オセアニア | 0から始める高校地理まとめ

オセアニアはオーストラリアやニュージーランド、その他多くの島国から構成される地域です。焦点を当てなければいけない国が多いように思われますが、実はそのようなことはなく、どのような地域であるのかという概要を掴むことが大切になってきます。

オセアニア_0から始める高校地理まとめ

はじめに

オセアニアはオーストラリアとニュージーランド、その他数多くの島々で構成されている地域です。本地域の地誌では、オーストラリアとニュージーランドが大半の出題となりますので、この2か国を特徴を重点的に学習していくことが求められます。

オセアニア諸国も他地域と同様に、ヨーロッパによる植民地支配を受けていた歴史を持ちますので、宗主国がどこであるか、そしてその国の影響がどのように残っているのかを理解していきましょう。

また、太平洋に浮かぶ多くの島々は地球温暖化の影響を大きく受けており、環境問題として取り上げられることが多い点、太平洋に面する国々での経済連携が取られている点なども頻出の事項ですので、それらの背景を掴むことを目標としましょう。

オセアニアの位置

オセアニア

オセアニアの国々

オーストラリア

オーストラリアはオセアニア最大の人口及び面積を誇る国で、オーストラリア大陸は六大陸の一つに数えられます。首都はキャンベラとなります。

  • 地形

オーストラリアは広大な大陸であるため、場所によってその地形を大きく様相を変えます。大陸東部には古期造山帯であるグレードディヴァイディング山脈が分布しており、その周辺では石炭が豊富に採れます。

一方で、大陸西部は安定陸塊となっているため、ほとんど平坦な地形が広がっています。安定陸塊の性質上、鉄鉱石が豊富に採れ、特に西部は一大産地となっています。

また、グレードディヴァイディング山脈以西には大鑽井盆地(だいさんせいぼんち、別名:グレートアーテジアン盆地)が広がっており、ここからは地面から地下水が噴出(自噴井)することで知られています。

  • 気候

オーストラリア北部は熱帯(A)が広がっており、年間を通して温暖な気候となっています。大陸北東部には亜熱帯気候の影響を受け、温暖な海域が形成されているため、グレートバリアリーフ(大堡礁)と呼ばれるサンゴ礁が広がっています。

シドニーやキャンベラ、ブリズベンなど大陸東部から南東部にかけた地域では温帯(C)、中でも温暖湿潤気候(Cfa)が分布しているため、東京と似た気候が広がっているイメージを持てば良いでしょう。大陸南西部のパース周辺は、同じ温帯でも地中海性気候(Cfa)が広がっている点は狙われやすいポイントになります。

大陸中央部は乾燥帯(B)が広がっており、年間を通して高温乾燥している点が特徴です。大陸の中心部に近づけば近づくほど砂漠気候(BW)となり、非常に過酷な環境になっています。そこから少し外れた地域ではステップ気候(BS)が広がっていますので、場所によっては、年間降水量が500mm前後になることもあります。

  • 農業

オーストラリアの農業分布は、その大半が沿岸部周辺で行われていると考えて良いでしょう。先述の通り、オーストラリアの沿岸部は熱帯や温帯が広がり農業に適していること、内陸部は乾燥帯が広がり農業が拡大しづらいという点が挙げられることからも、容易に想像が出来るでしょう。

特に出題されやすいのは、同国北東部に位置するケアンズ周辺で温暖な気候を活かしたサトウキビ栽培、南東部の都市近郊で行われる酪農や牧羊、パース周辺でその土地の気候を活かした地中海式農業です。牧羊では主に毛の採取を目的としたメリノ種やロムニー種、肉用にもなるコリデール種が飼育されています。

また、マレーダーリング盆地で灌漑によって栽培を拡大させてきた小麦にも注目しましょう。マレーダーリング盆地は従来、降水量が少ない地域で、農業を拡大するうえでは制約が多い場所でしたが、第二次世界大戦後に行われたスノーウィーマウンテンズ計画によって、農業生産が飛躍的に拡大した歴史があります。これは、グレートディヴァイディング山脈の南端付近に位置するスノーウィー川の上流にダムを建設、そこからオーストラリアアルプス山脈内のトンネルを通し、マレーダーリング盆地のマレー川に水を供給するという大規模なプロジェクトでした。この計画によって、マレーダーリング盆地での小麦栽培が飛躍的に拡大しましたが、土壌の塩類化が進行するなど、新たな環境問題が浮上しました。

スノーウィーマウンテンズ計画

  • 工業

オーストラリアは広大な面積を活かした農業や豊富に産出される鉱産資源に大きく依存していることから、他地域と比較すると、工業発展が遅れています。世界的に見ても、経済発展が進んでいる国ではありますが、この点が他の先進国と大きく異なるポイントであると言えます。

  • 鉱業

鉱産資源分布
オーストラリアは広大な面積を誇ることから、様々な鉱産資源が生産されており、現在でも世界各国にそれらを輸出しています。

先述の通り、グレートディヴァイディング山脈が古期造山帯であるため、その周辺では石炭が産出され、北東部のモウラ炭田、南東部のニューカッスル炭田が有名です。

大陸西部は安定陸塊が広がっているため、鉄鉱石が産出され、特に北西部のマウントホエールバック鉄山やマウントトムプライス鉄山が有名で、地表から直接渦巻くように地面を掘る「露天掘り」による生産がメインとなっています。これらの鉄山で採れた鉄鉱石は付近のダンピアやポートヘッドランドから世界各国へ輸出されていきます。北東部の鉄鉱石生産に関連する地域はピルバラ地区という名称で様々なテストに出題されますので、頭に入れておきましょう。

ケアンズなどが位置するヨーク岬半島では、熱帯が分布しているため、ラトソルの土壌から採掘されるボーキサイトが有名で、代表的な産地はウェイパです。

その他には、大陸南西部に位置するカルグーリーでは金が豊富に産出されます。カルグーリーはゴールドラッシュの最盛期には非常に賑わったため、注目をしておきたいところです。

  • 人種・民族

オーストラリアはイギリスの植民地であったため、白色人種が多い点が特徴です。そのため、1901年にイギリスから独立してからは白豪主義が実施され、1973年にそれが廃止されるまでは、白人が優遇されていました。この白豪主義は、1851年にゴールドラッシュが始まってから、中国系の移民が急激に増加したことや、1901年の移民法制定などがきっかけで成立しました。

そもそもオーストラリアにはアボリジニと呼ばれる先住民が暮らしていましたが、イギリスに植民地支配をされて以来、彼らも差別や迫害を受けました。しかし、白豪主義の撤廃以降、アボリジニの伝統や文化を守っていこうとする動きが見られるようになりました。

また、白豪主義の撤廃は、オーストラリアから距離の近いアジア各国からの移民増加にも貢献しました。その結果、現在では英語以外の言語を普及させる活動や、異文化交流を設けるなど、様々な人種の伝統や文化を尊重する多文化主義政策が取られるようになりました。オーストラリアは多文化主義を掲げる国として、アメリカやカナダなどと一緒に取り上げられることが多くなっています。

  • 人口分布

オーストラリアの人口は2000万人ほどでその9割を超える人々は沿岸の都市部で暮らしています。これは大陸中央部の気候が非常に厳しく、農業を拡大出来ないことが理由に挙げられます。ですので、人口分布のイメージは、大陸の沿岸部に近づけば近づくほど増えていく形になります。

  • 貿易

オーストラリアの貿易相手国は時代によって大きく変わります。イギリスから独立してからは、イギリスとの貿易が中心でした。しかし、1960年代に入り、イギリスがEC(ヨーロッパ共同体)に加盟してからは、日本やアメリカ、近年では中国や韓国、シンガポールなど、経済発展が著しいアジア諸国との結びつきが強くなってきています。

ニュージーランド

オーストラリアの南東に位置しており、北および南島の二島から形成される島国です。首都はウェリントンとなります。

環太平洋造山帯に属するため、地震や火山活動が活発に起こっています。その影響から、国土面積が小さいにも関わらず南島のサザンアルプス山脈は、3000m以上の急峻な地形となっています。火山の恩恵を受けた地熱発電が盛んで、ワイラケイ地熱発電所は特に有名です。

なお、ニュージーランドは地熱発電が盛んですが、それは火山が多く集中する北島のことで、豊富な水資源が多い南島は水力発電が盛んである点も押さえておきましょう。

ニュージーランド南端部付近は氷河の到達域であったため、フィヨルドが見られます。これは、氷河が削って形成されたU字谷に海水が浸入して形成されたもので、ニュージーランドが以前に氷河による浸食を受けていたことが読み取れます。

ニュージーランドは農業が盛んな国で、酪農や牛・羊の放牧が盛んに行われています。特に、牧羊については、ニュージーランドの総人口(約450万人)よりも多い数の羊が飼育されていると言われています。

ニュージーランドにはマオリと呼ばれる先住民が暮らしています。オーストラリアと同様に彼らの伝統や文化は尊重されていますが、ニュージーランドではマオリ語が公用語にまで設定されている点がオーストラリアと大きく異なる点です。
ラグビーで同国代表が見せる「ハカ」は、マオリの伝統的な踊りです。

その他諸国

オーストラリアとニュージーランド以外で焦点を当てられる国はあまりありませんが、環境問題を取り上げた際に、オセアニア諸国が取り扱われることがあります。

それは、地球温暖化による海面上昇が原因で、オセアニアの島国が海水に沈んでしまうのではないかと言われている点です。特に海抜の低いツバルは、この問題が取り扱われる際に頻繁に登場する国です。

オセアニア諸地域の呼称

オセアニア諸地域
オセアニアには多くの島々があることは先述の通りですが、その島々の位置する場所にはそれぞれの呼称が存在します。
赤道の北側に位置する地域はミクロネシアと呼ばれ、これは小さな島々という意味があります。
オーストラリアの北部、ニューギニア島付近の地域はメラネシアと呼ばれ、これは黒人の島々という意味があります。
ニュージーランドを含む東側に位置する地域はポリネシアと呼ばれ、これは多くの島々という意味があります。
なお、オーストラリアはオーストラレーシアと呼ばれますが、ほとんど出題されません。

APEC

1989年に、当時のオーストラリア首相によって提唱されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)が始まりました。これは、アジア太平洋地域に該当する21の国と地域が集まり、地域の持続的な発展を目的に経済協力を行っていこうとするもので、毎年秋に首脳会議が開かれています。

TPP

2018年に、環太平洋地域のより強固な経済連携を実現するために、オーストラリアやニュージーランド、日本、シンガポールなどをはじめとした11か国で環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が発効しました。
元々はAPECに加盟していたシンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの4か国が交渉していましたが、規模が拡大して発効に至りました。
当初はアメリカも参加予定でしたが、2017年に離脱を表明して話題となりました。なお、APECとTPPは内容が混同しやすいため、下記地図を参考にしながら、理解を深めていきましょう。

APEC及びTPP

さいごに

まとめ
以上でオセアニアの単元は終了となりますが、本単元で一番重要なことはオーストラリアとなります。オセアニアを取り扱う問題でオーストラリアが出題されないことはほとんどありませんし、言い換えれば、オセアニアの問題はほとんどすべてがオーストラリアで構成されていると言っても過言ではありません。

しかし、その他オセアニア諸国を蔑ろにして良いかというとそういうわけではありません。ただし、それぞれの国を細かく覚えていくというよりかは、オセアニア諸国がどういった特徴を持っているのか、どういった課題を抱えているのかに焦点を当てることが重要です。

また、オーストラリアとニュージーランドを中心にAEPCやTPPなど、環太平洋地域の国々と経済連携を進めていく動きが見られます。これらは様々な面で話題に上がることが多いことから、時事問題の枠でもテストや大学受験では出題されやすい傾向にあります。同様に、地球温暖化という環境問題ではオセアニアの島国が出題されやすいことも理解しておきましょう。

オセアニアの単元は、オーストラリアとニュージーランドを詳細に、それらは大枠を掴むというスタンスで学習すると、効率よく点数を取っていくことが出来ます。

オセアニアは何と言ってもオーストラリアですので、地形や気候など様々な面まで細かく学習しましょう。ただし、細かい数値を暗記するというよりかは、内容確認し、その背景までを押さえていくことに重点を置きましょう。それ以外の国は「地域」として、どのような特徴を持っているのか・背景を抱えているのかという概要を掴みましょう。オセアニアは小国が多いため、経済連携の動きが見られます。その代表例がAPECやTPPとなりますので、これらが話題になっているときは、時事問題として取り扱われることが多い点にも留意しましょう。
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