ヨーロッパ | 0から始める高校地理まとめ

ヨーロッパは世界で最も早く発展した地域で、世界に大きな影響を与えた国々が集中しています。ゆえに、地誌では出題されやすい分野ですので、一つひとつのテーマを丁寧に学習していきたいところです。

ヨーロッパ_0から始める高校地理まとめ

はじめに

ヨーロッパに属する国は、およそ50か国ありますが、その中でも特に出題されやすいのが西ヨーロッパ諸国で、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペインとなります。これらの国々は農業や工業などの産業全般を深く理解しておきたいところです。
ヨーロッパは世界で最も早く発展した地域で、大航海時代以降、世界各地に進出し、植民地支配を軸とした帝国主義を基に、世界で大きな影響を与え、特に、宗教や民族、言語は現在においても世界各地に色濃く残っています。
また、ヨーロッパは昔から戦争が頻繁に発生していたり、経済不況の影響を受けてきたりしてきたため、国を越えた地域間の協力体制が見られます。その代表例がEUになりますが、なぜEUが設立されたのか、どういった背景があるのかを押さえておくことが重要になります。
ヨーロッパは地誌の中でも、出題されやすいジャンルのため、他地域以上に細かい学習が求められます。

ヨーロッパの位置

ヨーロッパ

ヨーロッパの国々

イギリス

イギリスは世界で最も早く産業革命が起こり、現在でも世界の経済を牽引する国になります。首都はロンドンです。
イギリスは緯度が高いわりに、温暖な気候が広がっています。これは、北大西洋海流偏西風が影響しており、ケッペンの気候区分では、西岸海洋性気候(Cfb)に該当します。
温暖な気候が広がっていますので、混合農業酪農が広く行われている点が特徴的です。
先述の通り、世界で最も早く産業革命が起こりましたが、その要因として、古期造山帯に属するペニン山脈付近で採れる石炭の影響で発達した工業になります。しかし、現在は産出量が減少したため、石炭産業は衰退しています。その代わり、1970年代に北海油田が開発された影響で、石油と天然ガスが豊富に採れ、これらの輸出国としても知られています。また、スコットランドではIC産業が発達しており、別名シリコングレーンと呼ばれます。
宗教はキリスト教プロテスタントになりますが、北アイルランドを巡るアイルランドとの民族対立は、アイルランドの宗派がキリスト教カトリックである点が原因となっています。なお、イギリスではゲルマン系の民族が人口の大半を占めています。
昨今はEU(ヨーロッパ連合)からの離脱問題に大きく揺れている点に注目です。

フランス

フランスは西ヨーロッパに位置しており、ヨーロッパ最大の農業国として知られています。首都はパリになります。
国土の北部はイギリスと同様に西岸海洋性気候(Cfb)、南部は地中海性気候(Cs)が広がっており、農業は気候に応じた分布が見られ、北部は混合農業や酪農、南部は地中海式農業で、ケスタ地形を活かしたぶどう(シャンパーニュ地方)の生産が盛んです。
工業においては北東部に位置するロレーヌ鉄山周辺で鉄鋼業が盛んでしたが、現在は衰退し、パリ周辺の自動車や機械、南部のトゥールーズ航空機産業が頻出です。
国民の大半はキリスト教カトリックを信仰しており、ラテン系の人が多い点が特徴です。
また、フランスの発電内訳のおよそ80%近くが原子力発電となっている点も頻出ですので、この点は必ず頭に入れておきたいところです。

ドイツ

ドイツは1990年に統一するまで、東西に分裂していた歴史を持ちます。統一前から、ヨーロッパの工業を牽引してきており、現在はヨーロッパ最大の工業国として知られています。首都はベルリンです。
西岸海洋性気候(Cfb)が分布しているため、緯度が高い割には温暖です。こちらもイギリスやフランスと同様に、混合農業や酪農が広く行われています。
先述の通り、ヨーロッパ最大の工業国で、西部のルール地域からライン川沿いでは、重化学工業、シュツットガルトやミュンヘンでは自動車工業が発達しています。これらの地域はロンドンからドイツ、イタリアに至るまでのブルーバナナと呼ばれる地域に該当しており、ヨーロッパ経済の中心帯となっています。
国民の大半はゲルマン系で、プロテスタントを信仰する人が多いですが、カトリックを信仰する人も40%ほどいる点にも注目です。
ヨーロッパの中でも工業化がいち早く進んだドイツですが、急速な工業化の代償として、酸性雨の被害を受けた地域があり、その代表例がドイツ南部にあるシュヴァルツヴァルト(ドイツ語で黒い森を意味)になります。

イタリア

イタリアは南ヨーロッパの地中海沿岸に位置する国で、首都はローマになります。
地中海性気候(Cs)が広がっており、夏に高温乾燥する気候を活かし、オレンジやコルクなどを栽培する地中海式農業が行われています。
工業が発達しているのは北部のミラノやトリノ、フィレンツェ辺りで、この三都市を結ぶ三角地帯はブルーバナナの一角に属します。一方で、南部はトロントで鉄鋼業や石油化学工業が発達していますが、それ以外の地域は現在でも農業が主流で、工業の南北格差が大きいことで知られています。この格差を是正するために、1950年代半ばからヴァノーニプランが実施され、物流の促進を図るために、アウトストラーダ(イタリアの高速道路)の延伸が計画されました。
信仰宗教の中心は、キリスト教カトリックになり、民族はラテン系の人々で占められています。

スペイン

スペインはフランスの南側に位置し、イベリア半島の大部分を占めている国です。首都はマドリードになります。
フランスとの国境には新期造山帯のピレネー山脈、国土の中央部にはメセタと呼ばれる台地が広がっています。
気候は地中海性気候(Cs)が広がっていますので、その性質に合わせて地中海式農業が分布しています。
イタリアと同様に南北の経済格差が大きく、社会的な課題となっていますが、ラテン系の国々はゲルマン系の国々と比較すると、経済の発展が遅れている傾向があります。
近年、バルセロナを含むカタルーニャ地方や、フランスとの国境付近に位置するバスク地方では、スペインからの独立運動が繰り広げられていますので、その動向にも注目しましょう。

ベルギー

ベルギーはフランス北部に位置しています。1831年にオランダから独立し、ベネルクス三国の一国に数えられます。首都はブリュッセルで、EU(ヨーロッパ連合)の本部があります。
ベルギーで一番出題されるテーマは、フラマン人ワロン人による民族対立となります。ベルギー北部にはゲルマン系のフラマン人が、ベルギー南部にはラテン系のワロン人が住んでおり、以前から対立が続いています。
なお、公用語にはそれぞれの文化を尊重し、フラマン語とワロン語、さらにはドイツ語が指定されています。

オランダ

オランダは国土の1/4が海抜0m以下に位置しており、低湿地が広がる点が特徴的で、ベネルクス三国の一国に数えられます。首都はアムステルダムとなります。
干拓地(ポルダー)で酪農、都市近郊ではチューリップや野菜などの園芸農業が行われています。
オランダ第2の都市・ロッテルダムにはライン川の分流である新マース川の河口があり、ここにはヨーロッパ最大の貿易港であるユーロポートが位置しています。ユーロポートはヨーロッパ貿易の玄関口と言われており、世界最大の石油化学工業地域となっています。

ルクセンブルク

内陸部に位置する国で、ベネルクス三国の一国に数えられます。首都はルクセンブルクとなります。ルクセンブルクの知名度は、他のヨーロッパ諸国と比較すると低いですが、一人当たりGNI(GDP)が世界トップクラスの水準になっている点に注目しましょう。

スイス

スイスはイタリアの北側、ドイツの南側に位置する内陸国で、アルプス山脈の麓に位置する国です。
アルプス山脈の移牧(夏は標高の高い地域、冬は麓の牧舎付近で家畜を放牧・飼育)による酪農が発達している。
国土の標高が高く、水と空気がきれいなため、時計やカメラに代表される精密機械産業が発達しています。
公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語(レートロマン語)の4つになります。
数少ない永世中立国の一国である点も押さえておきましょう。

ノルウェー

ノルウェーはスカンディナビア半島の西部に位置する国で、自然豊かな国として知られています。首都はオスロとなります。
ノルウェーは以前に氷河の浸食を受けていたため、国土の西岸にはフィヨルドが分布しています。
北大西洋海流と偏西風の影響を受けるため、緯度の割には温暖な気候が広がっており、世界最北の町にも数えられるハンメルフェストやナルヴィクは不凍港になります。
北海油田があるため、石油や天然ガスの輸出国としても知られています。
また、水資源が豊かな国であるため、発電内訳はほぼ100%が水力発電となっている点にも注目しましょう。

スウェーデン

スカンディナビア半島の頭部に位置する国で、国土の大半が氷河の浸食を受けているため、非常に痩せた土壌が広がっています。首都はストックホルムです。
スウェーデンにはキルナ鉄山があり、鉄鉱石が豊富に採れるため、ヨーロッパ最大の生産国となっています。

デンマーク

ドイツ北部のユトランド半島を中心に大小500以上の島々から構成される国です。首都はコペンハーゲンです。
酪農が非常に盛んで、国土の半分以上は農耕地となっています。しかし、氷河の浸食を受けた地域が多いため、酪農以外の農業は発達しにくくなっている点を押さえておきましょう。

ロシア

ロシアは世界で最も面積の広い国で、ヨーロッパとアジアに跨っています。首都はモスクワです。
ヨーロッパとアジアの境界となっているのは、国土の西部に位置するウラル山脈です。シベリアでは冷帯冬季少雨気候(Dw)、それ以外は冷帯湿潤気候(Df)が分布しており、タイガと呼ばれる針葉樹林が広がっています。
ロシア革命以降、土地が国有化され、集団農場制度(コルホーズ)が成立し、五カ年計画で国営農場(ソフホーズ)が発展していったことで、農業の近代化が進行していきました。
ウラル炭田では石炭、チュメニ油田では石油が豊富に採れる点にも注目しましょう。
また、ロシアにはスラブ人が多く分布し、宗教では、キリスト教東方正教が多くを占めていますが、チェチェンではイスラム教徒が多く分布しているため、文化の違いを主張し、独立運動を展開しています。しかし、チェチェンには天然資源が多く眠っているため、ロシアが手放そうとせず、チェチェンに対するロシアの弾圧が続いています。

EUの成立

EUは、域内経済の発展と政治的な連携を目的に1993年に発足しました。EU内で使用できるユーロの導入や、域内関税の撤廃と域外関税の設定による共通農業政策を実施、人やモノなどの移動を容易にするなど、様々な政策を実施して、ヨーロッパの総合的な発展に貢献してきました。
なお、EUの前身は、資源の管理を目的として設立されたヨーロッパ石炭鉄鋼共同体ECSC)、経済とエネルギーの促進・管理を目的として設立されたヨーロッパ経済共同体EEC)、ヨーロッパ原子力共同体EURATOM)の3つとなります。当初はイギリス、フランス、西ドイツ、ベネルクス三国の計6か国でしたが、1967年にヨーロッパ共同体EC)へ統合後に、イギリス、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、スペイン、ポルトガルなどが、続々加入していく形となります。なお、先述の通り、現在のイギリスではEU離脱問題が浮上しています。
その後、さらなる発展を目的としてECの機能を強化するために、1991年にマーストリヒト条約に調印、1993年に発効、そしてEUが正式に成立するのです。

さいごに

現在の世界を牽引するヨーロッパは、その注目度の高さから、テストや大学受験で頻出の地域となります。それは各国の地形から気候、農業から工業や地域連携まで、細かく出題されますので、一国ずつ丁寧な学習が望まれます。
覚えなければいけない内容は多いですが、例えば、宗教と民族には相関関係があります。というのは、ヨーロッパ北部に多く分布するゲルマン系の民族はプロテスタント、ヨーロッパ南部に多く分布するラテン系の民族はカトリック、ヨーロッパ頭部に多く分布するスラブ系の民族は東方正教など、分布条件には共通点がありますので、その点を意識して学習に取り組むと良いでしょう。
また、ヨーロッパ各国を比較する問題が出題されることが多いですが、その際に農業と工業、さらには人口や一人当たりGNI(GDP)に注目することが大切です。農業は混合農業と地中海式農業で農産物は変わってきますし、工業はイギリスやドイツ、フランスで特に発展しており、イタリアやスペインなどの南ヨーロッパは、前者と比較すると後進国となります。それに伴って、一人当たりGNI(GDP)も前者が高くなりますので、何事も紐づけて学習していくことが大切です。

ヨーロッパは世界に大きな影響を与えた地域ですので、他の地域を学習する際にもヨーロッパの知識が必要になってくる場合があります。その点を頭に入れて学習しましょう。
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