南部に集中しています。北部はイスラム教徒が多く、南北間では、紛争が発生しています。
ニジェール川の河口付近には、油田が分布しているため、石油が豊富に産出されます。なお、アフリカ最大の石油産出国となり、石油輸出国機構(OPEC)に加盟しています。
以前は、ラゴスという都市が首都でしたが、治安の悪化やスラムの形成、さらには南部の開発を目的に、アブジャへ首都が移転しています。
コートジボワール
コートジボワールは、アフリカ西部に位置する国で、カカオの生産量が世界で最も多い点を押さえておきたいところです(ただし、日本におけるカカオの輸入先は、ダントツでガーナが多い点は留意しましょう)。首都はヤムスクロとなります。
コートジボワールという国名は、フランス語で象牙海岸という意味があります。これは、大航海時代以降、コートジボワールから多くの象牙が積み出されたことに由来しています。なお、フランス語が国名の由来となっている理由は、旧宗主国がフランスだったからです。
ガーナ
ガーナは、アフリカ西部に位置する国で、コートジボワールに次いでカカオの生産量が多い国です。首都はアクラとなります。
ガーナのカカオは、ガーナ・ココアボードと呼ばれる政府系機関が管理している点がユニークです。
また、ガーナの輸出品目は、金や石油、カカオが多くを占めているため、典型的なモノカルチャー経済と言えます。一方で、輸入品目は、自動車に代表される機械製品が多いため、工業化が遅れていることが読み取れます。
リベリア
リベリアは、アフリカ西部に位置する国で、国名には「自由の国」という意味があります。これは、アメリカで解放された黒人奴隷によって建国(1847年)されたことに由来し、アフリカではエチオピアに次いで古い独立国となります。首都はモンロビアとなります。
リベリアは、便宜置籍船の国として知られています。便宜置籍船とは、船主が自身の住む国とは異なる国に、船籍を置く船のことで、節税や船員費削減が目的となります。
南アフリカ
南アフリカは、アフリカ大陸最南端に位置する国です。首都はプレトリアとなります。
エジプトと並び、アフリカでは経済発展が進んでいる国で、BRICSの一国に挙げられる国です。
南アフリカは、世界的な金やダイヤモンドの産出国として知られていますので、鉱業面では必ず押さえておきたいポイントです。
南アフリカでは、1948年から1991年までアパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策が実施されました。これは白人を優遇する政策で、黒人への差別が顕著になりました。のちにアパルトヘイトが撤廃され、1994年にはアパルトヘイトの撤廃を訴えた運動の指導者であったネルソン・マンデラが、黒人初の大統領に選出されました。
ナミビア
ナミビアは、アフリカ南部に位置しており、独立するまで南アフリカの委任統治領となっていた国です。首都はウィントフックとなります。
南アフリカの旧統治領であるため、公用語には英語、信仰宗教はキリスト教となっています。
産業の主体は農業や鉱業で、牧畜やダイヤモンド、銅、ウランの生産が盛んです。しかし、工業化が遅れており、後発開発途上国に該当します。
ナミビアにはナミブ砂漠が位置してますが、これは海岸砂漠に該当します。これは、沖合を流れているベンゲラ海流が寒流であるため、降水の原因となる上昇気流が発生しにくく、降水がほとんどないことが原因によって砂漠化したというものです。
アフリカ諸国の独立
アフリカは、第二次世界大戦が終結したあとも、ヨーロッパ諸国による植民地支配が続いていた地域となります。第二次世界大戦以前に独立を保っていた国は、エジプト、エチオピア、南アフリカ、リベリアのみとなっていました。
しかし、第二次世界大戦以降、アフリカ諸国で独立の機運が高まり、独立運動が各地で展開された結果、1960年にナイジェリアやカメルーン、マダガスカルなど、計17か国が一斉に独立を果たしました。植民地主義が緩和され、多くのアフリカ諸国が独立を果たした1960年は「アフリカの年」と呼ばれます。
アフリカの宗教
大航海時代以降、アフリカはヨーロッパ諸国の奴隷貿易に利用されたり、植民地支配を受けてきたりした歴史があります。そのため、今でもヨーロッパ文化が根強く残っている国が多く存在します。その代表例として挙げられるのが宗教や言語で、テストや大学受験で頻出となります。
本項目では、アフリカの宗教分布で押さえておきたい点を記載しますが、その分布は「イスラム教」か「キリスト教」のどちらかに分かれることを理解しておきましょう。
具体的には、イスラム教はアフリカ北部、キリスト教は南アメリカやナイジェリア、エチオピア、ケニア等が出題されやすいので、注目しておきたいところです。
なお、宗教と言語の分布はある程度共通しており、例えば、イスラム教が信仰されているアフリカ北部はアラビア語、キリスト教が信仰されている南アフリカやケニアなどは旧宗主国の言語が使用されています。
サヘルの砂漠化
サハラ砂漠の南縁にはサヘルと呼ばれる地域があります。サヘルは、北緯15度付近に位置しており、周辺は年間を通して中緯度高圧帯に覆われているため、降水量が比較的少ない地域で、砂漠気候(BW)とステップ気候(BS)の境界となっています。
しかし、近年では人口増加や、家畜の増加による過放牧が急激に進行したため、地力の回復が間に合わず、土壌の砂漠化が進行しています。そのため、環境問題を取り上げる際には、サハラ砂漠と同様に頻出の地域となりますので、砂漠化が進行している理由まで押さえておきたいところです。
さいごに
アフリカを学習する際には、ヨーロッパ諸国がアフリカにどのような影響を与えてきたのかに着目することが大切です。これまでアフリカ諸国の産業や宗教、言語などを幅広く見てきましたが、その大半はヨーロッパの影響を受けていることは想像に難くありません。
アフリカはその他の地域と比較すると、取り上げられることが少ないのですが、だからといって疎かにして良いわけではありません。ただ、アフリカの中でも、エジプトやナイジェリア、ケニア、南アフリカなど、主要国としての地位を築いている国は重点的に学習していきたいところです。その他に注目しておきたい点は、どのような農産物や鉱産資源が生産されているかになります。理由は、アフリカで限定的(集中的)に生産されている農産物や産出されない鉱産資源が多いためです。
また、アフリカは独特な地形や自然が多いため、地図帳を使って、どの辺りにどのような地形や自然が分布しているのかを確認しておくことで、細かい点を狙ってくる問題にも対応が出来るでしょう。