財政と社会保障 | 10分でわかる 中学公民まとめ

本単元では財政と社会保障に焦点を当てていきます。これらは日本において大きな社会問題となっているテーマであるため非常に出題されやすく、入念が学習が求められます。

はじめに

財政と社会保障_10分でわかる_中学公民まとめ
財政については、地方自治(https://novita-study.com/6234/)でも取り上げていますが、本単元で焦点を当てるのは国家財政です。

日本がどのようにお金のやりくりをしているのか、そしてそこにはどのような課題や背景があるのかを学習していきます。

また、財政と関連して、私たちが快適に暮らせるように様々な社会保障制度が整えられていますが、具体的にどのような内容であるかも重要なポイントです。

なお、これらは一見、あまり関連している内容に思われないかもしれませんが、非常に密接な関係があるため、具体的にはどのような関連性があるのかを意識しながら学習していくことが求められます。

財政と景気

財政と景気

財政の役割について

先述の通り、財政とはいわばお金のやりくりを指し、地方自治体が行うものは地方財政、国が行うものは国家財政と呼ばれます。

国や地方自治体は私たちの生活がより快適になるように様々な仕事をしていますが、その仕事をするにあたりお金が必要になりますし、その逆に様々な場面でお金を使っているのです。

財政において、国や地方自治体の収入を歳入、支出を歳出と言います。

お金のバランスを見ながら上手くやりくりしていくことが財政の基本です。

では、財政が担う役割は一体何でしょうか。それは下記3点が挙げられます。

  • 様々な公共事業の実施や公的サービスの運営

例えば、道路や水道の整備に代表される、私企業(民間企業)が行わないような院二事業を実施したり、警察や消防といった公的サービスの運営です。

  • 所得の再分配

国民の格差を是正するために所得の再分配します。

日本においては、収入が増えるにつれて税金が増える累進課税制度所得税に採用されているため、高所得者ほど高額な税金を納めているのが実情です。

一方で生活に困窮する低所得者に対しては、国民から徴収した税金を後述の社会保障制度の整備に充て、国民の所得が可能な限り平等になるように努めています。

  • 景気の調整

例えば、経済状態が悪い時(不況)には公共事業を増やしたり税金を減らしたりして、需要が増大するようにします。

一方で、経済状態が良い時(好況)には公共事業を減らしたり税金を増やしたりして、需要が減少するようにします。

こうすることで、過度な経済状態に陥る事態を防ぎ、景気を安定させることが出来るのです。

予算と財政

日本という国家において、どのような事業にどれだけお金を使っていくのかを決めることは非常に大切になります。

というのも、そのお金は国民や企業などから徴収した税金であるため、正しく適切に使用されることが望ましいからです。
(税金が不適切な使われ方をしていた場合、徴収された側は不満を抱くのが自然でしょう)

そのため、日本では国会で審議したうえで、予算を決めていきます。

では、この予算を構成する項目にはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 税金

先述の通り、予算には税金が含まれており、これが予算の大部分を占めています。

そもそも、私たち国民には納税の義務というものがあり、それは日本国憲法第30条に明記されているため、税金を納めるのは当たり前のことであると言えるでしょう。

さて、私たちが納めている税金にはどのようなものがあるのでしょうか。

一番身近な事例として、消費税が挙げられます。

消費税は1989年に当時の竹下内閣が導入を決めたもので、商品を購入したりサービスを受けたりした際の売上に一定割合かかる税金です。

当初は3%でしたが、1997年に5%、2014年に8%、2019年には10%(一部、軽減税率で8%)になりました。

なお、消費税は間接税に該当します。

間接税とは、納税者と税金を実際に負担する人が異なる税金です。

これは、商品の購入者が消費税を支払いますが、納税するのは商品を販売していた業者であることをイメージしてもらえれば良いでしょう。

一方で、間接税と対極にあるのが、納税者と税金を負担する人が同じ直接税です。

これに該当するのが、所得税や相続税、法人税などになります。

このように個人や企業など、様々な対象者に税金がかけられており、そこから得た税金で日本という国家を運営していくのです。

  • 国債

国債とは、国が税金だけの収入で予算を賄いきれないときに、個人や銀行などの民間から借り入れるものです。いわば、国の借金とも言えるでしょう。
(なお、地方自治体でも同様に地方債というものが存在します)

なお、財務省の試算によると、国債の発行残高は2020年度時点で約900兆円となっており、今後も増加すると言われています。

日本の借金が多いと言われるのはこの国債が起因しています。

  • 財政の支出

以上が財政における収入(歳入)ですが、その逆にどういった支出(歳出)があるのでしょうか。

最も大きな支出は社会保障費です。

これは医療や介護など、私たちが健康で快適に暮らせるように使われるもので、少子高齢化が急激に進行する日本では、今後も支出が増加していき、国家予算を大きく圧迫していくものになっていくことが予想されます。

その他には、国債の返済に充てる国債費や地方自治体へ交付する税金(地方交付税国庫支出金など)などの地方財政費などが大きな割合を占めている点も注目です。

景気の循環について

「景気が良い・悪い」という表現をよく見るかもしれませんが、これは具体的にどのような状態なのでしょうか。

また、日本は景気の良し悪しを交互に繰り返してきた歴史がありますが、なぜそのように景気が循環するのか、そのメカニズムを理解していくことが大切です。

景気が良い状態は好況と呼ばれます。

そのときには企業の商品はどんどん売れることで売上が上昇していき、その結果として労働者の給与が上昇します。給与が増えたら、使えるお金が増えていくことにつながりますので、経済が活性化するというわけです。もちろん、企業もさらなる売上拡大を目指し、さらに労働者を雇う段階に入り、失業者も減っていく状態になります。

好況時には雇用や生産、給与などが最も増えます。さらには、物価(モノやサービスの値段)が上昇していくでしょう。

ここで、物価が上昇しすぎたらどうなるかを考えてみましょう。

あまりに物価が上がってしまうと、消費者は商品を購入しなくなってしまいます。

その結果、企業の売上が落ちてしまい、労働者の給与も下がってしまいます。

そうすると、世の中の消費が冷え込んでしまい、少しでも経費削減を実現するために企業が労働者の解雇を行い、失業者が増加してしまうのです。

物価についてもモノが中々売れなくなってくるため、好況時よりも下落します。

このように一度不況に陥ってしまうと中々抜け出せなくなり、不況の循環(デフレスパイラル)が発生してしまいます。

以上から、景気は良すぎても悪すぎても良くありませんので、バランスを保つことが重要です。

よって、好況時は政府が公共事業を抑えたり増税したりすることで、過度に景気が良くなる状態を防ぎ、逆に不況時は公共事業を増やしたり減税したりすることで、景気のさらなる悪化を防ぎます。

景気の変動は様々な要因が重なって発生するものですが、これが国民に与える影響は大きいことから、政府や日本銀行が連動しながら、財政政策や金融政策を実施していくのです。

社会保障

社会保障

社会保障の役割とその発達の歴史

今日の日本社会において、様々な病気や障がい、災害、さらには失業などが原因で、苦しんでいる人々が多くなっています。

こういった人々が安心して快適に暮らせるよう、国家がその生活を保障しなければいけないという社会保障の考えが当たり前になっています。

しかし、このように社会保障が本格的に整備され始めたのは、第二次世界大戦後でした。

第二次世界大戦以前においても、1929年に発生した世界恐慌などで社会的な不安が大きくなっていたことから、社会保障制度を整備するうえで様々な法律が制定されていました。

ただし、社会保障制度の概念が初めて明確化されたのが日本国憲法の制定であったと言っても過言ではありません。

日本国憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(生存権)や、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と明記されており、これが今日の社会保障制度の根幹となっているのです。

日本における社会保障の現状

先述の通り、日本の国家予算において最も大きな割合を占めているのが社会保障費で、これは世界トップレベルの超高齢社会である日本を象徴しています。

一方で、少子化が急激に進行しているため、高齢者を支える若者の負担が大きくなってきているのが実情です。

また、国家予算は年々増加を辿っており、今では100兆円(一般会計)を超えています。

そして、その中で最も大きな割合を占めている社会保障費の予算も年々増加しているのです。

ここからも、日本において、いかに社会保障費が重要であるかを読み取れるのではないでしょうか。

続いての項目では、日本を支える社会保障とは具体的にどういったものがあるのかという点をご紹介します。

非常に重要な内容であるため、一つひとつを細かく押さえておきたいところです。

社会保障の4本柱

4本柱

  • 社会保険

「もし何かあったときに」という意味合いがあるものが社会保険です。

社会保険にはいくつか種類がありますが、代表的なものを見ていきましょう。

まずは年金保険です。

これは将来、自身が高齢者になったときに支給される年金が該当しますが、該当別によって国民年金や厚生年金があります。

次は医療保険です。

もし、自身が怪我や病気を発症してしまった場合、病院に通うのが一般的になります。

治療をしてもらったら、当然お金を払わなければいけませんが、保険内の範囲であれば、その大部分は医療保険が支給されることになるため、自身が負担しなければならない金額は抑えられているのです。

次は雇用保険です。

これは失業者が次の新しい職を探す一定期間お金を給付し、再就職の援助を図ります。

さいごは労災保険です。

これは労働者が勤務中に起こした怪我や病気などで働けなくなってしまった際に給付されるいわば生活費のようなものと言えます。

  • 公的扶助

収入がなくなり生活が出来なくなってしまった人に対して、最低限の生活が営めるように支援する制度が公的扶助です。

代表的なものが生活保護で、それ以外には教育扶助や住宅扶助、医療扶助などが挙げられます。

  • 社会福祉

高齢者や障がい者、児童など、社会的に立場が弱い人たちの自立を支援する制度が社会福祉です。

これは、上記対象者向けの施設やサービスの提供が挙げられます。

40歳以上が納付する介護保険料を財源に、介護を必要とする人への援助は社会福祉における高齢者福祉の代表例と言えるでしょう。

  • 公衆衛生

国民の健康を維持することや病気にならないように予防するなど、生活や医療の環境を整備するのが公衆衛生です。

その代表例が保健所で、その数は全国でおよそ500あり、私たちの快適な生活環境を維持しようと、その務めを果たしています。

環境の保全について

環境保全
1950年代半ば頃から、日本は高度経済成長期を迎え、急激な経済発展及び工業化が進行しました。

その躍進を支えたのが重化学工業でしたが、工場から排出された有害物質が原因となり、全国各地で公害が発生、中でも四大公害イタイイタイ病水俣病新潟水俣病四日市ぜんそく)は大規模な裁判にまで発展しています。

当時、公害に対する対応策や法律が整備されていませんですが、これを契機に1967年には公害対策基本法が制定されました。

これにより、公害防止の義務化が図られたのです。

さらに1993年には環境基本法が制定され、環境を守っていく責務を明確化していき、安心して暮らせる環境を維持していくことが規定されています。

私たちの生活においては、3R(リデュース・リユース・リサイクル)という考え方が普及していますが、これも環境保全が基になった概念です。

さいごに

まとめ
「はじめに」で記載したように、財政と社会保障は密接に関連しています。

例えば、日本の予算において大きな割合を占めているのが社会保障費である点を理解すれば、日本の財政問題がどういったものであるかを容易に理解出来るでしょう。

財政や社会保障というのは、簡単に言えば「私たちが快適に暮らすために必要なもの」です。

だからこそ、私たちの生活にも大きく関わっている単元とも言えますので、社会に出てからの知識を身につけるという意識を持って学習すると良いでしょう。

本単元で経済の単元は終了となります。一見、それぞれの関連性は薄いように見えるかもしれませんが、どれも密接に関わりあっているため、一つひとつに焦点を当てて学習するよりも、一気通貫で学習する方が総合的な理解につながるでしょう。
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