エネルギーと鉱産資源 | 0から始める高校地理まとめ

私たちの生活において、エネルギーは必要不可欠なものです。本単元では、そもそもエネルギーとはどういったものであるのかや、その歴史について、また、エネルギー問題に至るまでを扱い、全般的な知識の習得を目指します。


エネルギーと鉱産資源_0から始める高校地理まとめ

はじめに

「エネルギー」という言葉を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。ざっくりとしたイメージは頭に浮かぶかもしれませんが、詳細に答えられる人はそこまで多くはないと思います。
エネルギーの定義はともかく、高校地理においては、エネルギーを生み出す、石油や石炭等のような鉱産資源や、風や太陽光、地熱等、自然が生み出す新エネルギーを取り扱います。
また、エネルギーは有限ですから、その使い方や地球にやさしいエネルギーに関わる問題についても学習します。
定期試験や大学受験で頻繁に出題される点は、鉱産資源がどこで多く生産されているか、また、日本がどの国から鉱産資源を輸入しているか等が挙げられます。日本が抱えるエネルギー問題は何かという点を考えながら、学習を進めると良いでしょう。

エネルギー資源の歴史

エネルギー革命

産業革命以前は、風力や水力に代表される自然エネルギーに依存していました。しかし、産業革命以降は、石炭を利用した工業が発達したことからも分かる通り、エネルギー生産の中心には石炭が君臨することになります。
しかし、1950年代に入ると、中東を中心に、巨大油田が次々に発見され、1960年代には、エネルギー生産の主役は石炭から石油や天然ガスに移行していくことになります。これをエネルギー革命と言います。日本では、エネルギー革命が起こった1960年度以降には、以前にも増して、急激に経済成長を遂げることになります。

公害の発生と環境の悪化

エネルギー革命以降は、世界的な経済成長が発生し、それに伴い、多くのエネルギーが消費されるようになっていきました。しかし、石炭や石油を燃焼させると、窒素酸化物硫黄酸化物と呼ばれる有害物質が発生することになり、酸性雨環境汚染温室効果等の公害問題が顕著になりました。

石油危機(オイルショック)

1973年の第四次中東戦争、1978年のイラン革命によって、産油国による急激な石油供給制限が発生し、世界的に石油価格が高騰したことを石油危機(オイルショック)と言います。エネルギー革命以降、世界のエネルギーにおける中心は石油になっていたため、世界経済に大きな打撃を与えました。日本国内でもトイレットペーパーの価格が急激に高騰した事例は有名です。
石油危機(オイルショック)の発生以降、エネルギーの節約やクリーンエネルギーへの展開が急速に進んでいくことになります。

クリーンエネルギーと新エネルギー

クリーンエネルギーの代表例は下記となります。

  • 太陽光

夏に良く晴れる地域で広く行われています。

偏西風など、年間を通して一定の風が吹く地域で行われています。

  • 地熱

火山が分布する地域で行われています。

  • 水力

ダムを建設して、水が落下した勢いでタービンを回します。

また、上記に加えて、バイオマスやメタンハイドレートと呼ばれる資源にも注目が集まっており、新エネルギーは、今後より一層の拡大が見込まれています。

  • バイオマス

植物や穀物等の生物資源を発酵させ、エタノールやメタンガスとして利用します。ブラジルではサトウキビ、アメリカや中国ではトウモロコシ等の資源を利用しています。

  • メタンハイドレート

天然ガスの主成分であるメタン分子を水分子が取り囲む氷状の個体のことで、永久凍土の地中や、日本近海の海底に分布。日本のエネルギー問題に革命を起こす資源としても注目を浴びています。

鉱産資源

鉄鉱石

鉄鉱石は主に、安定陸塊が分布する地域で多く産出されます。中国やブラジル、オーストラリア、インド等で多く産出し、石油や石炭と比較すると、各国でバランスよく産出しているイメージで理解しましょう。

鉄鉱石

上記の地図は、世界の鉄山を示したもので、世界でも産出量の多い代表的な鉄山を抜粋しています。先述の通り、鉄鉱石は安定陸塊に多く分布しているため、国土面積が広く、国土の大半が安定陸塊に属している国での産出が多くなります。
特に、ブラジルのイタビラ鉄山カラジャス鉄山、オーストラリアのピルバラ地区、マウントホエールバック、中国ではアンシャン(鞍山)鉄山、インドではシングブーム鉄山で多く生産されています。
なお、アメリカのメサビ鉄山は、先述の鉄山と比較をすると、生産量はかなり落ちますが、アパラチア炭田とともに、デトロイトやピッツバーグ等の一大産業地帯を築いた有名な鉄山ですので、必ず覚えておきたいところです。

石炭

石炭はエネルギー革命が起こるまで、エネルギー生産の中心となっていた資源で、石油や天然ガスが台頭してきた今日においても、重要な役割を担っています。主に、古期造山帯に分布しているため、地図帳や資料集で古期造山帯に属する地域がどこにあるかを確認しておきましょう。具体的には、アメリカ東部や中国東部、インド東部やオーストラリア東部に大きな炭田があります。なお、余談ですが、大国の東部に多い点が特徴的かもしれません。

石炭

上記の地図は、世界の炭田を示したもので、世界でも産出量の多い代表的な炭田を抜粋しています。基本的には古期造山帯の分布に近いことが読み取れるでしょう。中国北東部のフーシュン(撫順)炭田は、世界最大の露天掘りが行われており、日本にも輸出されています。アメリカではアパラチア山脈付近のアパラチア炭田が有名です。メサビ鉄山と同様に、ピッツバーグの鉄鋼産業を築いた炭田ですので、テストでは頻出です。インドのダモダル炭田はインドの石炭産業を支える根幹となっています。その他には、シベリア西部に位置するウラル炭田やクズネツク炭田は、ヨーロッパを代表する炭田ですし、オーストラリア東部に位置するモウラ炭田は、日本向けにも多く輸出されていますので、頭に入れておきたいところです。
なお、日本でもかつては石炭を産出していましたが、現在では閉山となっており、石炭は100%輸入に頼っている状況です。主に、中国やオーストラリアから輸入していますので、その点も併せて覚えておきましょう。

石油

石油はエネルギー革命以降、エネルギー生産の中心に台頭した資源です。主に、新期造山帯に分布している点が大きな特徴で、褶曲した地形の背斜部にあります。世界の約60%は西アジアに分布していると言われ、ペルシャ湾岸が石油の一大産地となっています。

石油

上記の地図は、世界の油田を示したもので、世界でも産出量の多い代表的な油田を抜粋しています。この中で特に重要な油田は、サウジアラビアのガワール油田、アゼルバイジャンのバクー油田、ロシアのチュメニ油田、ヨーロッパの北海周辺に広がる北海油田、メキシコ湾岸に広がるメキシコ湾岸油田、ベネズエラのマラカイボ湖油田になります。これらは、世界でもトップクラスの産出量を誇り、一国の経済を支える根幹と言っても過言ではない油田になりますので、テストでは頻出です。なお、石油の輸送方法にはパイプラインが挙げられますが、アゼルバイジャンやロシア等で産出された石油はパイプラインを用いて、ヨーロッパへ輸出されます。
一点注意しなければならないことは、石油は西アジアに多く埋蔵していますが、石油の生産量で言えば、1位はアメリカです。2位にサウジアラビア、3位にロシアと続くのですが、西アジアで上位が占められているというわけではない点にも気をつけて下さい。もちろん、西アジアの国々が相対的に産出量が多いということは言うまでもありません。

天然ガス

天然ガスは、純度が高く汚染物質が非常に少ないことから、クリーンエネルギーと言われます。そのため、石炭や石油の代替資源として、火力発電では需要が急速に拡大しています。生産国には、アメリカやカナダ、ロシア、イギリス、インドネシア等になりますが、分布の特徴として、油田と似ている部分が多いため、油田の位置を覚えておくと、内容をスムーズに理解出来るでしょう。
日本は距離が近いことから、インドネシアやマレーシア、オーストラリア等から大半を輸入しています。輸送の際は、天然ガスを冷却し、液化天然ガスLNG)に加工し、それをパイプラインやタンカーを利用し、世界の国々へ輸出されていきます。

その他の資源

上記で紹介した鉱産資源にも、私たちの生活で使用されているものは多くあります。下記に代表的な資源を挙げますので、要点を押さえましょう。

銅の生産は、世界の約3分の1を占めているチリが非常に重要です。チリの国営企業がチュキカマタ銅山等、産出量の多い銅山を所有して、大規模に生産しています。

  • ボーキサイト

ボーキサイトは世界の約3分の1をオーストラリアが生産しています。代表的はウェイパ鉱山です。その他、ブラジルや中国、インドネシア、ギニア等で多く生産されていますが、ボーキサイトは熱帯に広がるラトソルという土壌から産出されるため、熱帯に分布する国が多くなるわけです。

  • レアメタル

レアメタルは地球上にあまり存在しなかったり、産出が技術的に難しかったりする希少価値の非常に高い金属の総称です。ニッケルやマンガン、コバルト、クロム、タングステン等、全31種類あります。家庭用品や産業機械、ハイテク産業に至るまで、様々な場面で使用されています。レアメタルはアフリカに集中していることが特徴的です。

電力

私たちの生活に欠かせない電気は、水力や火力、原子力、太陽光、風力、地熱等の発電方法によって作られています。電力は様々な資源を変換・加工して作られるため、2次エネルギーと呼ばれます。
(一方で、石油や石炭等、様々なエネルギーの元になるものを1次エネルギーと言います)
高校地理において、電力の分野で問われやすい内容は、世界各国が主要発電は何であるかや、各発電方法のメリットやデメリットが挙げられます。
なお、総発電量が多い国は、アメリカや中国、インドのように人口が多かったり、ヨーロッパ等、経済活動が活発だったりする点が共通点となります。

各国の発電方法

世界各国の発電方法
今日、世界の発電における主流は火力発電となっていますが、各国は様々な条件下で、自国に適した電力発電を推し進めています。
上記の表は、主な発電方法とその代表的な国を示したものとなりますが、テストでは頻出事項となります。

  • 水力発電
  • 水力発電が盛んな国に共通する点は、国内の豊富な水を活用することが出来るということになります。そのため、非常にクリーンな点がメリットです。しかし、水資源が不足した場合は、安定的に電力を供給出来なくなる可能性があります。
    ノルウェーは、ほぼ100%に近い割合で水力発電に依存している稀有な事例です。また、ブラジルも約80%が水力発電となっています。

  • 火力発電
  • 火力発電は世界各国で主流の発電方法となっています。石油や石炭を輸入し、それを燃焼させるため、それらを手に入れることが出来れば、どの国でも発電することが出来ますので、比較的参入が容易な発電方法です。特に、多くの先進国は、火力発電に大きく依存している状態です。安定的に電力供給が出来ますが、環境汚染が問題として挙げられます。

  • 原子力発電
  • 原子力発電は、クリーンな発電方法として、世界各地で取り入れられてきました。特に、フランスは国内発電の約80%を原子力発電に依存しています。
    しかし、原子力発電のリスクには、放射能汚染が挙げられます。1986年に旧ソ連(現ウクライナ)で、世界最悪と言われるチェルノブイリ原発事故が発生しています。また、2011年には、日本で福島第一原発事故が発生し、現在でも周辺への立ち入りが厳しく制限されている事例も見られます。この原発事故が発生するまでは、日本でも原子力発電の割合が約25%ほど占めていましたが、事故後は原子力発電所が停止され、火力発電への比重を増やしていくことになりました。

    これからのエネルギー

    現在のエネルギー生産の中心は石炭や石油に代表される化石燃料と言っても過言ではありません。しかし、これらは埋蔵量に限界があり、有限ではありません。そういった中で、世界はクリーンエネルギーへの転換(=新たなエネルギー革命)が急速に進んでいます。化石燃料からクリーンエネルギーの転換が進むと、資源の枯渇や地球温暖化といった問題を抑制すること出来ますので、持続可能な発展が実現出来るというわけです。

    さいごに

    エネルギーと鉱産資源に付随する問題は、私たちの生活にとって、ますます重要性が増していくと考えられています。そのため、テストや大学受験では頻出の分野であることは間違いありません。そして、クリーンエネルギーの登場によって、環境問題の改善に繋がることも期待されていますので、その点にも注目して、学習を進めましょう。

    エネルギーの歴史や鉱産資源の分布、各国の発電、発電におけるメリット・デメリットを端的に説明出来るようになれば、この単元の基礎は定着したと言っても良いでしょう。
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