植物の生活と種類

生物は動物と植物に大きく分けられます。この単元では植物について学習します。植物と一言に言っても花や葉のつくりは様々です。
ここでは植物の各器官のつくりとはたらきについて主に学びます。また、そのつくりに沿って分類することでより植物の特徴をつかむことができます。
それではこれらについて学習していきましょう。

植物の生活と種類

花のつくりとはたらき

顕微鏡の使い方

この単元で扱う顕微鏡は、鏡筒上下式顕微鏡とステージ上下式顕微鏡です。ピントを合わせる際に上下する部分が異なるだけで、2つとも基本操作は同じになります。ここではステージ上下式顕微鏡の使い方を紹介します。

①対物レンズを一番低い倍率にします。低倍率では視野が広く明るく見えるため、観察したいものが探しやすくなります。
②接眼レンズをのぞきながら反射鏡の角度を調節し、全体が均等に明るく見えるようにします。
③プレパラートをステージにのせ、観察したいものがレンズの中央に来るように調節しクリップで固定します。
④調節ねじを回してステージと対物レンズをぎりぎりまで近づけます。このとき真横から見て操作します。接眼レンズをのぞきながら行うとプレパラートが対物レンズにぶつかってしまう恐れがあるからです。
⑤接眼レンズをのぞきながら調節ねじを④とは逆方向に少しずつ回し、プレパラートと対物レンズをピントが合うまで離していきます。
⑥最後にしぼりを調節して観察したいものが最もはっきり見えるようにします。
高倍率にするときは対物レンズとプレパラートがぶつかることを防ぐため、一度ステージを下げましょう。
その後レボルバーを回し観察したい倍率の対物レンズに合わせます。あとは先程と同じ操作です。高倍率にすると視野が狭く、明るさも暗くなります。

花のつくりとはたらき

身のまわりには多くの植物があります。サクラやアブラナ、アサガオなど、花の色や形は様々ですが、そのつくりはほとんど同じです。
花を分解すると、外側から順に以下のようなつくりが多く見られます。

  • がく
  • 花弁
  • おしべ
  • めしべ

それぞれについて詳しく見てみましょう。

がく…花弁の付け根についている緑色の小さな葉のようなもので、花全体を支える役割をしています。
花弁…いわゆる「花びら」です。
おしべ…先端に「やく」と呼ばれるふくらみがあり、この中に花粉が入っています。1つの花に複数本あります。
めしべ…先端は「柱頭」と呼ばれ、ここに花粉が付き受粉します。1つの花にふつう1本あります。まためしべの根本のふくらんだ部分は「子房」、子房の中には「胚珠」があります。受粉すると子房は「果実」、胚珠は「種子」へと成長します。

以上がよく私たちが目にする植物の花のつくりです。これらの植物は種子を作ることによって子孫を残します。
このように種子をつくる植物を「種子植物」といいます。

被子植物・裸子植物

種子植物のうち、サクラやアブラナなどは胚珠が子房に包まれています。このような植物を「被子植物」といいます。

それに対して、同じ種子植物でもマツやイチョウ、スギ、ソテツなどは胚珠がむき出しになっています。このように胚珠はあっても子房が無い植物を「裸子植物」といいます。

裸子植物の花には花弁やがくはなく、雄花、雌花が別々に咲きます。雄花のりん片には花粉のうがあり、ここに花粉が入っています。
花粉は胚珠に直接付いて受粉します。裸子植物は胚珠がむき出しのため、被子植物に比べて気温や湿度などの影響を受けやすいといえます。

葉・茎・根のつくりとはたらき

葉のつくりとはたらき

この単元で覚えるべき葉のつくりは以下の3つです。

  • 葉緑体
  • 葉脈
  • 気孔
葉緑体…「光合成」を行う細胞です。葉だけでなく植物の緑色の部分に存在します。
葉脈…葉に見られる筋のようなつくりです。
葉脈には「維管束」と呼ばれる管があり、水や養分が通っています。植物の種類によって網目状のものと平行なものがあります。
気孔…水や空気が出入りする小さな孔です。2つの孔辺細胞に囲まれた隙間を指します。気孔から水を排出することを「蒸散」といいます。

光合成・呼吸

生物が生きるためにエネルギーを作り出すことを「呼吸」といいます。
植物の生活と種類1
植物も生物ですので、もちろん呼吸をしています。呼吸は昼夜問わず常に行われています。
一方、光エネルギーを使い、二酸化炭素と水を材料としてデンプンなどの養分と酸素を作り出すことを「光合成」といいます。
植物の生活と種類2
光合成は葉緑体で行われており、光が当たっている間しか行われません。また葉緑体のない部分(ふの部分など)でも行われません。

強い光が当たり光合成が盛んになると呼吸で出される二酸化炭素よりも、光合成で取り入れられる二酸化炭素の方が多くなります。

また、呼吸で使われる酸素よりも光合成で放出される酸素の方が多くなります。この結果、昼は二酸化炭素を取り入れて酸素を出しているように見えるのです。
植物の生活と種類3
光合成と環境条件には以下のような関係があります。

  • 光…光が強くなるほど光合成が盛んになります。
  • 二酸化炭素…二酸化炭素の濃度が高いほど光合成が盛んになります。
  • 温度…ある温度のとき光合成がさかんになります。その温度より高くても低くても光合成量は減ります。

なお、光も二酸化炭素も増えれば増えるほど光合成量も増えますが、ある程度のところで頭打ちになります。

蒸散

植物は根から水を取り込み、葉から排出します。水を排出する仕組みを「蒸散」といいます。蒸散は葉の気孔で行われており、気孔は葉の裏側に多くあります。

気孔の多い葉の裏側にワセリンを塗って蒸散をおさえたものに比べて、表側にワセリンを塗ったものやワセリンを塗らなかったものの方が、吸水量が多くなります。
また、葉を全て取り除いた場合、吸水はほとんど起こりません。このことから気孔で蒸散が行われると吸水も起こることがわかります。つまり蒸散が主な原動力となり根から水が吸収されるのです。

吸水された水は茎(道管)を通って葉に到達し、葉脈を通って気孔に届きます。そして気孔から蒸散が行われ水は蒸気として空気中に放出されるのです。このようにして植物に必要な水は全体に行きわたる仕組みとなっています。

茎のつくりとはたらき

茎は植物全体を支えるはたらきをしています。茎には根から吸収した水や水に溶けた肥料分などを運ぶ「道管」と、光合成によってつくられた栄養分などを運ぶ「師管」があり、これらを合わせて「維管束」といいます。維管束はね、茎、葉へと通じています。

維管束の並び方は植物によって異なります。トウモロコシなどでは維管束が茎全体に散在しているのに対し、ホウセンカなどでは輪の形に並んでいます。

根のつくりとはたらき

根は植物の地上部を支えると共に、水や無機物を吸収する働きをしています。根の形も植物によって異なります。トウモロコシなどはたくさんの根が広がっており、このような根を「ひげ根」といいます。

一方ホウセンカなどは太い根を伸ばし、そこから細い根が伸びています。この太い根を「主根」、細い根を「側根」といいます。

また、それぞれの根の先端より少し元の部分を拡大すると、非常に細い毛のようなものが生えているのがわかります。これは「根毛」と呼ばれ、土の細かい隙間に入り込みます。
土と接する面積を広げることでより多くの水や肥料分を取り込むことができるのです。

植物の分類

種子植物

種子をつくる植物を種子植物といいます。
そして種子植物は胚珠が子房に包まれている被子植物と、むき出しになっている裸子植物に分けられます。ここまではすでに学習済みです。これをさらに分類していきましょう。

被子植物には、子葉が1枚のものと2枚のものがあります。それぞれ「単子葉類」「双子葉類」と呼ばれ、子葉以外にも違いがあります。
植物の生活と種類4
双子葉類はさらに花弁によっても分類されます。ヒマワリやバラのように花弁がひとつひとつ離れているものを「離弁花類」、アサガオのように花弁が1枚に繋がっているものを「合弁花類」といいます。

なおタンポポはたくさんの花弁があるように見え離弁花類と思われがちですが、花びらのようなものひとつひとつが小さい花であり、それがたくさん集まっているため合弁花類に分類されます。

種子をつくらない植物

植物の中には種子を作らないものもあります。それが「シダ植物」と「コケ植物」です。それぞれについて見てみましょう。

<シダ植物>

シダ植物には、種子植物と同じように葉、茎、根の区別があり、維管束もあります。しかしシダ植物の茎は地下(もしくは地表付近)にあるものが多く、地表から見える部分はほとんどが葉です。このように地下にある茎を地下茎といいます。

シダ植物は種子ではなく胞子で子孫を残します。イヌワラビなどは葉の裏に胞子が入った胞子のうをたくさんつけており、そこから胞子が落ちて発芽します。
胞子が発芽して成長するとハート形の前葉体と呼ばれるものになり、そこで卵と精子が作られ前葉体の上で受精が行われます。受精卵からは、若い葉、茎、根が育ち、数年経つと再び胞子を付ける葉を出します。
ワラビやゼンマイ、スギナ(ツクシ)などがシダ植物に分類されます。

<コケ植物>

コケ植物には維管束がなく、葉、茎、根の区別もありません。根のように見える部分は「仮根」といい、植物自体を岩や土に固定させるよう変化したものです。仮根では吸水は起こらず、水分は植物のからだの表面から直接吸収します。

コケ植物も胞子で子孫を残します。雄株と雌株がそれぞれあり、雌株にできる胞子のうの中で胞子が作られます。
ゼニゴケやスギゴケなどがコケ植物に分類されます。
例外もありますが、基本的に乾燥に弱く、日陰を好むものが多いです。

<藻類>

海水中に生息するコンブやワカメ、池や川などの淡水中に生息するアオミドロやケイソウの仲間などは「藻類」と呼ばれています。
藻類は植物とは異なるグループですが、葉緑体を持ち、体全体で光合成を行うことによって養分をつくっています。そのため藻類は海の中でも光の届く範囲でしか生活できません。

また、体の表面から水や養分を吸収するため葉、茎、根の区別がありません。ワカメなどの海藻には「仮根」があります。コケ植物同様水や無機物の吸収は行わず、岩にしがみつくはたらきをしています。

光合成をし、葉、茎、根の区別がなく、仮根があるという点を見るとコケ植物と同じですが、藻類は水中に、コケ植物は陸上に生息しています。
藻類の中には緑色をした「緑藻類」だけでなく褐色をした「褐藻類」、赤色をした「紅藻類」などもあります。
いずれも葉緑素(光合成において光エネルギーを吸収する物質)を持っています。

<菌類>

キノコやカビなどは「菌類」と呼ばれています。生物を分類する上で活発に動く動物とは明らかに異なることから、植物に分類されていた時代もありました。
しかし菌類は葉緑体を持たず、他の生物に寄生することで生活をしているので植物とも区別されます。

菌類は一般的に胞子で増えます。シダ植物やコケ植物は胞子のうで胞子がつくられるのに対し、菌類の胞子は体表で直接つくられることが多いです。
胞子が発芽すると細い糸状の「菌糸」がのびていきます。

菌類のうち特にカビは、陸上はもちろん、空気中や水中と、地球上のいたるところに存在しています。空気中には多数の胞子が飛び交っていますが菌糸はあまりにも細いため肉眼では見ることができません。

私たちがカビの発生に気が付くのは菌糸が発芽し、胞子が色づいてからです。この胞子には毒素が含まれていることが多いですが、中にはチーズやみそなどの食品製造に利用されているものもあります。

植物の分類

さて、ここまで様々な植物をつくりの特徴に沿って分けてきました。最後に、これまででてきた植物を分類しておきましょう。
植物の生活と種類5

各器官やはたらき、分類における名称など暗記事項が多いですが、中学レベルでは覚えてしまえばほとんど終わりです。

蒸散の実験で計算問題が出されることがあります。葉の表裏だけでなく、茎からの蒸散量も計算に入れなければならないひっかけ問題が出題されますので一度解いておくと良いでしょう。

単子葉類、双子葉類の分類や植物全体の分類は自分でノート等に図と共にまとめると覚えやすいです。
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