物質のすがた
この単元では、さまざまな物質の性質及び分類の仕方について学習します。
物質と一言に行っても金属やガラス、プラスチックと、目に見えるものでもたくさんありますが、気体など目に見えない物質も含めるとかなり幅広いです。また、普段目にしている物質も、条件を変えることによって別の形になることもあります。
それではこれらについて学習していきましょう。
身のまわりの物質とその性質
物の調べ方
私たちの身のまわりにはたくさんの物があります。コップ、机、本など、その物の外観に注目したときには「物体」と呼び、物を形作っている材料(ガラス、プラスチックなど)に着目したときには「物質」と呼びます。
物体は見た目でどんなものか判断ができますが、物質となると見ただけではわからない場合があります。物質を見分けるためには、それぞれの物質の性質の違いから判別する必要があります。物質を見分ける方法としては以下のような方法が挙げられます。
- 手触り、におい、色の違いを調べる。
- 電気が通るか、磁石につくかを調べる。
- 質量、堆積をはかる。
- 水への溶けやすさ、水に入れたときの反応を調べる。
- 熱したときのようすを調べる。
- 薬品を使って調べる。
物質の中には危険なものもありますので、むやみに触ったり口に入れたりしてはいけません。
金属・非金属
物質は「金属」と「非金属」に分けることができます。金属の特徴は次の5つです。
- 金属光沢がある。
- 電気をよく通す。
- 熱をよく伝える。
- たたくと広がる(展性)。
- 引っ張るとのびる(延性)。
上記の特徴を持たない物質を非金属といいます。「磁石にくっつく」は金属の特徴として勘違いされがちですが違いますので注意しましょう。
質量・体積・密度
はかりや天秤を使ってはかることができる物質そのものの量のことを「質量」、その物質がしめている空間を「体積」といいます。物質はどんなに小さくても、質量と体積を必ず持ちます。
同じ体積の物質を比べたとき、物質によって質量が異なります。
例えば同じ体積の鉄とアルミニウムがあった場合、鉄の方が質量が大きくなります。これは物質によって単位体積あたりの質量である「密度」が異なるからです。
密度は以下の式で求められます。
鉄なら7.87cm3、アルミニウムなら2.7cm3と、密度は物質によって決まっています。
有機物・無機物
物質は「有機物」と「無機物」に分けることもできます。
これは「その物質に炭素が含まれているかどうか」で分けており、加熱をすることによって見分けることが可能です。
砂糖、紙、プラスチック、ロウ、エタノールなど、加熱したときに二酸化炭素と水が発生する(炭素が含まれている)物質を有機物、食塩や金属類など、有機物以外の物質を無機物といいます。
ちなみに有機物は炭素を含む物質と書きましたが、二酸化炭素や一酸化炭素などは例外として無機物に分類されています。
プラスチック
ほとんどのプラスチックはナフサ(石油を精製して作られる物質)を原材料として作られた有機物です。
プラスチックには次のような性質があります。
- 軽い。
- 電気を通しにくい。
- 成形・加工が容易である。
- 腐食しにくい。
- 衝撃に強い。
- 酸性・アルカリ性の水溶液や薬品による変化が少ない。
余談ですが、多くの学校で授業に使用するために薄めた薬品類はペットボトルに保管しています。
プラスチックは熱を加えたときの性質によって2種類に分けられます。
熱を加えると軟らかくなり、冷えると再び固まるものを「熱可塑性(ねつかそせい)プラスチック」、固まった後に熱を加えても軟らかくならないものを「熱硬化性プラスチック」といいます。
身のまわりで多く使用されている便利なプラスチックですが、前述したようにプラスチックには「腐食しにくい」という性質があるため自然界では分解が進みにくいです。
またプラスチックを加熱すると二酸化炭素、水のほかに有害な気体が発生することもあります。焼却処分も難しいことから、現在、生分解性プラスチックなどの新しい素材の開発が進められています。
気体の性質
身のまわりの気体の性質
中学化学で扱う代表的な気体は酸素、二酸化炭素、水素、アンモニアの4種類です。以下にそれぞれの特徴と発生方法をまとめます。
気体の集め方
上にまとめたように、気体によって水への溶けやすさや空気と異なる密度をもちます。したがってそれぞれの気体の性質に適した集め方をする必要があります。
気体の集め方には「水上置換法」、「上方置換法」、「下方置換法」、の3つの方法があります。
酸素や水素のように水に溶けない、溶けにくい気体は水上置換法で集めます。
アンモニアは水に非常に溶けやすく空気より密度が小さいので上方置換法、二酸化炭素は水上置換法でも集められますし、空気より密度が大きいため下方置換法でも集めることが可能です。
水溶液の性質
物質が水に溶けるようす
食塩を水に入れると、食塩はだんだん見えなくなり、最終的には透明な液体になります。この液体をろ過しても食塩を取り出すことはできません。
食塩のように、水に入れると透明になる物質は水に溶けるといえます。
物質が水に溶けると顕微鏡でも見えないほどの小さな粒子になってしまうのです。そしてその粒子は全体に広がっていきます。
物質が水に溶けると、その液体は透明になります。また液の濃さはどこも均一であり、時間が経っても液の濃さは変わりません。
これに対してデンプンを水に入れると、いくらかき混ぜても水は透明にはならず、かき混ぜるのをやめてしばらく置くとデンプンが底にたまります。この液体をろ過するとデンプンを取り出すことができます。
このように物質によっては水に溶けないものもあります。
溶質・溶媒・溶液
食塩水は、水に食塩が溶けています。この場合、食塩のように溶けている物質を「溶質」、溶質を溶かしている物資を「溶媒」といいます。そして溶質が溶媒に溶けた液全体を「溶液」といいます。溶媒が水である溶液を特に「水溶液」といいます。
溶液の濃さ(濃度)は以下の式で求めることができます。
純物質・混合物
水、酸素、二酸化炭素、塩化ナトリウムなど、1種類の物質でのみできている物質を「純物質」といいます。
これに対して空気や食塩水、石油など、2種類以上の物質が混ざり合ってできた物質を「混合物」といいます。
純物質は1つの化学式で表すことができますが、混合物は1つの化学式で表せません(化学式についてはあとの単元で詳しく学習します)。
溶解度
水に溶ける物質は、いくらでも溶けるわけではありません。
一定量の水に物質を溶かしていき、物質がそれ以上溶けることができなくなった状態を飽和状態といいます。
このときの水溶液をその物質の「飽和水溶液」といいます。ある物質を100gの水に溶かして飽和水溶液にしたときの溶けた質量を「溶解度」といいます。
溶解度は物質によって決まっており、水の温度によって変化します。例外もありますが、ほとんどの固体の物質は温度が上がると溶解度も大きくなります。
温度と溶解度の関係のグラフを「溶解度曲線」といい、よくこのグラフの読み取りがテストで出題されます。
再結晶
いったん水に溶けた物質を再び取り出すには、水の温度を下げて溶解度を小さくし、溶け残りを作る方法があります。溶け切れずに出てきた物質は結晶として現れます。
このように溶解度の差を利用して再び血症として取り出すことを「再結晶」といいます。
溶解度曲線から再結晶の原理についてみてみましょう。
①80℃のとき
また硝酸カリウムが溶けられる余裕があります。
②60℃のとき
飽和水溶液になっています。これ以上硝酸カリウムは溶けることができません。
③40℃のとき
温度を低くしていくことで溶解度が小さくなります。斜線部の分だけ硝酸カリウムが結晶となって出てきます。
④20℃のとき
さらに溶解度が小さくなります。40℃のときと比べ結晶として出てくる硝酸カリウムが増えています。
物質のすがた
状態変化
物質は温度によって固体、液体、気体と状態を移り変えていきます。このような状態の変化を物質の「状態変化」といいます。
ほとんどすべての物質が状態変化をし、それぞれの状態の移り変わりには、それぞれ次のような名前がついています。
- 固体から液体:融解
- 液体から固体:凝固
- 液体から気体:沸騰・蒸発
- 気体から液体:凝結・凝縮
- 固体から気体:昇華
- 気体から固体:昇華
多くの物質は温度によって固体・液体・気体の3つの状態を持ちますが、液体の状態を経ずに固体から気体、気体から固体になる物質もあります。ドライアイス(二酸化炭素)がその例としてよく挙げられます。
体積・質量の変化
固体の物質を熱すると、融解して液体になります。
このとき、普通は物質の体積が増えます。
固体の方が、分子が規則正しくぎっしり詰まった状態で隙間が小さいからです(水は例外です。分子の構造上、固体の方が体積が大きくなります)。
また、液体の物質を熱すると、沸騰して気体になります。
このとき、体積が大きく増えます。液体では分子があちこちに移動し、固体のときと比べ分子同士の結びつきが弱まり隙間が少しだけ広がった状態ですが、気体になると分子同士の結びつきがほとんどなくなりそれぞれがバラバラになって運動しているからです。
このように状態変化において体積は変化します。しかし質量は変わりません。
物質を作っている原子や分子はそれぞれ質量を持っています。
状態変化ではその原子・分子そのものに変化はなく、集まり方が変わるだけなのでどの状態においても質量は変化しないのです。
沸点・融点・蒸留
液体が沸騰して気体に変化するときの温度を「沸点」、固体が溶けて液体に変化するときの温度を「融点」といいます。物質はこの融点、沸点を境に固体⇔液体⇔気体と状態変化をします。
純物質においては融点、沸点が決まっているので、これらの温度から物質の区別をすることができます。以下のグラフは、水とエタノールの混合物を熱したときの温度変化です。
先程の水だけのグラフと異なり、沸点は決まった温度になっていません。
エタノールの沸点は78℃であるのに対し、水の沸点は100℃であるため、水とエタノールの混合物を熱すると、水より沸点の低いエタノールを多く含んだ気体が先に出てきます。この気体を冷やすことにより液体のエタノールを取り出すことができます。
このように液体を熱して沸騰させ、出てきた気体を冷やして再び液体として取り出すことを「蒸留」といいます。
気体は、先に書いた通り酸素、二酸化炭素、水素、アンモニアの4種類が主です。発生方法で難しい物質名が出てきますが、表でまとめた以上の情報についてはほとんど扱われないので頑張りましょう。
質量パーセント濃度は計算問題が多く出題されます。分母は溶液ですが、溶質+溶媒から求めさせる問題もよくあります。問題をよく読み間違えないよう気を付けてください。
溶解度曲線は一見すると厄介ですが、理屈がわかってしまえばさほど難しくはありません。またこれとよく似たグラフが地学分野でも出てきます(飽和水蒸気量のグラフ)。読み方もほとんど同じなので一石二鳥です。