人種・民族 | 0から始める高校地理まとめ

世界には様々な人種や民族、そして文化があります。それらの特徴は一体何なのか、そして、様々な人がいるからこそ、様々な問題が発生しています。本単元では、その大まかな内容を学習していきます。

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はじめに

世界には様々な人種や民族が存在しています。しかし、それらの分布には、歴史的な背景から共通点がありますので、その点を押さえることで、円滑に理解出来ます。また、本単元で出題されやすい問題として、民族対立やその原因などが挙げられます。それらの背景を理解しながら、世界でどのような問題が発生しているのかという点を理解していきましょう。

人種や民族の定義

普段から人種や民族という言葉を使用しますが、それぞれの定義を理解してから、学習に入ることが大切です。
人種とは、人類を皮膚の色や髪質などの身体的特徴で分類したものになります。一方で、民族は、人類を使用言語や宗教、慣習などの文化的な共通項から分類したものになります。
ですので、例えば、民族というキーワードが出てきた際には、その背景にある宗教や慣習までを読み取ることが重要です。

人種

人種は先述の通り、身体的な特徴から人類を分類した概念になります。人種で理解しなければならない内容は、どういった人種がどのような特徴を持っていて、そしてどこに分布しているのかという点になります。それ以外の内容については、そこまで問われることはありません。

人種の大分類

  • コーカソイド(白色人種)

コーカソイドは、主にヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどに多く分布しています。また、イギリスに植民地として支配されていたインドにも一定数分布しています。背が高く、青色の目、金髪であることが特徴です。

  • ネグロイド(黒色人種)

ネグロイドは、主に、アフリカや中米、南米に多く分布しています。黒い肌に、厚い唇の巻毛であることが特徴です。

  • モンゴロイド(黄色人種)

モンゴロイドは、中国や日本、マレーシアなど、主にアジアに分布していることから、アジア系人種とも呼ばれます。皮膚が黄色く、黒髪、黒目、低身長であることが特徴です。

  • オーストラロイド

オーストラロイドは、文字通り、オーストラリアを中心に分布している人種で、褐色の肌や低い鼻が特徴です。オーストラリアのアボリジニや、ニュージーランドのマオリに代表される原住民もこちらの人種に属します。

混血人種

ラテンアメリカでは、植民地支配を受けてていた影響から、原住民(インディオ)と白人や黒人などとの混血が見られます。ラテンアメリカに分布している混血人種は頻出ですので、必ずその特徴と分布している国を理解しましょう。

  • メスチソ

インディオと白人の混血をメスチソと言います。中南米の全域に分布していますが、パラグアイは全人口の90%以上がメスチソに該当しますので、この国は必ず押さえましょう。

  • サンボ

インディオと黒人の混血をサンボと言います。こちらもメスチソと同様に、中南米の全域に分布していますが、カリブ海沿岸の国々にはあまりいません。

  • ムラート

白人と黒人の混血をムラートと言います。主に、ブラジルやドミニカ共和国に多く分布しています。

  • その他

世界各地には原住民と呼ばれる、昔からその地域に住んでいる民族が存在します。その中でも、カナダやアラスカなど北極に近い地域に住むイヌイットや、アメリカを中心とした北米に住むネイティブアメリカン(インディアン)は頻出です。なお、南米ではインディアンの代わりにインディオと呼ばれます。

民族

民族は先述の通り、人類を使用言語や宗教、慣習などの文化的な共通項から人類を分けたものになります。特に民族の分類においては、使用言語と宗教による区別が基準となることが多いため、この2点に注目して学習を進めていきましょう。

世界の言語

世界で使われている言語は、私たちが使っている日本語をはじめ、英語や中国語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語など、合計で130以上あるとされています。その中でも、例えば、英語やイタリア語などはラテン語が語源と言われていますが、このように言語は、共通の特徴を持ち合わせる言語同士(語族)で大きく分類されます。このテーマは、細かく覚える必要はあまりありませんので、大枠を理解すれば問題ありません。

  • インド=ヨーロッパ語族

インド=ヨーロッパ語族は、世界最大の言語集団と言われており、属する言語は130以上と言われています。

①ゲルマン語族
ゲルマン語族には、英語やドイツ語、オランダ語、デンマーク語などが分類されます。分布の特徴としては、ヨーロッパ北部やそれらに属する国々から植民地支配を受けていた国が多くなっています。これらを母国語として使用している国々では、キリスト教のプロテスタントを信仰している人が多くなっています。

②ラテン語族
ラテン語族には、イタリア語やフランス語、スペイン語、ポルトガル語などが分類されます。分布の特徴としては、ヨーロッパ南部やそれらに属する国々から植民地支配を受けていた国が多くなっています。ちなみに、ラテンアメリカという呼称がありますが、これらはいずれも主にスペインやポルトガルから植民地支配を受けていた地域を指します。なお、これらを母国語として使用している国々では、キリスト教のカトリックを信仰している人が多くなっています。

③スラブ語族
スラブ語族には、ロシア語やウクライナ語、ポーランド語などが分類されます。分布の特徴としては、東欧諸国に多くなっています。これらを母国語として使用している国々では、キリスト教の東方正教会を信仰している人が多くなっています。

④インド=イラン語族
それぞれインド語族には、ヒンディー語やウルドゥー語、イラン語族にはペルシア語やパシュトン語、クルド語などが属しています。

  • アフリカ=アジア語族

アフリカ=アジア語族は主に、北アフリカや西アジアを中心に分布しています。

①セム語族
セム語族には、アラビア語やヘブライ語が属します。西アジアに多く分布しています。

②ハム語族
ハム語族は、トゥアレグ語(ベルベル語)が代表例となり、北アフリカに分布しています。

  • 複数の公用語を持つ国々

スイスやベルギー、インド、カナダ、シンガポールなどでは、複数の言語が公用語に設定されています。
公用語分布

民族と宗教

民族の中において、信仰している宗教は非常に重要な項目となります。世界には、広く普及している三大宗教と呼ばれるものから、その民族の中で普及している民族宗教まで、様々な宗教が存在していますが、信仰している宗教の違いが、民族区分を分ける要素になっているためです。本テーマは頻出ですので、それぞれの宗教の違いを押さえながら、信仰されている地域を押さえておきましょう。

キリスト教

キリスト教の起源となっているのはユダヤ教になります。イエス=キリストが「絶対愛による魂の救済」を説き、それが広まっていき、のちにヨーロッパの情勢に大きく関わってくる宗教となります。聖典は聖書です。

  • カトリック

ローマを中心として、古代から普及しているキリスト教の宗派です。主に、ラテン語族に属する民族から信仰されており、南ヨーロッパやラテンアメリカなどに分布しています。

  • プロテスタント

16世紀にルターやカルヴァンなどが宗教改革を行った際に、ローマ教会に対抗して創始されたキリスト教の宗派です。カトリックに対して、新興宗教とも呼ばれます。主に、ゲルマン語族に属する民族から信仰されており、北ヨーロッパや北米などに分布しています。

  • 東方正教

10世紀頃に、カトリックから分裂して創始されたキリスト教の宗派です。主に、スラブ語族に属する民族から信仰されており、ロシアや東ヨーロッパなどに分布しています。

イスラム教

7世紀頃にムハンマドが創始した宗教です。アッラーを唯一神として崇め、イスラム教の信者はムスリムと呼ばれます。偶像崇拝を禁止したり、ラマダーン月に断食をしたり、豚肉を不浄としたり、1日に5回、メッカの方向にお祈りを捧げなければいけなかったりなど、厳しい戒律で知られています。聖典はコーラン(クルアーン)です。

  • スンニ派

スンニ派は、創始者であるムハンマドの教えを忠実に守る宗派で、ムスリムの90%はこちらに分類されます。

  • シーア派

シーア派は、ムハンマドの甥であったアリーを支持する宗派で、ムスリムでは少数派となっています。しかし、イランやイラクなどでは、人口の大半がシーア派になっています。

仏教

紀元前5世紀頃に、インドの釈迦の教えを基に、普及した宗教です。厳しい修行によって自身を解放し、安らかなる境地に辿り着くことを説いています。

  • 大乗仏教

大乗仏教は、自身だけではなく、他人も救おうとする理念の宗派で、インドや中国、韓国、日本などに伝わってた宗教です。

  • 上座部仏教

上座部仏教は、厳しい戒律を守り、自身の解脱を目指そうとする宗派で、インド南部からミャンマー、スリランカ、タイなどで普及しています。

ユダヤ教

ユダヤ教は、ユダヤ人が信仰する民族宗教で、唯一神ヤハウェを崇め、ユダヤ人のみが救われるという選民思想が特徴的です。

ヒンドゥー教

ヒンドゥー教は、インドで一番多くの信者を抱える宗教です。厳しい戒律で知られるバラモン教に、インド人の思想を加えて、宗教に発展したもので、多神教となっています。牛を神聖な動物としているため、牛肉を食べることは禁じられています。

主な民族問題

ベルギー

ベルギーでは、北部がフラマン語、南部がワロン語として普及しています。現在は、公用語が2つに設定されていますが、民族性が異なるため、度々対立してきました。

北アイルランド紛争

北アイルランドは、イギリスに民族性が近く、住民の大半がプロテスタントを信仰していたため、カトリック信者が多くを占めるアイルランドが独立した際に、イギリスに残留しました。しかし、アイルランドがそれを良しとせず、武力紛争が発生しました。

バスク・カタルーニャ地方

スペインには、独自の文化や言語を築いた地域があり、それぞれバスク地方とカタルーニャ地方では、スペインから独立しようとする動きが見られます。カタルーニャ地方の主要都市にはバルセロナがあります。

パレスチナ

パレスチナは従来、古代ユダヤ王国がありましたが、ローマ軍の進軍によって分解され、その後に、ムスリムの居住地となりました。しかし、ユダヤ人が1948年に、イスラエルを建国したため、アラブ諸国と対立することになりました。中東戦争を経て、現在、パレスチナには自治政府が置かれています。中世以降、パレスチナにはアラブ人(ムスリム)が住んでいたわけですが、そこにユダヤ人が国家を作ってしまったことが大きな原因となっています。

チェチェン

チェチェンは現在、ロシアの管轄下に置かれている地域になります。キリスト教の東方正教を中心とするロシアとは異なり、チェチェンではイスラム教が普及していることから、民族性の違いを理由に、武力衝突が起こっています。また、チェチェンには、豊富な資源が眠っていることから、それを巡った争いも発生しています。

クルド人

クルド人はイランやイラク、トルコなどに広く分布している山岳民族で、独自の文化や慣習、言語を持っています。クルド人の住むエリアには、豊富な資源が眠っているため、クルド人が独立運動を起こしていますが、各国から弾圧されているため、争いが絶えない状況となっています。

カシミール地方

インド、パキスタン、中国の国境付近に位置しているカシミール地方は、国境線を巡って軍事対立をしています。宗教もそれぞれヒンドゥー教、イスラム教、仏教で、信仰対象が異なっています。この地域は昔から、交通の要衝となっており、様々な交流が見られます。

ケベック州

カナダ東部に位置するケベック州は、フランス系の住民が大半を占めているため、イギリスの植民地であったカナダからは独立を目指す動きが見られます。1995年にはケベック州独立を問う投票が行われましたが、惜敗しました。現在、カナダでは、ケベック州の状況も踏まえ、多文化主義政策を推し進めています。

さいごに

本単元は、世界にはどのような人種や民族がいるのか、そしてどのような文化が普及しているのかを理解する必要があります。その背景には、主に宗教が大きく関係している部分がありますので、復習をする際には、その内容を改めて確認をするとともに、宗教や文化が原因で、どのような民族紛争が発生しているのかまでを見ることが重要になります。そうすることで、十分にテストや大学受験対策になります。

覚えるべき事項が多いため、他の単元と同様ですが、まずは一通り内容を見てみましょう。詳細な内容はその後からでも全く問題ありません。
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