人口問題 | 0から始める高校地理まとめ

本単元では、世界の各国がどのような人口問題に直面しているかを見ていきますが、本格的な学習に入る前に、人口についての基本的な内容を見ていくことで、その後の学習をより効率的に進めていけるようにしましょう。

人口問題_0から始める高校地理まとめ

はじめに

第二次世界大戦以降、世界の人口は急激に増加しています。その背景には、医療の発達や世界的な食糧ネットワークが広がるなど、様々な理由が挙げられます。
しかし、一口で人口増加と言っても、急激に人口が増加している地域もあれば、人口の増減が停滞している地域もありますし、人口減少のフェーズに突入している国もあります。
人口問題の単元では、世界のどの地域で人口が増減しているのか、また、どのような理由が挙げられるのか、さらには、世界的な人口増減で生じている問題に焦点を当てます。これらは、テストや大学受験においても頻出ですし、私たちの生活にも将来的に大きな影響を及ぼす可能性がある問題ですので、一つひとつの事象を精査していけるような学習が求められます。

世界の人口分布

世界の人口はどのような地域に多く分布しているのかという点についても押さえておく必要があります。その際、実は人が住めない場所やその条件を押さえておくだけで、円滑に理解出来るようになりますので、まずはそちらから見ていきましょう。

人が住めない地域をアネクメーネと言います。アネクメーネになりうる条件としては、カキが挙げられます。

〇あまりに寒すぎる=食糧が育たない
〇あまりに乾燥している=水分の確保が難しい
〇標高が高すぎて生活環境を確保できない

逆にこの条件に当てはまらなければ、人が住めるような地域(エクメーネ)になるわけです。アネクメーネで挙げた条件に当てはまる地域は少ないため、陸地上では約90%ほどがエクメーネに該当します。

さて、その条件を理解した上で、続いて、下記の国別人口ランキング上位20か国を赤く塗った地図を見ていきましょう。

世界の人口ランキングTOP20

地図上で特徴的な点は、上位国の大半が北半球に分布しているということです。北半球は、文明の発達が比較的早い段階から進行していたため、南半球と比較すると、人口の多い国が集中していることが理由に挙げられます。さらには、そもそも南半球には陸地が少ないため、人口が集中しにくいという理由もありますが、やはり面積の大きい国については、人口も多いという関連性も見られます。なんと、北半球には世界の90%に相当する人口が集中しています。

人口が急増の背景

人口が急激に増加することを人口爆発と言います。この人口爆発が起こった背景には、医療の発達や、食糧問題が改善されたという理由が挙げられます。
医療の発達については、医療法の確率や最新医療機器の登場によって、寿命の長期化が実現しました。また、食糧問題については、農業機械の導入や新品種の開発に成功するなど、十分な食料を確保することが出来るようになったことで、食糧問題の改善に貢献しました。
これらの理由が重なったことで、人口が安定するようになり、さらには、人口が増加すると、生まれる子どもも自然に増加するようになるため、将来的にはさらなる人口増加が見込まれています。
ここで押さえておきたい点は、人口爆発は局地的に発生しており、世界中で発生しているというわけではないということです。
例えば、日本では第二次世界大戦から高度経済成長期にかけて、急激に人口が増加しましたが、文明が発達するにつれて、女性の社会進出が進み、合計特殊出生率は年々低下の一途を辿っていました。近年は、若干改善されましたが、それでも日本は人口減少に歯止めがかかっていません。
一方で、アフリカやアジアでは急激な人口増加が予測されています。その背景には、労働力として子どもを利用する文化が残っていたり、国の政策によって、出産が推奨されていたりすることが挙げられます。

自然増減と社会増減

人口の増減要素には、自然増減と社会増減の大きく2つに分けられます。それぞれがどのような内容であるかを簡単に理解しておくことが重要となりますので、増減の背景を押さえてきましょう。

自然増減

自然増減とは、出生数と死亡数の差異による増減を指します。この増減は、文明がどれくらい発達しているかによって、大きく構造が変わってきます。
発展途上国の中でも文明の発達が遅れている国々では、多産多死の傾向が見られます。これは、出生数も死亡数も両方多いという状態で、世界的な傾向を見ると、少しずつ人口が増加している国が多くなっており、アフリカやアジア、南アメリカに多く見られます。
発展途上国の中でも文明の発達が進んでいる国々では、多産少死の傾向が見られます。これは、出生数は多いものの、医療の発達によって死亡数が少なくなっている段階になります。多産少死のため、構造上、人口爆発が起きる状態で、アフリカやアジア、中央アメリカに多く見られます。
文明の発達している先進国では、少産少死の傾向が見られます。これは、医療の発達以外に、女性の社会進出が進んだことによって、出生数も減少しているというものになります。ヨーロッパや日本などが代表例となります。

社会増減

社会増減とは、流入数と流出数の差異による増減を指します。この増減は、人が何らかの原因で移動するというイメージが当てはまります。
例えば、より稼ぐために高所得地域に移住したり、紛争によって、難民として他地域へ移動せざるを得なかったりなど、様々な要因が背景にあります。
社会増減で一番大きな要因としては、先述の経済的な問題を解決したいという理由が一番大きいです。「出稼ぎ」という言葉がありますが、これは世界的にも見られる傾向で、一例として、旧西ドイツ政府が公募した外国人出稼ぎ労働者(ガストアルバイター)は、ドイツ経済を大躍進させた原動力となっています。

人口ピラミッド

人口の年齢層がどのように構成されているかを示したものを人口ピラミッドと言い、テストや大学受験では、各地域の人口ピラミッドを見極める問題が頻出です。しかし、先述の自然増減の理論を押さえておけば、見極めることは容易です。

  • 富士山型

幼年人口が多く、高齢人口が少ないものを富士山型と呼びます。発展途上国の中でも文明の発達が遅れている国々に該当します。多産多死型とも呼ばれます。

  • つりがね型

文明が発達してくると、人口ピラミッドはつりがね型に移行します。これは、医療が発達したり、女性の社会進出が進んだりしたことで、少産少死型にフェーズが移行した段階になります。

  • つぼ型

出生数がさらに減少すると、つぼ型に移行します。これは、高齢者が非常に多いですが、出生数も非常に少ないため、人口減少が顕著に見られる段階になります。

日本の人口問題

日本の人口推移

日本の人口は、明治時代まではいわゆる多産多死型でしたが、第二次世界大戦前後で、多産少死型から少産少死型へ移行していきます。戦後のベビーブームや1970年代の第二次ベビービームなどを経て、日本の人口は1億人を超えていきましたが、2005年をピークに減少の一途を辿っています。
2019年9月時点で、約1億2600万人いる人口は、2050年には1億人、2100年頃までには、6000万人ほどになると推察されています。
先述の通り、第二次世界大戦以降、日本では人口が急激に増加しましたが、現在は減少に転じています。その結果、急速に少子高齢化が進行し、現在は65歳以上の高齢者が、人口全体の25%以上を占める超高齢社会となっています。
(なお、超高齢社会は老年人口が全体の21%以上を占める場合に使用されます)

日本の人口分布

日本は、都市部と地方部で人口に大きな偏りが生じています。人口の多い都道府県を挙げると、東京都や神奈川県、大阪府、愛知県、千葉県、兵庫県など、それらは太平洋ベルトと呼ばれる地域と合致し、これらの地域は東海道メガロポリスとも呼ばれています。
これらに属する地域では、地域経済が発達しているため、多くの雇用が生まれ、それに伴って、人口が多く流入してきやすくなっています。また、流行の発信となっている東京をはじめとして、様々な機能が都市部に集約しているため、地方から都市部へ人口が流入してきやすい状態となっています。日本の人口分布は、社会増減要素が非常に大きく関わっており、東京への一極集中問題として取り上げられ、これを解消するために、機能を地方へ分散しようとする取り組みが行われています。その一例として、東京教育大学(現筑波大学)のつくば移転などが挙げられます。

少子化の原因

日本の少子化に歯止めが利かない理由として、男性の勤務時間が長いことから、子育てに参加できない・育児休暇を取りにくいといったものや、家計の総所得が低いこと、保育所が少ない、女性の社会進出が進んだといった点が挙げられます。
同じ先進国でも、記載した項目が解消されている国々では、人口の維持が実現出来ています。

各国の人口問題

中国

中国は世界一の人口大国で、急激な人口増加は第二次世界大戦以降に顕著になっていました。毛沢東が死去した直後の1979年には、一人っ子政策を実施し、問題となりました。この政策の影響で、戸籍を持たない子どもが現れたり、甘やかされて育てられた子どもが社会に適応できなかったりするなどの問題が浮上しました。

インド

インドは世界第2位の人口大国で、2050年には中国を抜いて、1位になると言われています。インドも他国と同様に、第二次世界大戦以降に急激な人口爆発が起き、それを抑制するために、家族計画が実施されましたが、あまり効果がありませんでした。
多くの子どもが生まれましたが、社会保障の整備が遅れ、貧困問題や文字を読めない子どもが続出するなど、低い識字率も問題となりました。

その他先進国

先進国では、発展途上国とは異なり、人口減少をいかに改善するかという課題があります。そのため、保育施設を充実させたり、男性が積極的に子育てへ関わることの出来る社会へ変えていったり、社会保障制度を整備したりするなど、社会を様々な面から支えていこうとする取り組みが見られます。代表的な国に、スウェーデンやデンマーク、フランスなど、ヨーロッパの国々が挙げられます。
また、韓国やシンガポールは、日本以上の超高齢社会となっており、こちらも様々な政策を取り入れようと動いています。

人口減少の問題点

人口減少がなぜ問題となるのかについては、大学受験の論述試験で出題されやすい項目となります。それは、人口減少自体はあまり良いものではなく、減少することによって様々な問題が発生することを理解しているかという観点を試しているからです。そのため、それぞれの理由を自身で説明出来るようになることが重要です。

経済の停滞

人口が減少すると、労働力が減少します。その結果、モノやサービスの生産力が低下するため、それに伴い消費も低迷することになりますので、経済の停滞に繋がってしまいます。

社会保障制度の崩壊

社会保障は、私たちが健康で文化的な最低限度の生活を営む上で欠かせないものになります。その社会保障の財源は、私たちの税金で成り立っていますが、人口が減少すると、税収が減少するため、現行の社会保障を維持していくことが困難となります。さらには、年金制度や介護・福祉制度の見直しが必要になってくることも否めません。

住環境の悪化

人口が減少すると、それまで使われていた住居が使われなくなってしまうため、空き家となってしまいます。さらには、地価や家賃が下落することによって、不動産市場に大きな影響を与えます。また、市街地の空洞化が発生し、ゴーストタウンが誕生することにもなりかねません。また、悪化した住環境を改善していくには、さらなる財源が必要になってくるでしょう。

さいごに

人口問題については、私たちの暮らす日本においても、顕著な社会問題となっていることから、テストや大学受験で取り扱われることの多いテーマとなります。人口問題には、人口増加と人口減少という二軸の問題点が挙げられます。それぞれ、「なぜ増減するのか」という問題の背景を読み取ることが出来るかが、非常に重要になってくるわけです。
また、人口問題はどの国でも抱えている共通の課題になりますが、その状況によって、取り組むべき政策は変わってきますので、その点も確認しておきたいところです。
なお、本テーマで最も出題されやすい問題が、人口ピラミッドの読み取りになります。こちらは各国の人口ピラミッドを見ながら、なぜそのような形になっているのかを、理由と併せて理解することが高得点へのカギとなりますので、教科書や資料集を意識した学習を心がけましょう。

人口ピラミッドの問題は、新センター試験や各大学入試で出題される可能性が高いので、必ず目を通しておきましょう。
 おすすめの勉強アプリはコチラ