図法・地形図 | 0から始める高校地理まとめ

地図は私たちの生活において、必要不可欠なものと言っても過言ではありません。しかし、図法や地図には様々な用途があるため、その種類は一つではありません。本単元では、図法や地形図の特徴に焦点を当て、地図に慣れることを目標とします。

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はじめに

世界地図は、地球所の情報を平面化して表現したもので、地球儀とは異なり、全てを正しく表現することは出来ません。ですので、それぞれの用途や目的に合わせて、適切な地図を利用することが求められます。世界地図にはどのような図法があり、どのような特色があるのかを押さえることが大切です。
また、地形図の読み取りは大学入試で頻出の事項となり、地理を学習するうえでは必須のスキルとなります。基本的な地図記号を理解しておく必要がありますし、土地利用を見て、どのような地域であるかを推測する力も求められるでしょう。
図法・地形図はいずれにしても、演習を積むことが大切になってきますので、本単元では例題を用いて、実際の読み取りを行うことに焦点を当てます。

図法

本項目では、頻出の図法を取り上げ、その特徴について記載してきます。世界地図の表現法(図法)については、種類も豊富にあり、その特徴は様々ですが、その中でも特に重要な図法を基礎から理解することに重きを置きましょう。

メルカトル図法

メルカトル図法

メルカトル図法は、緯線と経線が平行な直線で交わっている図法で、任意の直線を引くと経線と交わる角度(舵角)が全て等しくなるという特徴を持つため、舵角を計測しながら直進すると目的地に到達出来るという観点から、航海図として利用されます。ただし、地球は球体であることからも分かる通り、全ての緯度帯で円周が等しくはなりませんが、メルカトル図法ではあたかも円周が等しいかのように表現されていますので、高緯度地域は拡大描写されてしまいます。例えば、グリーンランドはオーストラリアよりも面積が小さいですが、メルカトル図法ではあたかもグリーンランドの方が大きく見えるように描写されます。

例:赤道(緯度0度)の円周は40,000km、緯度60度の円周は20,000kmのため、メルカトル図法で緯度60度は、赤道の2倍に拡大されます。

また、方位も正しく描写されていません。メルカトル図法では、日本の真東にアメリカが位置していますが、実際は北東に位置していますので、方位を確認する際には適しません。

正距方位図法

正距方位図法
正距方位図法は、図の中心からの距離と方位が正しい図法で、航空地図として利用されます。しかし、面積が正しくなく、周辺の形が歪んでしまっている点が短所になります。
メルカトル図法とは異なり、方位が正しいため、中心地点からどの方角にどの大陸があるかなどを判別する際に適しています。ちなみに、真東にあるのは、南アメリカ大陸がありますが、これはメルカトル図法を見慣れていると違和感があるかもしれません。また、青丸で囲った北アメリカ大陸の正しい方角は、日本を中心にすると北東になります。
先述の通り、メルカトル図法は方位が正しくないため、中心からの距離や方位を確認する際には、正距方位図法を利用しましょう。

モルワイデ図法

モルワイデ図法は、正積図法の一種で、面積が正しく、高緯度地域が楕円形になっている点が特徴です。緯線が高緯度になるほど間隔が狭くなっており、緯度40度付近の歪みが特に小さくなっています。
モルワイデ図法は、分布図に使用されることが多く、データの読み取り問題では頻繁に使用されます。

その他の図法

先述の通り、地球の情報を平面上に落とし込む際には、全ての情報を正確に表すことは出来ないため、各種の用途に合わせて、地図が作成されます。その中で、特に頻出の地図をご紹介しましたが、その他にも様々な地図があります。しかし、そこまで出題されることが多くないため、地図の概要を頭の片隅に入れておきたいところです。

  • サンソン図法

サンソン図法は、モルワイデ図法と同じく、正積図法の一種になりますが、高緯度地域が歪んで表示されているため、低緯度地域の情報を示す際に適する図法となります。

  • グード図法

グード図法は、モルワイデ図法とサンソン図法のメリットを誘導させた図法で、高緯度地域がモルワイデ図法、低緯度地域がサンソン図法で表現されています。しかし、形が蛇のように歪曲しているため、分布図にはあまり向いていません。

地形図

地形図においては、まずは地図記号を覚えるところから始めましょう。というのも、テストや大学受験においては、地図記号の知識がなければ、解答することが出来ない問題が多く出題されるからです。
さらには、地形図の土地利用を読み取り、どのような地形が広がっているのかを推察する力も試されますし、逆に言えば、どのような地形が広がっているかを理解出来れば、土地利用も簡単に読み取ることが出来ます。
また、等高線の読み取りも頻出です。等高線が引かれる間隔は、縮尺によって異なってきますので、等高線の間隔を読み取って、当該地形図の縮尺がどれくらいであるかを推察する問題にも対応出来るようにしておきましょう。

縮尺

地形図では、実際の大きさを縮小して記載しますが、その縮小度合いを縮尺と言います。高校地理において、縮尺を理解していないと、誤答してしまう問題が多く出題されますので、基本的な考え方を理解しておきましょう。
まずは、頻出の縮尺である25,000分の150,000分の1の違いを理解しておきたいところです。25,000分の1地形図では、実物を25,000分の1にまで縮めたものになります。逆に言えば、地形図の情報を25,000倍すれば、実寸大になるというわけです。例えば、25,000分の1地形図上で、1㎝で表される長さは、1㎝×25,000=25,000㎝=250mになるわけです。また、50,000分の1地形では、同様の計算をすると、地形図上の1㎝は500mになります。

計曲線と主曲線

25000分の1
地形図では、標高の違いを表現する際に、等高線を用います。これは、同じ標高の地点同士を結んだ線で、内側に表記されている地点ほど、標高が高くなっています。
等高線をよく見てみると、太い線が5本ごとに1本引かれています。これを計曲線と言います。計曲線は、縮尺25,000分の1地形図では50m、縮尺50,000分の1地形図では100mごとに引かれます。また、その間に引かれている細い線を主曲線と言いますが、主曲線は、縮尺25,000分の1地形図では10m、縮尺50,000分の1地形図では20mごとに引かれます。
この特徴を理解していれば、縮尺が明記されていない地形図でも、簡単に縮尺が読み取れますし、この点を理解しているかどうかを試す問題も頻出です。
なお、上記の地形図は25,000分の1で描かれています。

等高線の間隔

等高線
等高線の間隔が狭くなっている地点は、上記の図からも分かる通り、傾斜が急になります。対して、等高線の間隔が広くなっている地点は、傾斜が緩やかになります。
この特徴を理解しておくと、地形図の土地利用を読み取る際に、役立つ場合があります。

地形図の読み取り①

輪中
上記は、岐阜県海津市で、愛知県との県境に位置しており、長良川や揖斐川、木曽川と言った木曾三川の合流地点にもなっている地域です。海津町〇〇という地域には、住宅街が多く分布していますが、その他の土地利用については、水田が大部分を占めていることが分かります。さらには、河川に沿うようにして、堤防が張り巡らされていることも読み取れます。以上の背景を踏まえると、木曾三川は、中部地方を流れる大規模な河川で、毎年春になると、上流の雪解けとともに、水量が大幅に増量することで、度々、洪水をもたらしてきており、洪水被害を拡大させないために、住宅街の位置する地域よりも高い位置に堤防を設置しているのです。さらには、洪水が多い地域であることから、湿り気のある土壌が広がっており、その土壌の性質が稲作に適していることから、水田が多く分布しているということになります。
ちなみに、本事例のように、住宅街を水害から守るために、堤防で囲んだ集落のことを輪中と言います。

地形図の読み取り②

氾濫原
上記は、新潟県新潟市で、信濃川の河口付近に位置している地域になります。信濃川は日本一長い河川として知られており、上流の長野県では千曲川と呼ばれていますが、雪解けの季節になると、水量が増えることによって、度々洪水をもたらしてきました。そのような洪水の影響を受けたため、信濃川の河口付近は氾濫原が広がっており、その性質を活かした土地利用が見られます。例えば、河川から少し離れた天野周辺は、後背湿地となっており、湿った土地の性質に適した水田が広がっています。また、河川から少し離れた天野(一)~天野(三)では、住宅街が広がっていることも読み取れますが、ここは周辺の水田地域とは異なり、独特なカーブ(青線)を描くように住宅街が集積していることが分かります。これは、信濃川の旧流路であり、氾濫を繰り返した結果、現在は流路が変わってしまったことが原因です。これも、氾濫原の特徴であり、河川から独立した形で残された池を三日月湖(河跡湖)と呼びます。

地形図の読み取り③

扇状地
上記は、山梨県笛吹市で、谷口から開けた地点に扇状地が広がっている地域になります。扇状地の特徴は、湧水帯のある扇頂と扇端には、集落が分布し、水が得にくい扇央では畑や果樹園が分布するという点です。今回の事例では、扇端には一宮町千米寺や勝沼町藤井周辺が該当し、それらの地域以南は扇央・扇頂になっています。
先述の通り、扇央は水が伏流し、水無川となることから、水が得にくく、生活を営みづらいという観点から、少量の水を活かすことの出来る畑や果樹園が立地しやすい背景があります。そのようなことから、山梨県では果樹栽培が非常に盛んであり、ブドウやモモの生産量が全国1位となっています。

地形図の読み取り④

天井川

上記は、滋賀県高島市で、琵琶湖の西岸に位置する地域になります。地形図の読み取り③で取り扱いましたが、こちらも扇状地の地形になります。扇端のマキノ町新保やマキノ町中庄では、集落が広がっていることが分かります。
また、この地形図で見逃せないポイントが赤丸で囲った部分で、こちらは道路が川の下をくぐるようにトンネルとなっています。これは、河川の土砂流量が多いにも関わらず、堤防で流路を固定された結果、土砂が堆積し川底が上昇してしまった状態で、こちらは天井川と呼ばれます。

地図の情報化

情報化社会となった現代において、様々な情報を効果的に表現するためには、地図を有効活用する必要性があります。例えば、農産物の生産量ランキングを参照する際、ある範囲では赤色、ある範囲では青色など、生産量に応じて色分けされている地図をよく目にするでしょう。これも、複雑な情報を素早く正確に掴むために、有効な地図の使い方になります。
さらには、IT革命を機に、地図の情報をより具体的に活用する動きも見られるようになってきました。
本項目では、地図の具体的な活用例を見ていきましょう。

GPS(全地球測位システム)

GPS(全地球測位システム/Global Positioning System)は、人工衛星を利用して、地球上の位置や高低を確認出来るシステムのことで、元々は軍事的な使用を目的に開発されたものですが、現在においては、カーナビや船、航空機、スマートフォンなど、様々なツールに活用されています。

GIS(地理情報システム)

GIS(地理情報システム/Geographic Information System)は、コンピューターを利用して、様々な情報を地図上に表現する技術のことで、カーナビ(GPSで位置情報を特定し、それを地図上に表すのがGISというイメージです)や鳥瞰図、ハザードマップなどに使用されています。

さいごに

図法・地形図の単元において、もっとも重要なことは、実際の事例や問題に目を通してみるということになります。特に、地形図においては、様々な大学で出題されることの多い問題となりますので、演習を積み重ねることや、国土地理院の電子地形図サイトを利用して、自身で様々な地域を調べてみることをおススメします。
なお、地形図で出題される地域は、何かしらの自然地形を有している場所が多く、その土地利用を聞かれることが多いです。そのため、小地形の単元において、扇状地や三角州、氾濫原の特徴を押さえておきましょう。小地形の特徴を押さえておくと、地形図でどの点を気をつけて読めばよいか、出題者はどういった意図でこの問題を出題しているのかを掴みやすくなりますので、自然と地形図の重要ポイントを理解出来るはずです。
図法においては、出題されるものはある程度固定されていますので、頻出の図法の概要を理解しておきましょう。そして、それぞれの用途に適した図法が何であるかを頭の中で整理しておくと良いでしょう。

本単元を本格的に学習する際、これまで何気なく出てきた地図を見返してみると、地図の用途や図法を円滑に理解する助けになるかもしれません。
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