電流とその利用

この単元では静電気、電流、電磁石のしくみについて学習します。身のまわりにたくさんある電気器具のつくりやしくみは複雑ですが、実は中学理科で学ぶ基本的なつくりの組み合わせでできています。
また、電磁石に関連して電気以外に磁石の性質についても学びます。
それではこれら3つについて学習していきましょう。

電流とその利用_分野・学年別中学理科まとめ

静電気

静電気とは

冬場の乾燥した時期に、金属に触れたり衣類を脱いだりしたときにパチッとします。
これは「静電気」を呼ばれる現象で、電池や電源がなくても起こるものです。静電気は物と物がこすれ合ったときに生じます(摩擦によって起こる電気なので摩擦電気とも呼ばれたりもします)。

その物体はそれぞれ静電気をもつようになりますが、静電気をもった物体同士はパチッという以外に反発したり引き合ったりします。これは電気に+と-の2種類があるためです。同じ種類の電気は反発し、異なる種類の電気は反発します。

ではなぜこすることによって物体は静電気を帯びるのでしょうか。
私たちの身のまわりの物体は全て原子から成り立ちます。原子は+の電気を持った陽子と-の電気を持った電子をもっています。

普通の状態では原子中の陽子と電子は同じ数だけ存在し、+と-が打ち消し合っています。しかし摩擦によって電子が取れたり他の物体に付け変わってしまいます。2種類の勿体をこすりあわせると、より取れやすい方のものの電子がもう一方へ移ります。

このとき、-の電気が多くなった(電子を受け取った)方が-に帯電し、逆に-の電気を失った(電子を与えた)方が+に帯電するのです。なお、静電気は湿っていると水を通して放電してしまいますので、夏場より冬場の方が静電気は発生しやすくなります。

放電と電流

摩擦によってたまった静電気が電流として一気に空間へと流れる現象を「放電」といいます。
ドアノブなどの金属に触れたときや衣類を脱いだときに静電気がパチッと流れるものや自然現象として見られる雷などは音と光を伴う放電なので「火花放電」と呼ばれています。

それに対して蛍光灯に電流を流すと、火花放電とは異なり継続的に放電が続きます。このように気圧を低くした空間に電流が流れる現象を「真空放電」といいます。

電流の正体

そもそも電流とは何が流れているのでしょうか。
それを調べるのに使用するのがクルックス管です。これはほとんど真空状態の放電管です。
十字型をした金属板入りのクルックス管に電圧をかけ真空放電させると、+極側に金属板の影ができます。
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このことから、真空放電では-極(陰極)から+極(陽極)に向かって何かが飛び出していることがわかります。
この「何か」は、-極(陰極)から出ていることから「陰極線」と呼ばれます。

また、水平な陰極遷移上下に電圧をかけると、その上下の+極側にひかれて曲がります。
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このことから陰極線は-の電気を帯びていることがわかります。
以上のことから陰極線は-の電気(電子)の流れであるといえます。つまり電流とは電子の流れであるといえます。

ちなみに、まだ電子の存在が明らかになっていない時代に「電流は+極から-極に流れる」と定義してしまったため、電流の向きと電子の向きは逆向きになっています。

電流

回路

電流は、電源+極から流れて出して導線を通り、豆電球を光らせたりモーターを回したりします。そしてまた導線を通り電源の-極に戻ります。このような電流の流れる道筋を「回路」といいます。

回路は次の3つの共通する部分から成り立っています。

・電流を流そうとする部分(電源)
・電流が流れる部分(導線)
・電気を利用するところ(豆電球、LED、モーターなど)

回路には1本の道筋でのみ繋がっている「直列回路」と、途中で枝分かれする「並列回路」の種類があります。

回路図の書き方

回路を図に表すとき、電気用図記号を用います。
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回路を流れる電流

電流の大きさを表す単位にはA(アンペア)やmA(ミリアンペア)が使われます。直列回路では回路の各点を流れる電流の大きさはどこでも等しくなります。
一方並列回路では枝分かれする前の電流の大きさは枝分かれした後の電流の和に等しく、再び合流した後の電流にも等しくなります。

回路に加わる電圧

電圧の大きさを表す単位にはV(ボルト)が使われます。
直列回路では各区間に加わる電圧の大きさの和は、全体に加わる電圧の大きさに等しくなります。
一方並列回路ではどの区間でもかかる電圧の大きさは等しくなります。

電流・電圧・抵抗

電流の流れにくさを抵抗(電気抵抗)といいます。
抵抗の単位にはΩ(オーム)が使われます。

抵抗は次の式で求められます。

抵抗(Ω)=(電圧(V))/(電流(A))

また、次のように式を変形させれば電圧の大きさ、電流の大きさも求めることができます。

電圧(V)=電流(A)×抵抗(Ω)
電流(A)=(電圧(V))/(抵抗(Ω))

この電圧、電流、抵抗の関係を「オームの法則」といいます。

回路による抵抗

抵抗のつなぎ方によって回路全体としての抵抗(合成抵抗)の大きさは変化します。

抵抗器を直列につないだときは、合成抵抗は各部分の和に等しく、並列につないだときは合成抵抗は各抵抗の大きさより小さくなります。合成抵抗の求め方は次の通りです。

・直列回路の場合
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・並列回路の場合
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このことから抵抗の大きさは同じ材質であれば、その物質の形状に寄り次のように変化すると考えられます。

・物質(抵抗)の形が長くなるほど、抵抗が大きくなる。
・物質(抵抗)の断面積が大きくなるほど、抵抗が小さくなる。

トンネルをイメージしてください。短いトンネルより長いトンネルの方が通り抜けるのに労力を要する(抵抗が大きい)と思います。
また入り口、出口が狭いより広い方が通り抜けるのが楽(抵抗が小さい)ですよね。

先程「同じ材質であれば」と記しましたが、当然物質によって電流の流れにくさは変わります。
金属であれば流れやすいですし、ガラスやゴムはほとんど電流を通しません。

電流を通しやすい物質を「導体」、反対に通しにくい物質を「不導体」「絶縁体」といいます。

電気エネルギー

私たちは電気を利用することにより、部屋を明るくしたり、物を動かしたり、音楽を聴いたりしています。
このようにある物が様々なはたらきができるとき「エネルギーを持っている」と表現します。

電気のもつエネルギーは「電気エネルギー」といいます。(他にも動くものには運動エネルギー、高いところにあるものには位置エネルギー、光るものには光エネルギー、音を出すものには音エネルギーと、たくさんエネルギーの種類が存在しますが、それはまた別の単元で学習しましょう。)

1秒間あたりに使われる電気エネルギーの大きさを表す値を「電力」といいます。電力の単位にはW(ワット)が使われ、次の式で求めることができます。

電力(W)=電圧(V)×電流(A)

つまり電圧や電流が大きくなるほど電力も大きくなるのです。
よく電気器具に「100V-500W」のような表記がありますが、これは「この器具は100Vの電源につなぐと500Wの電力を消費します」という意味です。このような電力の表し方を消費電力といいます。

さて、電源にアルミホイルなどの金属線をつないで温度計の球部に巻き付けると、温度計の目盛りはどんどん上昇します。金属線に電流を流すと発熱するのです。
電流を流す時間が長いほど、またで電力の値が大きいほどこの発熱量(熱量)は大きくなります。

熱量の単位にはJ(ジュール)が使われ、次の式で求めることができます。

熱量(J)=電力(W)×時間(s)

金属に電流を流すとなぜ発熱するのでしょうか。

金属も他の物質と同様原子から成り立っています。
前述の通り電流を流す前の金属の中は、+の電気を持った原子のまわりに-の電気を持った電子が動き回っている状態です。

電圧をかけると電子が一斉に-極から+極へと流れだします。
このときその場で振動している原子に電子がぶつかって原子の振動がより激しくなります。こうして温度が上昇するのです。

磁界

電流が作る磁界

磁石は金属を引き寄せる力があります。
磁石同士でも異なる極同士では引き合い、異なる極同士では反発します。

このような力を「磁力」といい、磁力がはたらく空間を「磁界」といいます。
磁界の中に方位磁針を置くと、置いた場所によって針の向きが変わります。
この方位磁針のN極が指す向きを「磁界の向き」といいます。
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導線を何重かに巻いたコイルの中に鉄芯を入れた電磁石も磁石と同じはたらきをするため、磁石と同様に磁界や磁界の向きが存在しますが、電流の流す向きを変えると磁界の向きも変わります。

電磁石から鉄芯を抜いても、弱くはなりますがコイルの周りに磁界ができます。
導線に電流を流すと、その周りには磁界ができるのです。

1本の導線に流れる電流によってできる磁界には次のような特徴があります。

・導線を中心として同心円状にできる。
・磁界の向きは電流の流れに向かってみると時計回りになる。
・導線に近いほど磁界が強くなる。

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コイルは導線を巻いたものなので電流を流すと次のような磁界ができます。
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1本の導線に流れる電流によってできる磁界が集まることにより、コイルの磁界は強められます。

磁界から電流が受ける力

多くの家電製品にはモーターが使われています。
モーターにはコイルと磁石が使われていますがどのような仕組みで回っているのでしょうか。

これは電流と磁石それぞれにできる磁界が関係してきます。
電流による磁界の向きと磁石による磁界の向きが同じところは磁界が強くなり、逆向きのところは弱くなります。

混みあった磁力線は広がろうとする性質があるため磁界の強め合っている方から弱め合っている方に力がはたらきます。
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これを利用してモーターは回転しているのです。

電流、磁界、はたらく力の向きの間には「フレミング左手の法則」の関係があります。左手の3つの指を90°ずつに広げた時、親指が力の向き、人差し指が磁界の向き、中指が電流の向きを表すのです。

また、モーターではブラシと整流子を使うことによって電流の流れる向きを班回転ごとに変え、同じ方向に回転できるようにしています。

電磁誘導

電流を流していない状態のコイルに磁石を近づけたり遠ざけたりすると、わずかですが電流が流れます。
コイルの中の磁界が変化すると、コイルに電流が流れるのです。この現象を「電磁誘導」といい、電磁通洞によって流れた電流を「誘導電流」といいます。

コイルの巻き数が多いとき、磁石の動きが早い(磁界の変化が速い)とき、そして使用する磁石の磁力が強いとき、生じる誘導電流は大きくなります。

誘導電流はコイルの中の磁界が変化しているときにのみ流れるものなので、磁石を静止させているときは生じません。発電機はこの電磁誘導を利用して電気を作り出しているのです。

直流・交流

電流の流れ方には2種類あります。
乾電池による電流は+極から-極へ流れ、この向きは変わることはありません。このようにずっと一定の向きに流れる電流を「直流」(DC)といいます。

これに対し発電機から流れてくる電流は+極と-極が常に入れ替わり、電流の向きが変化します。
このように流れる向きが周期的に変化する電流を「交流」(AC)といいます。

乾電池を入れて使うもの(例えば懐中電灯や携帯ゲーム機など)は電池の向きを確認してセットすると思いますが、家電製品のコンセントを差す場合、どっちが+でどっちが-といったことを考えたことはないと思います。

家庭に流れてくる電流は交流のため、コンセントの向きを気にしなくていいからです。
交流電源の電圧を調べると+と-の入れ替わりが波のような形となって表れます。

1秒間あたりの波の繰り返しの数を「周波数」といい、単位には音と同じHz(ヘルツ)が使用されます。ちなみに周波数は地域によって異なり、東日本では50Hz、西日本では60Hzとなっています。

これは昔、東京が50Hzのドイツ製、大阪が60Hzのアメリカ製の発電機をそれぞれ輸入したためです。引っ越しの際には持っている家電がちゃんと使用できるかきちんと確認しておきましょう。

静電気で扱った原子については、化学で細かく取り扱います。

オームの法則や電力の計算はテストでよく出題されます。慣れてくればそこまで難しくありませんので、ぜひ解いてみましょう。またこの単元にはたくさんの単位が出てきました。特に時間の単位や電流の単位は、問題によっては単位変換が必要になります。問題文をよく読んで取り組んでください。

フレミングの法則では指を使います。どの指が何に当たるのか、しっかり押さえておきましょう。
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