有機化合物 ~大きな括りで覚えよう~ | 0から始める高校化学まとめ

有機化合物の暗記は、出てきたものを整理して分類し、そのカテゴリーごとに覚えていくと効率がアップします。また、同じカテゴリーに入っている化合物は反応も関連性があるので、後々の学習にも役立ちます。

タイトル
有機化合物を構成する主な元素は、炭素、水素、酸素、窒素です。これらの元素が中心となって、他のハロゲン元素、リンなども加え、2000万種以上の有機化合物が作られます。

炭素原子は電気陰性度が中程度で、共有結合を作りやすい、原子価が4と大きいことから、様々な骨格構造を作ることができることがこれだけ多種多様の化合物を作ることができる理由です。

この有機化合物を覚えるとき、分類して覚えるのは効率のよい方法の一つです。一般的に、炭化水素基、官能基によって分類する方法があります。

しかし、この方法だけで分類しようとすると、官能基の性質、相互作用なども学習する必要があり、ややこしいと感じる人も多いでしょう。

この記事では、わかりやすい有機化合物の分類のやりかたを解説します。化合物によっては複数の分類項目に入ってしまうものもありますが、覚えやすいことを優先して解説します。

脂肪族炭化水素

まずは、鎖状か環状かで分けます。鎖状というのは、炭素が鎖のようにつながっているもの、環状は、輪を作っているものです。

そして次に飽和か不飽和かで分けます。炭素どうしが単結合のものを飽和、二重結合、三重結合(不飽和結合とも呼ぶ)でつながっているものが不飽和です。

鎖式炭化水素のうち、飽和、つまり単結合のみのものをアルカンと言います。そして、不飽和のうち、二重結合が一つのものがアルケン、三重結合が一つのものがアルキンです。

環式炭化水素の場合、飽和で単結合のみです。これをシクロアルカンと言います。ここで覚えるのは、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカンという分類です。

代表的な化合物をいくつか挙げますと、アルカンは、メタン、エタン、プロパンなど、アルケンはエチレン、プロピレンなど、アルキンは、アセチレン、メチルアセチレンなど、シクロアルカンはシクロプロパン、シクロブタンなどです。

ここでは、まずアルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、という括りで化合物を覚えていきましょう。

芳香族炭化水素

化学工場

芳香族炭化水素

芳香族炭化水素はベンゼン環を持つ有機化合物です。まずは、ベンゼン環が一つの化合物をいくつか覚えましょう。ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどがそれに該当します。覚え方としては、ベンゼン環に何がくっついているのか?つまり付加している官能基は何かで覚えます。

ベンゼン環が二つだとナフタレン、三つだとアントラセンです。この二つについては、官能基が付加する前のナフタレン、アントラセンという名称をしっかり覚えて下さい。

芳香族炭化水素は、ベンゼン環を持ち、官能基がそこに付いている化合物として分類して覚えていきましょう。

石油・石炭・天然ガス

石油、石炭、そして天然ガスは、芳香族炭化水素の項目に含まれていることが多いので、ここで学習してしまいましょう。

天然ガスの主成分はメタンです。メタンを輸送する際には、-160℃以下に冷却して、液体の状態で輸送します。また、最近時々マスコミの報道に出てくるメタンハイドレートは、メタン分子の周りを水分子が取り囲むことによって水和物となった状態です。

石油(原油)は、炭素数が2から40程度のアルカンなどが混合されている物質です。炭素数が増えれば増えるほど、沸点が高くなります。

原油は蒸留し、沸点の違いによってガソリン、軽油、灯油などに分離します。この方法は分留と呼ばれる方法です。

単数が増えれば増えるほど沸点が高くなりますが、逆に炭素数が少ないほど沸点が低くなります。

分留するとき、最も低い温度で分離されてくるのは石油ガス、これを液化したものが液化石油ガスです。炭素数が三つのプロパン、四つのブタンが主です。

炭素数が6から9になるとナフサが分離されてきます。ナフサはガソリンのもととなる物質です。技術の発達により、最近では軽油や重油からでもガソリンが生成可能です。

酸素を含む有機化合物

有機化合物のうち、酸素を含む化合物は多岐にわたり、身近なものが多く含まれています。

アルコール・アルデヒド・ケトン

アルカンの水素原子をヒドロキシ基であるーOHで置換したものがアルコールです。OHが一つであれば1価アルコール、二つであれば2価アルコールです。さらに、ヒドロキシ基と結合した炭素原子に、他の炭素原子が何個結合しているかによって、一つなら第一級アルコール、二つなら第二級アルコールと分類されます。

第一級アルコールが酸化されると、アルデヒドが生成します。さらに酸化するとカルボン酸に変化します。第二級アルコールは酸化するとケトンとなります。

アルデヒドがカルボン酸になってしまうのは、アルデヒドが還元井を持っているからです。還元性があるということは、酸化されやすいということでもあるので、第一級アルコールからアルデヒドになると、容易にカルボン酸に変化してしまうのです。

ここでは、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンが代表的な化合物です。代表的な反応も含めて学習しておきましょう。

カルボン酸・エステル

分子中に、カルボキシ基、―COOHを持つものをカルボン酸と言います。このカルボキシ基の数によって、一つであればモノカルボン酸、二つであればジカルボン酸、三つであればトリカルボン酸と名前がつけられます。

ここで重要なのはモノカルボン酸の化合物です。ギ酸、酢酸、プロピオン酸が特に重要です。

エステルは、カルボン酸とアルコールの縮合によって生成します。エステルは、―COO―の構造を持っています。

エステルについては、一般的なエステルと、無機酸とアルコールのエステルである無機酸エステルを覚えておきましょう。

アルコール、アルデヒドとケトン、カルボン酸、エステル、の四つに分類すると把握しやすいのではないでしょうか。

セッケン・油脂

3価のアルコールであるグリセリンと、高級脂肪酸のエステルを油脂として分類します。常温で液体のものは脂肪油、常温で固体のものは脂肪と呼ばれます。

脂肪油の特徴は、不飽和脂肪酸を多く含み、二重結合の数が多い油脂ほど融点が低くなります。一方で、脂肪は飽和脂肪酸を多く含みます。

この時注意する点として、これらの分類による化合物は、混合物であるということです。例えば、脂肪油であるオリーブ油は、オリーブ油という単一の化合物ではなく、飽和石棒酸のミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸の混合物です。

脂肪の代表的な物質であるバターも同様に、ミリスチン酸、パルミチン酸などから構成されています。

固体状の脂肪に、強塩基(水酸化ナトリウム水溶液など)を加えると、けん化という現象が起こり、グリセリンと脂肪酸ナトリウムの混合物が生成します。ここに塩化ナトリウムを加えると、塩析作用によってグリセリンとセッケンが分離されます。

セッケンは高級脂肪酸のアルカリ金属塩です。一般的なセッケンは、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムです。大きな特徴は、水に可溶であり、親水性の部分と疎水性の部分両方を持つことです。

ここでは油脂を構成する有機化合物、セッケンを構成する化合物として分類して覚えましょう。

芳香族化合物

コンビナート

フェノール類

フェノール類とは、ベンゼン環に直接ヒドロキシ基が結合した化合物です。フェノール、クレゾール、ありチル酸、ナフトールなどがここに分類されます。

これらは産業的にも重要な物質です。これに絡んだ問題も出題されることがあるので覚えておきましょう。

フェノールは合成樹脂の原料となり、サリチル酸は防腐剤として使われます。クレゾールは殺菌消毒に頻繁に使われる化合物です。

芳香族カルボン酸

芳香族カルボン酸は、ベンゼン環の炭素原子にカルボキシ基が結合している化合物です。アルボ岸城では泣く、アルデヒド基だった場合は、芳香族アルデヒドとして分類されます。

芳香族カルボン酸に分類される有機化合物の代表例としては、カルボキシ基が一つ付いている安息香酸、二つ付いているフタル酸があります。

また、ヒドロキシ基とカルボキシ基両方が付いている化合物もあります。これはサリチル酸です。重要ですので確実に覚えて下さい。

このサリチル酸は、カルボキシ基がエステル化するとサリチル酸メチルという消炎鎮痛剤の原料となり、ヒドロキシ基がアセチル化されると、アセチルサリチル酸という解熱鎮痛剤の原料になります。

ニトロ化合物と芳香族アミン

ニトロ化合物は、ニトロベンゼンとトリニトロトルエンをおさえましょう。トリニトロトルエンはTNTと表されることがあり、高性能爆薬として知られています。

ベンゼン環にニトロ基がつくとニトロ化合物となります。ニトロベンゼンの場合はニトロ基が一つ、トリニトロトルエンはニトロ基二つが付いています。

アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物をアミンと呼びます。この置換基がフェニル基のような芳香族炭化水素のとき、化合物は芳香族アミンとなります。芳香族アミンに分類される化合物では、アニリンは必ず覚えて下さい。

この分類方法ですと、アゾ化合物が芳香族アミンの項に入ってきます。アゾ化合物のうち、ベンゼン環を持つものが芳香族アゾ化合物になります。

この記事は、有機化合物を大まかな括りの中で効率よく覚えることに重きを置いて書いていますが、アゾ化合物の所では、反応が特に重要になりますので必ず覚えて下さい。重要な反応は、ジアゾ化とジアゾカップリングです。アニリンと絡めて出題されることが多々あります。

人間の活動と有機化合物

医薬品
人間の生命活動に重要な糖類、アミノ酸、生活に必要な染料、合成洗剤、医薬品についてもこの単元で学びます。覚えておかなければならないことを中心に解説していきます。

糖類・アミノ酸

糖類は、単糖類のグルコース、フルクトース、ガラクトース。二糖類のスクロース、マルトース、ラクトース。そして多糖類はデンプン、セルロース、グリコーゲンが暗記必須です。

単糖類は加水分解されないが、二糖類以上になると加水分解することも覚えておきましょう。

アミノ酸は、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸の三つに大きく分けることができます。ここからさらに、中性アミノ酸は脂肪族アミノ酸、含流アミノ酸、芳香族アミノ酸に分類されます。

脂肪族アミノ酸としては、グリシン、アラニン、セリン、含流アミノ酸としてはシステイン、芳香族アミノ酸としてはフェニルアラニンを覚えておきましょう。

酸性アミノ酸の代表格はグルタミン酸、塩基性アミノ酸はリシンです。これらは構造も含めて覚えておくことが重要です。

染料・合成洗剤・医薬品

染料はある特定の波長の光を吸収し、その波長の色によって我々の目に色彩として入ってきます。

染料の元となる化合物は、植物性のもの、動物性のもの、さらには鉱物も染料となる場合があります。共通するのは染まる仕組みで、染める相手、つまり繊維の分子と染料の分子が結合することによって染まります。

動物性の繊維はタンパク質の分子からなり、その分子は様々な官能基を持ちます。この官能基に染料の官能基が結びつくことによって染色されます。

染料としてはインディゴ(インジゴ)、オイルオレンジを覚えておきましょう。それほど多種の染料が出てくるわけではないので、余裕があれば、植物性のアリザリン、動物性のカルミン酸、ジブロモインジゴも覚えておくと安心です。

合成洗剤については、高級アルコール系洗剤と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS洗剤)の二つくらいで大丈夫です。

医薬品は、具体的な化合物名、反応名はキリがありません。とても高校化学の範囲でカバーできるレベルではないので、触れるくらいになっています。しかし覚えておかなければならないことはいくつかあります。

日本や世界各国で、麻薬などの薬物として禁止されたり規制されたりしている化合物、例えばアヘン、モルヒネは元々は医薬品です。

覚えておいた方が良い物質は、ニトログリセリン、サルバルサン、抗生物質であるペニシリン、サルファ剤などです。

作用についても教科書レベルで掲載されているものはおさえておきましょう。

有機化合物は非常に多くの種類があり、高校化学で扱う化合物はそのうちのごくごく一部です。

しかし、構造、性質、反応などを暗記することを考えますと、高校化学に出てくる化合物だけでも暗記にはかなりの労力が必要です。

この記事で解説したように、分類群を作ってから暗記していく、または授業で出てきた順に暗記して、暗記したものを分類していく、という方法ですと、理解までの労力がだいぶ少なくて済みます。

分類によっては重複してしまう化合物もありますが、それは気にする必要はありません。むしろ複数の分類群で覚えると、化合物の性質が理解しやすくなります。
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