アジア | 0から始める高校地理まとめ

地誌は、その土地の史誌を学習しますが、特にアジアは、その歴史や文化的な背景は地域によって異なります。細かく見ていく前に、まずは系統地理の単元で概要を掴んでおくことで、地誌の学習は効率的になります。

メイン画像

はじめに

アジアの地誌を学習する際に頭に入れておかないといけないことは、同じアジアでも、自然的・文化的背景が場所によって大きく異なってくるという点です。というのも、アジアと一口で言っても、アジアに該当する地域は非常に広く、ユーラシア大陸の東半分がそれに該当すると言っても過言ではありません。それだけ広大な地域ですから、それぞれの地域の自然や文化は大きく異なってくるというのはある意味必然的と言えるでしょう。
当然ですが、自然や気候が場所によって異なってくると、そこで営まれる生活や産業(特に農業)には大きな違いが生まれてくる点は容易に理解が出来るでしょう。
アジアでは他地域と異なり、各国に焦点を当てた問題が出題されやすい傾向があります。例えば、日本の近隣に位置する中国や韓国、さらには東南アジアに属する国々など、それぞれの産業や歴史、政治、経済などについて問われることが多くあります。これは、日本とも関係の深い国々が多いということが関係しているからだと考えられますし、さらには、今後も大きく発展する可能性の高い国々が多く集中しているという理由も挙げられます。
他地域よりも出題されやすい国々ばかりですので、アジアの国々のポイントは詳細まで理解出来ると良いでしょう。

アジアの位置

アジア

アジアの国々

韓国

朝鮮半島南部に位置し、西部にはリアス海岸、東部には太白山脈があります。大部分の気候は温暖湿潤気候(Cfa)に該当しますが、北部は冷帯冬季少雨気候(Dw)になります。人口は5,000万人程度で、首都はソウルです。
農業においては、セマウル運動が実施され、農村の開発や農業の近代化が進展しました。工業においては、1960年代に入ると急速に発展を遂げ、近年はアジアNIESの一国として知られており、特に造船や石油化学などの重化学工業では存在感があります。

中国

ユーラシア大陸東部に位置し、世界第1位の人口、世界第4位の面積を誇る大国で、首都は北京です。
西部には新期造山帯に属する地域が広がっているため、非常に標高が高いですが、東部は平野や盆地が広がっていることから標高はあまり高くありません。気候についても、場所によって大きく異なっており、南部では熱帯、沿岸部では温帯(主にCfa、Cw)、東北部では冷帯(Dw)、北西部の乾燥エリアではBWやBSが広がっています。なお、年間800㎜の降水量の分かれ目となるチンリン山脈とホワイ川は頻出で、この2つを結んだ線をチンリン・ホワイ線と呼び、これより北部では畑作、南部では稲作が広く行われています。
鉱産資源が豊富に採れ、石炭は世界第1位、鉄鉱石は世界第2位、石油は世界第4位(いずれも年によって変動はありますが、石炭は世界の半分ほどを中国が占めているため、この点だけはほぼ変動しないと考えても問題ありません)を誇ります。
経済においては、外国企業の誘致を目的に設置した経済特区改革開放政策=対外的な経済政策の一部)を設置した1978年以降、急速に経済が発展し、特に1990年代からの急速な成長で、世界有数の経済大国となりました。2000年代に入ると世界の工場と呼ばれるようになり、その地盤をより強固なものにしましたが、経済発展が進んだ沿岸部と未だに発展が遅れている西部での経済格差は社会問題となりました。
また、広大な土地からも想像が容易いですが、多くの民族が暮らしています。人口の90%は漢民族ですが、その他の民族が住む地域では特別に自治権を認めている事例(モンゴル族・ホイ族・ウイグル族・チベット族・チョワン族)もあります。しかし、チベット族は民族や宗教の違いから、中国からの独立運動を展開していますが、弾圧されているのが現状です。
中国では改革開放政策が実施された頃に、一人っ子政策という人口抑制を目的とした政策も実施されています。これは、一組の夫婦につき子どもを一人に制限するというものでしたが、農村部では労働力を確保するために、二人以上の子どもを産んだり、後継ぎの男児を出産するために、生まれた女児を戸籍登録しないことによる無戸籍の子どもが増加したり、少子高齢化が急速に進行したりするなど、様々な問題が発生しました。現在は政府による廃止が明言されています。

ベトナム

ベトナムは東南アジアに位置する国で、人口はおよそ8000万人ほどを誇ります。首都はハノイとなり、独立前はフランスの植民地支配を受けていました。
ベトナムはベトナム戦争時に南北に分裂しており、1976年に南北ベトナムの統一を果たしました。ベトナムは社会主義を採用している国ですが、1986年にはドイモイ政策を実施し、経済の自由化を進めた結果、工業化が進展しました。工業発展については、ベトナムに限らず、東南アジア諸国の経済発展を推し進めたのは東南アジア諸国連合ASEAN)の存在が大きいと言っても過言ではありません。
ただし、工業化が進展した現在でも、農業が産業の主体を担っており、コーヒーの生産量は世界第2位、コメの生産量は世界第5位を誇る農業大国です。

タイ

タイは東南アジアの中でも工業化が進展している国で、人口はおよそ7000万人ほどになります。首都はバンコクです。
また、東南アジアでは、唯一欧米諸国の植民地支配を受けなかった国でもあります。
先述の通り、工業化が発展しており、バンコク周辺には輸出加工区や工業地域が集積しています。
しかし、農業も非常に盛んな国で、チャオプラヤ川では浮稲栽培が行われ、雨季の洪水にも耐えられる品種が栽培されています。そして、特筆すべき点は、コメの輸出量が世界第1位であるということです。また、天然ゴムやパイナップルの生産量も世界トップクラスになりますので、その点を頭に入れておきたいところです。
さらには、日本向けに輸出されるエビの養殖が盛んに行われていますが、養殖場の開拓にはマングローブ林の伐採が必要になるため、日本への輸出量が増えるにつれ、マングローブ林の減少も急速に進行しています。

マレーシア

マレーシアはマレー半島南部に位置する国で、1957年に独立するまで、イギリスの植民地支配を受けていた歴史を持ちます。しかし、注意しておきたい点は、マレーシアの国教はイスラム教で、国民のほとんどがイスラム教徒(ムスリム)になるということです。首都はクアラルンプールです。
マレーシアはASEAN加盟国の中でも工業化の進展している国で、2000年代に入ると、機械の輸出が大きな割合を占めるようになります。しかし、植民地支配を受けてことから、現在においてもプランテーション農業が残っており、パーム油や天然ゴムの生産量が盛んです。
1970年代に入るまで、マレーシアの経済は中華系の人々に牛耳られており、国民の大半を占めるマレー人の地位を向上させるために、1971年に雇用や教育など、様々な面でマレー人を優遇するブミプトラ政策を実施しました。

シンガポール

シンガポールは都市国家として、1965年にマレーシアから独立した国です。ASEANの中心国で、東南アジアの物流・海上交通の要衝地です。古くから工業化政策と中継貿易で飛躍的に発展を遂げてきたことから、東南アジアで最も工業化の進んだ国となります。
また、シンガポールは多民族国家で、中国人やマレー人、イギリス人やタミル人などが共生しており、それに合わせて公用語には、中国語、マレー語、英語、タミル語の4言語が定められています。

インドネシア

インドネシアは東南アジアの南部に位置し、人口が世界第4位を誇る国です。1945年に独立するまで、オランダに植民地支配を受けていました。首都はジャカルタです。
シンガポールやマレーシア、タイと同様に、東南アジアでは工業化が進んでいますが、農業においても、コメや天然ゴムの生産が世界トップクラスを誇る農業大国でもあります。
国民の大半がイスラム教を信仰していますが、ジャワ島ではヒンドゥー教が信仰されています。
人口が非常に多いため、首都のジャカルタでは交通渋滞の発生やインフラ整備が追いつかないなど、様々な問題が発生しています。
また、アルプス・ヒマラヤ造山帯に属する地域であるため、地震や火山の噴火が多く、2004年にはスマトラ島沖地震によって、甚大な被害が発生しました。

インド

インドは南アジアに位置し、世界第2位の人口を誇る大国で、独立するまでイギリスの植民地支配を受けていた歴史があります。
コメと小麦の生産量は、それぞれ中国に次いで世界第2位、さらにはインド南部のデカン高原ではレグールと呼ばれる土壌の特性を活かした綿花栽培が盛んに行われています。工業では、ダモダル炭田シングブーム鉄山付近で重化学工業が発達している点と、南部のバンガロールでのIT産業に注目する必要があります。特に、IT産業は、アメリカとの時差を利用して、効率的な生産が行われている点が頻出です。
インドではヒンドゥー教の信仰が盛んに行われており、ヒンドゥー教は世界最大の民族宗教と言われています。
また、ヒンディー語が主要な公用語として挙げられますが、それ以外にもイギリスの植民地支配を受けていた影響から、英語を準公用語として定めたり、その他10言語以上が公用語として定められています。
なお、インド北部に位置するカシミール地方では、中国とパキスタンを加えた領土問題が発生しており、明確な国境線が引かれていない点にも留意しましょう。

サウジアラビア

アラビア半島の中央部に位置し、国土の大半がルブアルハリ砂漠が占める国です。首都はリヤドになります。
サウジアラビアは、石油の埋蔵量が世界で一番多く、生産量においてもロシアに次いで世界第2位となっています。中でも、世界最大のガワール油田が出題されやすい傾向にあります。
サウジアラビアにはイスラム教の聖地であるメッカが存在し、ムスリムは1日5回、メッカに向かって礼拝をするのが日常的な習慣となっています。

イラン

西アジアに位置する国で、首都はテヘランになります。
中緯度高圧帯の影響下に置かれるため、年間を通して非常に乾燥した気候が広がっています。しかし、カナートと呼ばれる地下水路を利用した灌漑設備の影響で、農業を行える環境ですが、メインはヤギや羊の遊牧になります。
イランに限らずですが、石油が多く産出される中東は、石油に依存した産業が発達しています。
また、宗教においては、イランはイスラム教シーア派が大半を占めている点も注目です。これは、シーア派はイスラム教の中でも少数派に該当しますが、イランではシーア派が大半を占めているためです。宗派の違いから、イスラム教スンニ派が多くを占める国々とは対立する傾向があります。

イラク

かつてメソポタミア文明が栄えていた地域に位置する国で、首都はバグダッドになります。
先述のイランと同様に、地下水路を利用したオアシス農業が行われ、ナツメヤシや小麦が生産されています。
イラクではイスラム教シーア派が国民の60%ほどを占めており、イランと並んでシーア派が多い国であることを覚えておきましょう。
イランでは大半がアラビア人ですが、イラン北部ではクルド人という国境を持たない山岳民族が独立運動を展開しており、紛争が度々発生しています。

トルコ

トルコは西アジアの西端に位置する国で、1923年に当時のオスマン帝国から独立した国となります。首都はアンカラです。
トルコ中央部に位置するアナトリア高原ではステップ気候(BS)、沿岸部では地中海性気候(Cs)が広がっているため、農業が広く行われています。
宗教はイスラム教が広く普及していますので、文化的な側面では西アジアとなりますが、EUヨーロッパ連合)への加盟を申請しており、ヨーロッパの国々と結びつきを強めようとする動きが見られます。

さいごに

アジアでは、それぞれの国に焦点を当てた問題や、各国を比較する問題が多く出題されますので、それぞれの国がどのような特徴を持つかを押さえておく必要があります。特に、各国を比較する問題では、主要な生産品や人口、普及している宗教、人種などを見分けることが出来れば、解ける問題が多く存在していますので、その点を意識した学習を進めていくと良いでしょう。
冒頭でも記載しましたが、アジアと言っても、場所によって特徴が大きく異なりますので、どの点が違っているのか、そしてなぜそのような相違が生まれるのかという点を意識しておくと、記述問題の対策にもなるでしょう。

昨今、成長著しい東アジアや東南アジアが多く出題される傾向にあります。時事問題にも注目して、アジアの地誌を学習していくとなお良いでしょう
 おすすめの勉強アプリはコチラ