動物の生活と生物の進化
生物は動物と植物に大きく分けられます。この単元では動物について学習します。
ヒトのからだのつくりや各臓器のはたらきの他に、さまざまな動物に共通する点や、植物と動物の相違点についても学びます。生物間での比較から、生物の変遷について推測できることも見ていきます。
それではこれらについて学習していきましょう。
生物と細胞
細胞のつくり
生物のからだを作っている最小単位は「細胞」です。
植物細胞、動物細胞に共通する器官は「核」、「細胞膜」、「細胞質」です。
- 核…細胞に必ず1つずつあります。なかには遺伝子(DNA)が入っています。
- 細胞膜…細胞を包むうすい膜です。細胞に必要なものは取り込み、不要なものを排出するはたらきがあります。
- 細胞質…細胞膜の内側で核以外の部分です。
植物細胞にのみ存在する器官は「葉緑体」、「細胞壁」、「液胞」です。 - 葉緑体…光合成を行う緑色の粒です。
- 細胞壁…植物細胞の一番外側を覆う壁です。丈夫なつくりをしており、骨格を持たない植物の体を支えるはたらきをしています。ちなみに野菜を切った時や食べた時にシャキシャキする音は細胞壁が壊れている音です。
- 液胞…植物が成長する過程で排出された老廃物を貯蔵しておく部分です。
単細胞生物・多細胞生物
ゾウリムシやミドリムシ、アメーバのように、1つの細胞で生命活動を行っている生物を「単細胞生物」といいます。それに対して多くの細胞からなる生物を「多細胞生物」といいます。ほとんどの生物は多細胞生物です。
多細胞生物の細胞は、同じ形やはたらきをもつ細胞がいくつか集まり「組織」をつくります。さらに組織同士が集まって「器官」をつくります。
植物で言うと茎や葉、ヒトで言うと胃や肺などがそれにあたります。そして器官が集まって「個体」がつくられます。
動物のからだのつくりとはたらき
消化
体内に取り入れた養分を吸収されやすい形に変化させる過程を「消化」といいます。
また消化をするはたらきを持つ液を「消化液」、消化液に含まれる養分を分解する物質を「消化酵素」といいます。
私たちは食べ物を口から取り込み、食道、胃、小腸、大腸を経て肛門から排出します。この口から肛門までの1本の管を「消化管」といいます。
ここではヒトが摂取する3大栄養素「炭水化物」「タンパク質」「脂肪」がどこでどのように消化されていくのか学習します。
米やうどん、イモなどの炭水化物は、まずだ液腺から分泌されるだ液(消化酵素はアミラーゼ)によって麦芽糖などの糖に分解されます。
その後すい臓から分泌されるすい液中の消化酵素、小腸の壁の消化酵素によって最終的に「ブドウ糖」に分解されます。
肉や魚、卵などのタンパク質は胃から分泌される胃液(消化酵素はペプシン)によって分解されます。
その後炭水化物と同様にすい液中の消化酵素、小腸の壁の消化酵素によって最終的に「アミノ酸」に分解されます。
油やバターなどの脂肪はすい臓から分泌されるすい液中(消化酵素はリパーゼ)によって「脂肪酸」と「モノグリセリド」という物質に分解されます。
胆のうから分泌される胆汁も脂肪の分解に役立っています。
吸収
消化によって炭水化物はブドウ糖、タンパク質はアミノ酸、脂肪は脂肪酸とモノグリセリドに分解されました。これらの物質は小腸の壁から体内へと吸収されます。
小腸の壁にはひだがあり、そのひだにはたくさんの細い毛のようなものが見られます。これは「柔毛」と呼ばれ、小腸の表面積を大きくし、より効率的に養分を吸収するはたらきがあります。
ブドウ糖とアミノ酸は吸収された後毛細血管を通って肝臓へ、その後全身の細胞へと運ばれます。一方脂肪酸とモノグリセリドは吸収された後再び脂肪に戻ってリンパ管を通ります。
リンパ管は心臓の近くにある太い血管と合流し、ここで血液中に脂肪が入り全身へと運ばれていくのです。
呼吸
呼吸には2種類あります。「肺呼吸」と「細胞の呼吸」です。
取り込まれた空気は気管を通って肺に入ります。気管は細かく枝分かれして気管支となり、その先には解放と呼ばれる小さな袋上のものがたくさんあります。
この肺胞は吸収のところで学習した柔毛と同じ理由で存在します。
肺胞まで来た酸素の一部は肺胞の表面に張り巡らされた毛細血管の中の血液に取り込まれ全身へと運ばれていきます。この酸素を多く含む血液を「動脈血」といいます。
一方二酸化炭素は血液中を通って毛細血管から肺胞へと受け渡され、気管を通って鼻や口から排出されます。二酸化炭素を多く含む血液を「静脈血」といいます。
ちなみに息を吸ったり吐いたりすると、胸が膨らんだり戻ったりをすると思います。これは肺が動いているからですが、肺そのものは運動することができません。肺には筋肉が無いからです。
周りにある肋間筋(肋骨のまわりの筋肉)や肺の下にある横隔膜が運動することによって肺は膨らんだり縮んだりすることができるのです。
細胞ひとつひとつが吸って吐いてをしているわけではありません。
動脈血が運んできた酸素を細胞が受け取り、養分からエネルギーを取り出します。このとき二酸化炭素と水を排出し、排出された二酸化炭素はまた血液へと戻され静脈血となり肺へと送られます。
細胞のこの活動を「細胞の呼吸」といいます。
血液
血液は全身に張り巡らされた血管を通り、心臓のはたらきによって循環しています。
ヒトの心臓は胸のほぼ中央にあります。筋肉でできていて、ほぼ規則的に収縮することで全身に血液を送り出します。
右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれています。左側の部屋の壁は全身に血液を送り出すはたらきをしているので、右側の部屋の壁よりも厚くなっています。
血液中には主に4つの成分があります。
赤血球…中央がくぼんだ円盤型をしたもの。ヘモグロビンというタンパク質を含み、酸素を運ぶ働きをしている。
白血球…球状のものが多い。貪食作用により細菌などの異物を分解する。
血小板…不規則な形をしており赤血球、白血球よりもかなり小さい。出血の際、血液を固めるはたらきをもつ。
血しょう…血液の液体部分。養分や不要な物質を運ぶ。
心臓から送り出される血液が流れる血管を「動脈」、全身から心臓に戻ってくる蹴る液が流れる血管を「静脈」といいます。(先ほど出てきた動脈血、静脈血と混同しないよう気を付けましょう。動脈、静脈は血管の名前、動脈血、静脈血は血液の名前です。)
静脈には逆流を防ぐための弁が付いています。
心臓から肺以外の全身を通り、細胞に酸素を届け、二酸化炭素を回収し、また心臓に戻ってくる血液の流れを「体循環」といいます。
それに対して心臓から肺を通り、二酸化炭素を渡して酸素を受け取り、また心臓に戻ってくる血液の流れを「肺循環」といいます。
排出
消化できなかったものは腸内細菌や古くなり剥がれ落ちた腸の壁などとともに大腸へ送られ、便として肛門から排出されます。
また呼吸による二酸化炭素は肺から排出されます。
このほかに排出されるものとして尿があります。ここでは尿の排出のしくみについて詳しく見ていきましょう。
細胞が活動すると、二酸化炭素やアンモニアなどができます。人体にとって有毒であるアンモニアは、細胞から組織液(細胞間を埋めている液)に出された後、血液に取り込まれて肝臓へ運ばれます。
肝臓では有毒なアンモニアは無毒な「尿素」という物質に変えられます。
その後尿素を含んだ血液は腎臓へと流れていき、そこで尿素など人体にとって不要な物質は取り除かれて行きます。取り除かれた尿素は、輸尿管を通ってぼうこうに溜められ、ある程度の量になると尿として排出されます。
刺激と反応
外界から刺激を受け取る器官を「感覚器官」といいます。
感覚器官には刺激を受け取る特定の細胞があり、刺激を感知すると「感覚神経」に伝えます。感覚神経は脳やせきずいに繋がっていて、刺激が電気信号として脳に伝えられるのです。
神経
感覚器官で受け取った刺激は、電気信号として感覚神経を通りせきずいや脳に伝えられます。このせきずいや脳にはたくさんの神経が集まっています。
刺激に応じてその後の行動の判断や筋肉への命令などを行う重要な役割を持っていることから「中枢神経」と呼ばれています。
また中枢神経から枝分かれして全身に張り巡らされている神経を「末梢神経」といいます。
末梢神経は感覚器官から中枢神経へ信号を伝える「感覚神経」と中枢神経から筋肉などの運動器官へ信号を伝える「運動神経」に分けられます。
中枢神経と末梢神経をまとめて「神経系」といいます。
普通、外界からの刺激を感じ、それに応じた反応をするとき(例えば名前を呼ばれて振り返るなど)は、以下のような経路になります。
刺激に対して無意識に反応してしまう場合(熱いものを触って手を引っ込める、物が飛んで来たら目をつむるなど)もあります。これを「反射」といい、以下のような経路になります。
反射では、脳に伝えるよりも先にせきずいから運動神経を通って運動器官に信号を伝えるため、普通の反応よりも早く動くことができます。
骨・筋肉
多くの動物は骨と筋肉のはたらきによって運動をします。
骨はからだ全体を支えると共に、軟らかい内臓や脳を守るはたらきもしています。さわると硬くて丈夫なつくりであることがわかるでしょう。一方筋肉は縮んだり緩んだりすることで、さまざまな体の部分の運動にかかわっています。
うでやあしの筋肉は、関節をはさんで複数の骨につき、互いに向き合うようにしてついた筋肉が交互にはたらくことで動かすことができます。
筋肉と骨をつないでいる部分は「けん」と呼ばれる強いつくりになっています。
動物の分類
セキツイ動物
動物には背骨をもつものともたないものがいます。背骨をもつ動物を「セキツイ動物」といい、セキツイ動物は以下の5つのグループに分類することができます。
- 魚類
- 両生類
- ハチュウ類
- 鳥類
- ホニュウ類
各グループの特徴をまとめると次のようになります。
親が卵をうみ、卵から子がかえる方法を「卵生」、母親の体内である程度育ってからうまれる方法を「胎生」といいます。
ホニュウ類と鳥類は、環境の温度が変化しても体温を一定に保つことができます。
このように体温をほぼ一定に保つことができる動物を「恒温動物」といいます。
魚類、両生類、ハチュウ類は環境の温度変化に応じて体温も変化するので「変温動物」といいます。
無脊椎動物
背骨をもたない動物を「無セキツイ動物」といいます。無セキツイ動物には多くの種類がありますが、大きく分類すると以下のグループに分けられます。
- 節足動物
- 軟体動物
- その他
外骨格と呼ばれるかたい殻に覆われており、からだやあしに節がある動物です。
セキツイ動物のように骨(内骨格)がない代わりに、外骨格によって体を支えたり内部を保護したりしています。
昆虫類や甲殻類、クモ類などがこれにあたります。
内臓が外とう膜と呼ばれる筋肉でできた膜で覆われており、からだやあしに節はありません。
内骨格も外骨格も持たない動物です。イカ、タコだけでなく貝類も分類されます。
非常に幅広く存在するので、ここでは一部だけ紹介します。
- 棘皮動物(ウニ、ヒトデなど)
- 環形動物(ミミズ、ヒルなど)
- 刺胞動物(クラゲ、イソギンチャクなど)
- 海綿動物(カイメンなど)
生物の変遷と進化
セキツイ動物の進化
生物の体の特徴が非常に長い年月をかけて、代を重ねるごとに変化していくことを「進化」といいます。
各セキツイ動物の化石が発見された地質年代を調べると魚類の化石が最も古いです。このことから地球上に最初に現れたセキツイ動物は魚類であり、その後他のグループが現れたと考えられます。
魚類からどのような変遷をたどってセキツイ動物が進化してきたのか見ていきましょう。
約4億年前、水中で生活していた魚類の中から、ハイギョなど肺を持つものが現れました。またイクチオステガ(原始的な両生類の特徴を持った動物)も生息していたことから、魚類から両生類へと進化してきたと考えられます。
乾燥に弱い両生類は水辺を離れて生活することができませんでしたが、両生類のあとに出現したハチュウ類はからだも卵も乾燥に強く、より陸上生活に適した進化を遂げました。
またホニュウ類もハチュウ類同様、一生を陸上で生活できるからだのつくりをしています。
鳥類はどうでしょうか。始祖鳥という生物を見てみると前あしが翼になっており、体が羽毛に覆われている一見すると鳥類のような見た目です。
しかし翼の先には爪がありくちばしにも歯があります。骨のある長い尾もあります。これらはハチュウ類の特徴です。
以上のことから鳥類はハチュウ類から進化したと考えられています。
進化の証拠
動物の進化の証拠は化石以外にもあります。
例えばコウモリの前あし、クジラの胸びれ、ヒトの腕の呼格を比べると、形や大きさ、それぞれのはたらきは異なりますが、基本的なつくりは似ています。
このように現在の形やはたらきは異なっていても、もとは同じ器官であったと考えられるもの「相同器官」といいます。
また、かつては機能を持っていたものが長い年月の間に使われなくなり退化した跡もあります。
例えばクジラには後ろあしはありませんが、その部分には小さく骨があります。ヒトも尾はありませんが尾てい骨があります。
このようにはたらきを失って痕跡のみとなった部分を「痕跡器官」といいます。
人体は覚えることがたくさんあります。特に血液の循環や心臓の各部屋の名称、動脈、動脈血、静脈、静脈血はこの分野で最も混同しやすい部分だと思います。ひとつひとつ丁寧に学習しましょう。
動物の分類に関しては、日常生活でよく耳にする単語が多かったと思います。無セキツイ動物の特徴と始祖鳥の特徴がよく問われやすいので、ポイントを絞って効率よく進めてください。