南アメリカ | 0から始める高校地理まとめ

南アメリカは、徐々に経済発展が進んできた国々が多く集まっていることから、取り上げられやすい地域です。しかし、発展した国とそうでない国に二極化しており、様々な課題が残っていますので、それらに焦点を当てていきながら、地域の実態を掴んでいきます。

南アメリカ_0から始める高校地理まとめ

はじめに

南アメリカは、赤道にまたがっており、赤道付近とそれ以外の地域では、地形や自然、生活などが大きく変わってきます。
北アメリカやアフリカ、東南アジアと同様に、大航海時代以降、ヨーロッパの植民地支配を受けていたことから、現在でもヨーロッパの文化や伝統などが見受けられます。特に、南アフリカ諸国の大半はスペイン、ブラジルはポルトガルに支配されていたため、ラテン系の文化が色濃く残っています。
そのため、ヨーロッパのどの国に支配されていて、その結果、このような文化が残っているという捉え方をしていくことで、学習の効率が上がります。
また、北アメリカの国々と比較すると、経済発展が遅れています。経済発展が進まない理由や、どの産業が発達しているのか、また、そこから抜け出せない理由は何であるかを意識して学習していく必要があります。
なお、メキシコや中央アメリカ諸国も含めたラテン系の文化が広がる地域をラテンアメリカと呼びます。これは、地理的な観点よりかは、人種や文化的な観点から分類されたものになります。

南アメリカの位置

南アメリカ

南アメリカの国々

ブラジル

ブラジルは、南アメリカ大陸東部を占めている国で、南アメリカ諸国を牽引する大国です。首都はブラジリアで、近代的な情緒を思わせる飛行機型の都市設計から、1987年には世界遺産に登録されました。
赤道付近にはセルバと呼ばれる熱帯雨林が広がっており、広大なアマゾンを形成しています。
大西洋に注ぐアマゾン川は、世界一の流域面積を誇る大河川となっており、アマゾン川の沿岸に住む人たちにとって、生活には欠かせないものとなっています。
ブラジルは、世界有数の農業大国ですので、農業の特徴や生産が盛んな農産物について問われることが多いと言えます。アマゾン川流域は、熱帯雨林気候(Af)となっており、年間を通して高温多湿の地域ですので、ラトソルと呼ばれる赤く痩せた土壌が広がっています。そこは、農業を行いづらいという特質がありますが、森林を焼いて出た灰を肥料にする焼畑農業が展開されており、地力が落ちたあとは、別の場所へ移動するという形が取られています。

アマゾンを含め、ブラジル全体は、ファゼンダと呼ばれる大農園で、プランテーション農業が行われています。ブラジルはポルトガルの植民地であった影響を受け、ポルトガル主導で農業が展開されてきましたが、現在になっても、その影響を色濃く残っています。
例えば、サトウキビやコーヒー、天然ゴムは世界有数の一大生産国と言えるでしょう。
コーヒーの生産が盛んである理由は、テラローシャと呼ばれる肥沃な土壌が広がっているためです。
近年は、サトウキビやトウモロコシを原料としたバイオエタノールや、遺伝子組み換え作物の栽培が盛んとなっています。

現在のブラジルは経済発展が著しいため、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)の一国に数えられます。中でも、自動車やその他機械類の生産においては、南アメリカで一番となっています。
また、ブラジル高原を中心に、国土の大半は安定陸塊に該当するため、鉄鉱石が豊富に産出され、中でもイタビラ鉄山カラジャス鉄山は同国を代表する鉱山です。
鉄鉱石以外には、ボーキサイトの生産が盛んです。これは、ボーキサイトはラトソルから豊富に採れるためです。

ブラジルは豊富な水資源を抱えているため、水力発電の割合が最も大きくなっています。特に、パラグアイとの国境に流れるパラナ川に建設されたイタイプダムは、世界で最も発電量の多いダム(発電容量では中国の三峡ダムが一位となる場合もあり)として知られています。

アルゼンチン

アルゼンチンは、南アメリカ大陸南東部に位置する国で、隣国のチリと同様に、南北にわたる広大な国土が特徴的です。首都はブエノスアイレスとなります。

広大な国土を活かし、農業が盛んな国として知られています。特に、パンパと呼ばれる草原地帯での農業が盛んに行われており、大西洋に面する地域を湿潤パンパ、中央部からロッキー山脈に至る内陸地域を乾燥パンパと呼ばれています。
2つのパンパは年間降水量が550㎜以上か未満かで区別をし、550㎜以上は湿潤パンパ、550㎜未満を乾燥パンパとなり、前者では小麦や大豆、アルファルファと呼ばれる牧草の栽培、後者では羊や牛の放牧が行われています。
また、同国以外にブラジルやパラグアイなどにまたがって分布するグランチャコと呼ばれる草原が広がっており、そこでは綿花や牛の放牧が行われています。

偏西風

同国南部のパタゴニアは、アンデス山脈の東側に位置しており、太平洋から吹く偏西風の風下となるため、乾燥した風が吹きつけます。その結果、年間を通して、降水量が少ない乾燥地帯となっています。ここでは、羊の放牧が盛んに行われています。

また、南アメリカ諸国の中では、工業が発展している部類に入り、輸出品目には農産物の他に、工業製品が多く含まれています。

ウルグアイ

ウルグアイは、南アメリカ大陸東部に位置する国で、産業主体が農業となっています。首都はモンテビデオとなります。

隣国の大国であるブラジルやアルゼンチンとの外交関係を重視しているため、輸出・輸入ともに両国が多くなっています。
(ただし、中国との貿易額も非常に大きい点に注意しましょう)

ベネズエラ

ベネズエラは、南アメリカ大陸北部に位置している国で、スペインの植民地支配を受けていた影響から、公用語にはスペイン語、信仰宗教はキリスト教カトリックとなっています。首都はカラカスとなります。

気候はサバナ気候(Aw)が分布しており、オリノコ川流域のサバナ草原はリャノと呼ばれます。

ベネズエラは、世界有数の石油産出国として知られ、同国北西部のマラカイボ湖付近で石油が豊富に産出されます。このことから、南米ではエクアドルとともに、石油輸出国機構OPEC)に加盟しています。

現在、ベネズエラでは深刻な経済危機が発生しています。これは、石油に依存したモノカルチャー経済になっていた点と、政権の政策が軌道に乗らなかったことが原因となっています。その結果、ベネズエラ国内では、貧富の格差が大きく広がっています。

エクアドル

エクアドルは、南アメリカ大陸北西部に位置している国で、国名はスペイン語で「赤道」し、文字通り赤道直下にまたがる国です。首都はキトとなります。

農業では、バナナの栽培が非常に盛んで、世界一の輸出国となっています。ただし、日本におけるバナナの輸入先で最も多いのはフィリピンとなっている点には注意しましょう。

また、ベネズエラと同様に、石油の輸出国であり、石油輸出国機構(OPEC)に加盟しています。

太平洋沖には、ガラパゴス諸島がある点も押さえておきましょう。

ペルー

ペルーは、太平洋に面する国で、かつてインカ帝国が存在していたことで知られる国です。首都はリマとなります。

ペルーは、沿岸に流れるペルー海流フンボルト海流)の影響を受け、漁業が盛んです。その中でも、アンチョビー(カタクチイワシ)を魚粉(フィッシュミール)に加工してから世界各国に輸出されていきます。

1990年には、日系人であるアルベルト・フジモリ氏が大統領に当選、10年間の任期を務めました。

ボリビア

ボリビアは、南アメリカ大陸中央部に位置する国で、国土のほとんどはロッキー山脈にまたがっているため、標高が高い地域ということで知られています。首都のラパスは、標高4,000mを超える高山都市となっています。

標高が高く、空気がきれいなため、ウユニ塩湖は絶景が見られ、同国最大の観光スポットになっています。

チリ

チリは、南アメリカ大陸南西部に位置し、南北に細長く伸びている国土が特徴的な国です。首都はサンティアゴとなります。

チリの経済を担っているのは鉱業で、中でも銅は世界シェアの3分の1を占める主要品目となっています。代表的な鉱山にはチュキカマタ銅山が挙げられます。
しかし、鉱業に大きく依存したモノカルチャー経済となっているため、そこから脱却を図るべく、機械の生産などに力を入れています。

しかし、地中海性気候(Cs)が広がる南部では、ブドウやオレンジが栽培されているため、農業面においてはこの点を頭に入れておきましょう。

チリの沖合に流れているペルー海流(フンボルト海流)の影響で、特に北部は乾燥した気候が広がっています。これは、海流が寒流であるため、上昇気流が年間を通して発生しにくいことから、雨が降りづらい気候となっています。アタカマ砂漠は、寒流が原因によって形成された海岸砂漠です。

2010年には鉱山の落盤事故が発生し、33名が2カ月以上にわたって、坑道に閉じ込められ、その後救出されたニュースが話題となりました。

人種・民族

北アメリカと同様に、南アメリカでも先住民とその他の人種による混血が多くなっています。そのため、どういった人種がどの国に多いのかや、それぞれ人種の名称はその違いを区別出来るようにしましょう。

人種

  • メスチソ

ヨーロッパ系の白人と先住民のインディオによる混血人種を指し、主にパラグアイやコロンビア、メキシコで多く見られます。

  • ムラート

アフリカ系の黒人とヨーロッパ系の白人による混血人種を指し、主にベネズエラやエクアドルなど、南アメリカの中でも北部に集中しています。

  • サンボ

アフリカ系の黒人と先住民のインディオによる混血人種を指し、主にハイチやジャマイカなど、中央アメリカ(西インド諸島)に集中しています。

  • インディオ

南アメリカに元々先住していた民族を指し、主にボリビアやペルーなどで見られます。なお、インディオはスペイン語で、ラテンアメリカではラテン系の文化を強く受けたことから、そのように呼ばれています。なお、北アメリカで扱ったインディアンは英語となっています。

MERCOSUR

南アメリカでは、域内の関税撤廃や人・サービスなどの自由な流通の実現、国際協力などを目的として、1995年に南米南部共同市場MERCOSUR/メルコスール)が設立されました。
自動車やその部品、砂糖を除き、域内での貿易にかかる関税はゼロとなっていますが、例外に認められた品目もあります。
加盟国には、ブラジルやアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ベネズエラ、ボリビアの計6か国、準加盟国には、コロンビアやチリ、エクアドル、ペルー、ガイアナ、スリナムの計6か国が挙げられます。

文化

南アメリカ諸国の大半はスペイン、ブラジルはポルトガルによる植民地支配を受けていたため、今日においても文化面でその名残を感じることが出来ます。

例えば、言語であれば、スペイン語やポルトガル語が見られる点、宗教においては、キリスト教カトリックが広く信仰されている点が挙げられます。

また、先述の通り、ヨーロッパ系の白人が多くいる点やメスチソなど、人種においてまで、その影響は色濃く残っていることが分かります。

さいごに

まとめ
以上で、南アメリカの単元は終了となります。ヨーロッパの植民地支配を受けていた歴史から、様々な点でヨーロッパから受けた影響を垣間見ることが出来ます。つまり、東南アジアやアフリカ、北アメリカと同様に、宗主国がどこで、どのような影響が残っているのかを意識しながら学習を進めていくことが大切になります。

また、南アメリカ諸国は、2000年代に入ってから、大きく経済成長を遂げている国が多いのですので、ブラジルやアルゼンチンのように、南アメリカの中でも特に発展している国には、輸出品目や輸出先に焦点を当てていきたいところです。一方で、モノカルチャー経済から脱却出来ずに経済発展が遅れているベネズエラやエクアドルなどは、どういった産業に依存してしまっているかを確認しておく必要があり、それらの国々は石油や銅といった、鉱産資源に大きく頼る形となっています。
それと同時に、広大な農地を活かして、企業的農業が大規模に展開されていますので、どういった農産物が生産されているかを細かく学習していきましょう。

ここまでは、他地域と同じような形で学習を進めていくと良いですが、南アメリカで出題されやすく、その他地域ではあまり出題されないテーマが「人種」となります。人種については、その種類と何の混血なのか、どの国に多く分布しているのかを細かく理解しておくことで、しっかりとした対策になるでしょう。

南アメリカは、広大な大地に多くの国々が集積しているため、一見覚えなければいけない内容が多いように見えますが、スペインやポルトガルの植民地となっていた国々が大半のため、似たような文化や歴史が見られる点を理解しておくことで、効率的に学習が進められます。 産業面においては、農業や鉱業といった第一次産業に依存する国、第一次産業と第三次産業をバランスよく展開する国の二つに分かれますので、それぞれの国がどちらに該当するかを確認しましょう。 細かい人種の違いについても、確認を忘れないことが大切です。
 おすすめの勉強アプリはコチラ