運動とエネルギー

この単元では物体の運動、力の規則性、エネルギーと仕事について学習します。
身の回りには運動している物体がたくさんありますが、その運動の仕方はさまざまです。運動にはどのような法則があるのか、力が加わることによってどう変わるのか、そして物体そのものはどのようなエネルギーを持っているのかを学びます。
それではこれらについて学習していきましょう。

運動とエネルギー

物体のいろいろな運動

物体の運動とは

運動を表す要素には速さと向きがあります。この2つの要素に着目して運動を分類すると以下の4つにわけることができます。

・速さだけが変化する運動
・向きだけが変化する運動
・速さも向きも変化する運動
・速さも向きも変化しない運動

さて、一言で速さといっても場合によっては指すものが異なります。
例えば100kmの区間を車で2時間かかったとしましょう。
このとき自動車の速さは100(km)÷2(h)=50(km/h)となります。これは区間全体を一定の速さで走行したと考えたときの速さで、「平均の速さ」といいます。
しかし実際は途中で加速、減速をするはずで、一瞬ごとに速度は変化します。この一瞬一瞬の速さを「瞬間の速さ」といいます。

これから学習する運動について詳しく調べるためには瞬間の速さを求める必要があります。
つまり非常に短い時間内でどれだけ動いたかを知る必要があるのです。
それを調べるための器具が「記録タイマー」です。

記録タイマーの使い方

記録タイマーは、一定時間ごとの移動距離を連続的に記録することができる器具です。
記録テープを引っ張ると記録テープにその打点がずれていき記録されますが、東日本なら1秒間に50回、西日本なら1秒間に60回の点を打つ事ができます。
つまり

東日本:1秒間で50打点→1/50秒で1打点→0.1秒で5打点
西日本:1秒間で60打点→1/60秒で1打点→0.1秒で6打点

と言い換えられます。
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テープに記録が取れたら、まずデータとして扱うスタート地点(基準点)を決めます。
打点が重なっていてはっきりしない部分はデータとして不適切なので、除外します。

物体の運動(力がはたらかない場合)

水平な面上で力を受けずに運動する物体は、運動の速さ、向きが変化しません。
このような運動を「等速直線運動」といいます。等速直線運動をする物体のグラフは次のようになります。
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等速直線運動では、移動距離は時間に比例し、速度は時間にかかわらず一定となります。
日常生活において完全に物体が等速直線運動を続ける場面というのはほとんどありません。空気抵抗や摩擦があるからです。

これらがはたらかない宇宙空間であれば本当の等速直線運動を見ることができます。

物体の運動(力がはたらく場合)

斜面を下るなど、運動の向きに一定の力がはたらき続けるとき、物体の速さは一定の割合で増加します。加わる力が大きいほど増加する割合も大きくなります。

この運動をする物体のグラフは次のようになります。
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斜面の傾きが90°になると、物体は垂直に落下します。
このときも先程同様の運動をしますが、特に「自由落下」といいます。自由落下において、物体にはたらく力の大きさは重力の大きさに等しくなります。

一方、斜面を上るなど、運動の向きと逆向きに一定の力がはたらき続けるとき、物体の速さは一定の割合で減少していきます。

力の規則性

力のつり合い

綱引きなど、力が加わっても全体としては静止している場合があります。
静止している物体が力を受けても動き出さないのは、反対向きに同じだけの力を受けているからです。このとき「2力がつり合っている」といいます。

1つの物体にはたらく2力のつり合いの条件は以下の3つになります。

・2力の大きさが等しい
・2力が一直線上にある
・2力の向きが逆向きである

面上でただ静止している物体の場合、一見すると何も力が加わっていないように見えますが、このとき物体には重力という下向きの力が加わっています。
しかし面上にあるので物体は下向きには動きません。
これは物体にはたらく重力と同じ大きさの「垂直抗力」がはたらいてつり合っているからです。

では動いている物体の場合はどうでしょうか。
斜面を台車がずっと同じ速度で下っているとき、台車には斜面下向き(運動の向き)と逆向きに摩擦力がはたらいています。
また、面上の物体に力を加えて一定の速度で動かした場合でも、前進させる力と摩擦力がつり合っています。

このように等速直線運動をしている物体においても大きさが等しく逆向きの2力が一直線上にあるのです。

力の合成と分解

2つ以上の力を、同じはたらきをする1つの力にまとめることを「力の合成」といい、まとめた力を「合力」といいます。

合力は次のようにして求めることができます。
①2力の向きが同じで、一直線上にあるとき
合力Fは力A、力Bの和になります。
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②2力の向きが逆向きで、一直線上にあるとき
合力Fは大きい方の力(図の場合は力A)と同じ向きになります。
合力Fの大きさは力Aと力Bの差になります。2力の大きさが同じ場合は合力が0になるのでつり合います。
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③2力が一直線上にないとき
力A、力Bを2辺とする平行四辺形を書きます。できあがった対角線が合力Fです。
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合力とは逆に、1つの力を複数の力に分けることを「力の分解」といい、分けたそれぞれの力を「分力」といいます。

斜面上にある物体にはたらく力を、この分力を使って考えてみましょう。
斜面上の物体には重力と垂直抗力がはたらいています。重力を斜面下向きの力と、斜面に垂直な力に分けると以下のようになります。
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このとき、斜面に垂直な力と垂直抗力はつり合っているので運動の状態には影響を及ぼしません。
つまり斜面下向きの力だけがはたらくことになるので、物体は斜面下向きに動きます。

慣性の法則

電車に乗っているときをイメージしてください。
停止していた電車が発車すると、体が後方へと傾きます。逆に走っていた電車が停車すると、体が前方へと傾きます。
このとき電車には力がはたらいていますが、乗っている人自身には力は加わっていません。

このように物体は力がはたらかないか、力がつりあっていれば、静止している物体は静止し続け、運動している物体は等速直線運動を続けます。
これを「慣性の法則」といいます。また物体のもつこの性質を「慣性」といいます。

作用・反作用の法則

台車の上に乗った人がもう一台の台車を押すと、両方の台車がお互いに離れていきます。
1つの物体がもう1つの物体に力を加えると、必ず同時に相手の物体から、一直線上にある逆向きで同じ大きさの力を受けるのです。
これを「作用・反作用」の法則といい、自分が相手にした力を「作用」、相手が自分にした力を「反作用」といいます。

一直線上・逆向き・同じ大きさの力と聞くと、2力のつり合いと同じように思えますが、これらは全くの別物です。
2力のつり合いでは2つの力が同じ物体にはたらくのに対し、作用・反作用では各地からは別々の物体にはたらきます。
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エネルギーと仕事

物体のもつエネルギー

他の物体を動かしたり変形させたりすることができる物体は「エネルギーを持っている」といいます。

エネルギーの単位にはJ(ジュール)が使われます。
熱量の単位と同じですが、実は熱量とは「熱エネルギーの量」なので同じ単位が使われています。

運動エネルギー

運動している物体はほかの物体を動かしたり変形させたりすることができます。
このように運動している物体がもつエネルギーを「運動エネルギー」といいます。

運動エネルギーは質量に比例します。また速さの2乗に比例します。式で表すと次のようになります。

位置エネルギー(J)=1/2×質量(kg)×速さ(m/s)

つまり物体の質量が大きいほど、また物体の速さが速いほど、その物体のもつ運動エネルギーは大きくなります。

位置エネルギー

物体を高いところから落とすと、その下にある物体を動かしたり変形させたりすることができます。
このように高い位置にある物体がもつエネルギーを「位置エネルギー」といいます。
位置エネルギーは質量に比例し、高さにも比例します。

式で表すと次のようになります。

位置エネルギー(J)=質量(N)×高さ(m)

つまり物体の質量が大きいほど、また高いところにある物体ほど、その物体のもつ位置エネルギーは大きくなります。

力学的エネルギーの保存

運動エネルギーと位置エネルギーを合わせたものを「力学的エネルギー」といいます。
運動エネルギーと位置エネルギーは互いに移り変わりますが、その和は常に一定になります。
これを「力学的エネルギーの保存」といいます。

例えば振り子の運動で見てみると、球が一番高くなる地点では一瞬動きが止まります。
つまり位置エネルギーは最大になりますが運動エネルギーは0なるのです。

逆に球が一番低い位置にあるときは、速さは最も早くなります。
つまり位置エネルギーは0になりますが運動エネルギーは最大になるのです。

仕事

物体に力を加えながら、その向きに移動させたとき、力がその物体に対して「仕事をした」といいます。
仕事の単位にはJ(ジュール)が使われます。

仕事の大きさは物体に加えた力の大きさと力の向きに移動させた距離の積で表されますので、式で表すと次のようになります。

仕事(J)=物体に加えた力(N)×力の向きに移動させた距離(m)

例えば、Aさんが面上の物体を50Nの力で押したとき、押した方向に2m動いた場合、50(N)×3(m)=150(J)の仕事をAさんは物体にしたことになります。
また、Bさんが地面に置いてある物体を100Nの力で2m持ち上げた場合、100(N)×2(m)=200(J)の仕事をBさんは物体にしたことになります。

ではCさんが150Nの力で物体をその場で持ち続けた場合はどうでしょう。
この場合、Cさんは上向きに150Nの力を加えていますが、物体は上向きに移動していません。
よって仕事の大きさは0となります。

また、物体が氷の上などを滑って等速直線運動している場合、移動はしていますが力は加わっていないのでこちらも仕事の大きさは0となります。

仕事の原理

動滑車を1つ使うと、物体を引き上げる力は直接引き上げるときと比べて半分で済みます。その代わり力を加える距離は2倍になります。
また物体を持ち上げたり引き抜いたりするときに用いるてこでも同じことがいえます。

このように滑車やてこを使うと、物体にはたらく重力より小さい力で作業ができますが、力を加える距離は長くなるので、仕事の大きさは変わりません。

物体が同じ状態になるまでにする仕事の量は、どの様な方法をとっても変わらないのです。
これを「仕事の原理」といいます。

仕事率

単位時間(1秒間)あたりにする仕事を「仕事率」といいます。これは仕事の能率を比べるものです。仕事率の単位はW(ワット)が使われ、次の式で求められます。

仕事率(W)=(仕事(J))/(時間(s))

例えばAさんは10秒間で150Nの物体を2m、Bさんは15秒間で300Nの物体を2m持ち上げたとしましょう。
Aさんがした仕事は150(N)×2(m)=300J、これを10秒で割ると仕事率は30Wになります。
一方Bさんがした仕事は300(N)×2(m)=600J、これを15秒で割ると仕事率は40Wになります。

したがってBさんの方が仕事の能率が高いということになります。

エネルギーの移り変わり

わたしたちの身のまわりでは、いろいろなエネルギーが絶えず相互に移り変わっています。

例えば電源(電気エネルギー)によってモーターが回ります(運動エネルギー)。
それにより音が出たり(音エネルギー)、熱が発生したり(熱エネルギー)します。

自然界においても太陽の光(光エネルギー)によって植物が光合成(化学エネルギー)を行います。流れ星は高いところから降ってくることにより(力学的エネルギー)熱や光を発します。

エネルギーはこのように相互に変換することが可能ですが、エネルギーの種類によって変換のしやすさが異なります。

例えば電気エネルギーから熱エネルギーに変換することは比較的簡単ですが、その逆は難しくなります。

エネルギーの保存

力学的エネルギー(運動エネルギー+位置エネルギー)は、互いに移り変わり、力学的エネルギーは一定に保たれていると学習しました。
しかし現実世界では、例えばふりこの運動を見てみると、だんだんと振れ幅が小さくなり、いずれ止まってしまいます。

運動にだけ着目するととても一定に保たれているようには見えません。
これは支点部分での摩擦によりエネルギーの一部が少しずつ熱エネルギーに変換されたり、振れたときの音エネルギーに変換されたりしてしまうからです。

つまり

最初の位置エネルギー=力学的エネルギー+熱エネルギー+音エネルギー

という関係が成立し、最終的は全て熱エネルギーや音エネルギーに変換され運動が止まってしまうのです。

このようにすべての種類のエネルギーを考えると、やはりエネルギーの総和は一定に保たれます。これを「エネルギーの保存」といいます。

等速直線運動(力がはたらかない運動)と、だんだん速度が上がる運動(力がはたらく運動)についてはグラフがよく出題されます。縦軸、横軸が何を示しているのかに注意して見るようにしましょう。

力のつり合い、作用・反作用では、力が何に対してはたらいているのかがポイントになります。
仕事を考えるとき、「何が何からされた仕事なのか」「何が何にした仕事なのか」をはっきりさせることが大切です。
また、ここでは説明の簡略化のため最初からN(ニュートン)で表していましたが、一般的な問題ではkgをNに直すところから始まります。単位換算も間違えないように気を付けましょう。
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