元素 ~金属とイオン~ | 0から始める高校化学まとめ
金属元素の性質と、金属イオンについての解説です。金属イオンは、酸性溶液、または塩基性溶液によって沈殿を作ります。この性質を利用して、分離、分析を行います。ここではその分離、分析の基礎について学びます。
はじめに
この記事に出てくる金属元素を下の周期表に示しました。この周期表の分類に従ってこの記事では金属元素の性質と、金属イオンについて説明します。
典型元素の金属
アルカリ金属
アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)です。このうち、高校化学ではフランシウムをのぞいた5つの元素を学習します。
アルカリ金属元素の特徴は、特有の炎色反応を示す、融点が低く柔らかい、軽金属と呼ばれる、1価の陽イオンになりやすいなどです。原子半径が大きく、価電子が1個のためにこのような性質を持ちます。
これらの金属イオンの化合物で重要なのは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、賛嘆水素ナトリウムのナトリウムの化合物です。
水酸化ナトリウムは、潮解する性質を持ち、水煮よく溶け強い塩基性を示します。水に溶ける際は多量の熱が出ることも特徴です。食塩水を電気分解して濃縮することによって水酸化ナトリウムの固体が得られます。
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムは加水分解によって塩基性を示します。が、酸性塩として形成された炭酸水素ナトリウムは弱塩基性を示します。
炭酸ナトリウムの濃い水溶液を作り、水を徐々に蒸発させると、Na2CO3・10H2Oという十水和物が結晶として析出します。この結晶を空気中に放置すると水和水を失って、Na2CO3・H2Oの一水和物になります。この現象は風解といわれます。
水酸化ナトリウムは潮解、炭酸ナトリウムは風解、しっかり暗記しましょう。
また、水和物を持たない無水炭酸ナトリウムの製法、アンモニアソーダ法(別名・ソルベー法)は重要な反応です。飽和食塩水にアンモニアを溶かし、水溶液中に二酸化炭素を通すと、炭酸水素ナトリウムが沈殿します。この炭酸水素ナトリウムを分離し、熱すると炭酸ナトリウムができます。
2族元素
ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)は2族元素として分類されています。これらもアルカリ金属と同様に、特有の炎色反応を示します。アルカリ金属と同様に柔らかいのですが、融点は高めです。
この2族元素のうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムはアルカリ土類金属とも言われます。
2族元素はアルカリ金属の次に反応性が大きく、多くの化合物を作ります。アルカリ土類金属は空気中ではすぐに酸素と反応し、常温では水と反応します。この中で水と反応しないのはマグネシウムのみです。
化合物は、カルシウムの化合物が重要で、よく出題されます。
生石灰と呼ばれる酸化カルシウム、消石灰と呼ばれる水酸化カルシウム、炭酸カルシウムの3つは必ず学習して下さい。
水酸化カルシウムは、水にやや溶けます。溶けると強い塩基性を示し、二酸化炭素を通すことによって、カルシウムは炭酸カルシウムとして沈殿します。石灰水が白く濁る、というのはこの炭酸カルシウムによる濁りです。この炭酸カルシウムは、さらに二酸化炭素を通すと、炭酸水素カルシウムとなって水に溶け、沈殿は解消されます。
その他の化合物の特徴は、硫酸バリウムは水に非常に溶けにくい、塩化マグネシウムは海水に含まれる、塩化カルシウムは無水和物だと潮解性が強い、を覚えておきましょう。
12~14族元素
12~14族に含まれるのは、12族の亜鉛(Zn)、水銀(Hg)、13族のアルミニウム(Al)、14族の炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)です。
このうち、炭素は金属には分類されません。また、ケイ素とゲルマニウムは、金属と非金属の中間とされています。
この属性の元素で、高校化学のうちにしっかり押さえておきたい元素は、アルミニウム、亜鉛、水銀、スズ、鉛です。
アルミニウムは柔らかく、展性・延性に富み、熱と電気の伝導率も高い金属です。アルミニウム単体は、融解塩電解によって作られています。3価の陽イオンになりやすく、化学的には活発、つまり反応性が高い金属です。
燃やすと激しく燃焼して強い光を出します。鉄と混ぜて添加すると激しい発熱で鉄が溶けるので、溶接にテルミット法として使われています。そして最重要ポイントは、酸の水溶液、強塩基の水溶液どちらにも反応して水素を発生することです。こういった元素を両性元素と言います。
12族の亜鉛もアルミニウムと同様に、両性元素です。また同じく12族に属する水銀は、常温で唯一の液体の金属です。常温では酸化されません。
14族の元素のスズは、錆びにくいことが特徴です。鉛は塩酸や硫酸には溶けにくい金属で、X線の遮蔽などに使用されます。
これらの元素の化合物についてですが、アルミニウムでは、両性酸化物の酸化アルミニウム、酸化亜鉛、両性水酸化物の水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛これらは酸にも塩基にも溶けます。スズ、鉛の酸化物、水酸化物はいくつか種類がありますが、同様に両性酸化物、両性水酸化物です。
水銀の化合物は、水に溶けにくい塩化水銀(I)、水に溶けにくい塩化水銀(II)を思えて起きましょう。また、水銀関連は化合物に毒性が強いものがあります。さらに水銀の蒸気は非常に強い毒性を持ちます。
遷移元素
遷移元素は、周期表上の3族から11族に属する元素で、全てが金属元素に分類されます。
単体の性質
遷移元素の際が企画電子数は2個か1このどちらかです。これによって、原子番号が大きくなっても。遷移元素は化学的に性質が変化しません。
遷移元素は一般手kに典型元素と比べて融点が高く、硬い性質を持ちます。また、密度も比較的大きなものが多くなっています。
個別に見ていくと、鉄は地殻中にアルミニウムの次に多く存在します。酸化されると、酸化水酸化鉄、酸化鉄の赤さび、空気中で熱せられた場合は四酸化三鉄を含む黒さびを生じます。
11族元素に含まれる銅は、多くが酸化物、硫化物として存在しています。銀も同様に単体で産出されることは少なく、硫化物、塩化物として算出されます。一方で、金は単体で産出されることが多い金属です。
遷移元素の化合物
遷移元素が含まれる化合物で重要なものは、クロムが含まれるクロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、マンガンが含まれる過マンガン酸カリウム、酸化マンガン、鉄が含まれる硫酸鉄(II)、銅の硫酸銅、銀の硝酸銀です。
特に鉄の化合物は、硫酸鉄から水酸化鉄を沈殿させる方法は重要です。硫酸鉄水溶液に水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニアを加えると、水酸化鉄の沈殿を生じます。
この時点では緑色に近い色をしていますが、水酸化鉄の沈殿は、空気中で酸化されて赤褐色の水酸化鉄に変化します。この色の変化を覚えておきましょう。
金属イオン
遷移元素の金属イオン
遷移元素の金属イオンは、同じ元素でも酸化数にはいくつかのパターンがあります。これは、最外殻より内側の電子殻にある電子の一部が、価電子として働くことがあるからです。一般的に、2価、または3価の陽イオンのものが多いのが特徴です。
また、この陽イオンは有色のものが多い、触媒作用を持つものが多いというのも特徴です。鉄イオンはハーバー法、マンガンは酸素の発生、バナジウムは接触法の触媒になります。
遷移元素の陽イオンは、他の分子と結合して錯イオンを作りやすいという性質があります。禁則イオンにアンモニアなどの分子、または陰イオンが結合してできたイオンを錯イオンと言います。
学習する際に重要となるのが言葉です。錯イオン関連では、
配位子:金属イオンに結合する分子、または陰イオン。
配位数:金属イオンに結合している配位子の数。
は必須の暗記事項です。
さらに、配位子によって名前に付く言葉が決まっています。アンモニアであればアンミンという名前が付きます。銀イオンにアンモニアが配位子として2分子付くと、ジアンミン銀イオンとなります。この名前は、ジ=2つ、アンミン=アンモニアが配位子、銀イオン、という構成で名前がつけられています。
金属イオンの分離
環境・衛生の分野では、河川に含まれている金属元素、鉱業などでは鉱物に含まれている金属元素を分析する場合があります。その場合、含まれている元素を分離して、どのような成分元素からできているのかを分析しなければなりません。
こういった分析を定性分析と言います。金属を金属イオンとして分離し、成分を特定するkとは重要な技術でもあり、高校化学では重要な単元でもあります。
まずは金属イオンの分について解説します。
塩化物の形で水溶液中に金属が存在している場合、銀、鉛は希塩酸によって沈殿を作って分離することができます。ナトリウム、カルシウム、鉄などの塩化物は水に溶けやすく、銀、鉛の塩化物は水に溶けにくいことを利用した分離方法です。
硫化水素を使った分離方法では、銀、鉛、銅の場合は溶けている溶液が酸性であっても塩基性であっても硫化物として沈殿させることができます。一方で、鉄、亜鉛などは、溶液が塩基性の時にのみ沈殿物を作ることができます。酸性の場合、鉄や亜鉛などでは沈殿は生じません。
アルカリ金属とアルカリ土類金属以外の金属、銅、鉄、アルミニウム、銀などの水酸化物は水に溶けにくく、少量の塩基によって水酸化物の沈殿として分離することができます。
まとめとして、金属イオンの分離の具体的なやり方を解説します。
銀、鉛、銅、アルミニウム、鉄、亜鉛、カルシウム、バリウム、ナトリウムの混合水溶液があるとします。ここから金属イオンを分離していきます。
まず塩酸を加えます。これによって、銀と鉛が塩化物として沈殿します。ろ紙で銀と鉛の沈殿物を分離した後、水溶液に硫化水素を加えます。ここで銅が硫化銅として沈殿します。
ろ紙で分離した後、水溶液を煮沸し温度を上げます。ここに硝酸を加え、さらにアンモニア水を加えます。ここではアルミニウムと鉄が水酸化物として沈殿してきます。
ろ過後、水溶液に硫化水素を加えると、亜鉛が硫化物として沈殿し、水曜液中には、ナトリウム、カルシウム、バリウムが残ります。
最後に炭酸アンモニウムを加えると、バリウムとカルシウムが沈殿します。ろ過すると、水溶液には最後にナトリウムが残っていることになります。
これで分離は終了ですが、沈殿に複数の金属が含まれている場合があり、さらに沈殿物を分けないと完全に分離したことにはなりません。これについては次の金属イオンの分析で説明します。
金属イオンの分析
ここでは、前の項の金属イオンの分離を受けて、金属イオンの定性分析を例に沿って説明します。
銀、鉛、銅、鉄、亜鉛、バリウムの混合溶液があります。前項のように、まずは塩酸(希塩酸)を加えます。これで共に白色の銀と鉛が沈殿します。沈殿物には銀と鉛が混じっていますので、これをそれぞれに分離します。
沈殿に熱湯を注ぎ、沈殿物とろ液に分離します。ろ液には鉛、沈殿には銀が含まれているはずですので、ろ液にはクロム酸カリウム水溶液を加えます。そうすると、黄色の沈殿として鉛が現れます。一方、銀が含まれているはずの沈殿物は、いったんアンモニア水に溶かし、硝酸を加えて酸性にします。これによって銀は白色沈殿として現れます。
銀と鉛が除去されたろ液に戻ります。この溶液は酸性を示しています。このまま硫化水素を加えると、黒い沈殿が現れます。この沈殿には銅が含まれているはずです。
沈殿に硝酸を加えて溶かし、過剰量のアンモニア水を加えると、青い溶液になります。この青の発色によって、この溶液には銅が含まれていることが特定できます。
銅が除かれたろ液は煮沸し、硝酸を加えて再度加熱、そしてアンモニア水を加えます。これは鉄の酸化を目的とした操作です。
この操作で赤褐色の沈殿ができます。この沈殿を希塩酸に溶かし、ヘキサシアニド鉄酸カリウム水溶液を加えると、ベルリン青とよばれる濃い青の沈殿が生じます。これによってこの溶液中にテルが存在することが証明できました。
鉄を除いたろ液の中には、亜鉛とバリウムが残っています。
ろ液に硫化水素を加えると、白色沈殿が生じます。この白色沈殿は亜鉛の硫化物です。ろ過した後の溶液にはバリウムしか残っていないはずですので、炭酸アンモニウム水溶液を加えます。
この結果、白色沈殿が生じれば、バリウムが含まれていることの条名になります。これで含まれている金属全ての分離、特定が完了します。
金属の性質からこの分離方法を学習してもよいですし、いったん丸暗記してからなぜそうなるかを学習するのもよいと思います。
学習方法はそれぞれの人に適したやり方がありますので、自分に適した学習方法でぜひこの単元をマスターして下さい。