国会・内閣・裁判所 | 10分でわかる 中学公民まとめ

本稿では国会・内閣・裁判所の三権に焦点を当て、それぞれの仕事や仕組みについて学習していきます。我が国の民主主義においては、日本国憲法と同等に重要な単元であると言えるため、他の単元以上に綿密な学習が必要です。

はじめに

国会・内閣・裁判所_10分でわかる_中学公民まとめ
日本の民主主義において、国会・内閣・裁判所は欠かすことが出来ない根幹であるため、テストや高校受験では最頻出の項目と言えます。

ですので、各機関の詳細な内容まで理解しておかなければいけません。

しかし、出題されやすい部分についてはある程度限られているため、まずはその点を押さえていくことが重要になります。

本稿は特に重要な部分に焦点を当てることで、効率的な学習理解を促すことが最大の目的です。

国会【立法】

政治

民主政治とは?

日本では民主主義による政治(民主政治)が鉄則となっており、これは至る所で見ることが出来ます。

例えば、国会議員やその他地方議会議員などは私たちが選挙を通して選びます。そして、選ばれた候補者が国民の代わりに代表者となって政治を行うのです。

これを間接民主制と言いますが、逆にすべての国民が政治に参加する制度を直接民主制と言います。

しかし、1億人以上の人口を誇る日本ではすべての国民が政治に参加するのは現実的に不可能なので、間接民主制が取られているというわけです。

民主政治においては、物事を決める際には多数決が大原則になります。これは、全ての人が平等の上で成り立つものです。

国会の地位

日本国憲法第41条で、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」という文言が明記されています。

国権の最高機関とは文字通り「国の権力を持つ最高機関」という意味です。これは、国会議員は国民の意志を反映した上で選出されるため、民意が最も反映されていると言えます。そのため、最も大きな権限を持つ機関となっていると言えるのです。

また、法律を作る権限を持つのは国会のみで、いかなる理由があってもその他機関が介入することは出来ません。

二院制

日本の国会は衆議院と参議院の二院から構成されています(二院制)。

二院制を取っているのは、慎重な議論を重ねることが出来ること、そして国民の意見をより広く反映させることが出来ることが大きな理由です。

そして、衆議院と参議院ではそれぞれが細かい部分で違いがありますので、それらの点を押さえていきましょう。
衆議院と参議院の違い
上記は二院の代表的な違いを記載した表で、必ず違い明確にしておきたい項目です。

日本の国会においては、参議院よりも衆議院の方が強い権限を持っており、これを衆議院の優越と言います。

例えば、衆議院で可決された法案が参議院で否決された場合、再度衆議院で3分の2以上の賛成が得られれば、その法案は通過となります。その他、予算案や条約の承認など、国家における重要な項目を取り決める際にも、参議院で否決されたとしても、衆議院の賛成が得られれば、それらが通過するように日本国憲法では定められています。

なぜ衆議院の優越が認められているのかという点については、衆議院は任期が(参議院よりも)短く解散があるため、民意が反映されやすいとされているからです。

国会の種類

  • 通常国会

毎年1月に召集され、会期の150日間で予算案や法律案などが審議されます。

  • 臨時国会

内閣が必要としたとき、もしくは両院のいずれかに所属する総議員の4分の1以上から要求があった場合に召集され、臨時で審議が必要になった事柄を審議します。

  • 特別国会

衆議院が解散された後に行われる衆議院総選挙から30日以内に召集され、内閣総理大臣の指名などが行われます。

  • 緊急集会

参議院のみが召集できる国会で、衆議院が解散している間に臨時で審議が必要になった事柄などの暫定措置を行います。
ただし、暫定的な対応であるため、その後の国会が開かれた際に10日以内の衆議院による承認が得られなければ無効となります。

国会の仕事

  • 法律の制定

様々な法律を審議したうえで制定します。なお、二院で審議が不一致だった場合、必要に応じて二院の代表者で構成される両院協議会で話し合いが行われます。それでも話がまとまらない場合は、衆議院で再審議し、出席議員の3分の2以上の賛成を得られれば、法律が制定されます。

  • 予算案の議決

衆議院から予算の内容を審議し、議決を目指します。なお、法律の制定と同様に二院の意見が不一致だった場合は必要に応じて両院協議会を開催します。それでも進捗がない場合は、一通りの手続きを経て、衆議院の議決が優先されます。

  • 内閣総理大臣の指名

国会議員の中から、内閣総理大臣の指名を行います。

  • 内閣不信任決議

衆議院のみの権限で、当法案が可決されると、内閣は解散するか総辞職しなければいけません。

  • 弾劾裁判

弾劾(だんがい)裁判とは、何かしらの不祥事を起こしたり、職務を放棄したりなどした場合に、当該の裁判官についての今後を審議するというものです。3分の2以上の賛成があった場合、その裁判官を罷免(ひめん:辞めさせること)出来ます。

  • 国政調査権

キチンと政治が行われているのかなどを調査する権限を国政調査権と言い、日本国憲法第62条でその権限が定められています。

内閣【行政】

内閣

内閣とは?

内閣とは内閣総理大臣(首相)と各省庁(例えば総務省や国土交通省、経済産業省など)のトップである国務大臣から構成される組織です。

内閣総理大臣は国会で指名され、天皇によって任命されます。各国務大臣は内閣総理大臣が任命して選ばれます。

議院内閣制

内閣は国会からの信任で成り立ち、国会に対して責任を負う制度になっており、これを議院内閣制と言います。先述の通り、内閣のメンバーは原則、国会議員から選ぶことになっていますので、国会と内閣は連動していると言えるわけです。

さらには、日本国憲法第66条に「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」という文言があることから、内閣と国会の関係性は密接となっていることが分かります。

内閣の仕事

  • 法律の執行

国会で議決された法律を執行します。

  • 予算を作成

国家運営の母体となる予算案を作成し、国会へ提出します。なお、先述の通り、予算の審議は必ず衆議院から始まります。

  • 外交

外交とは文字通り「外国と交渉する」ことで、国を代表して様々な国との交渉を実施していきます。国際社会における日本のハンドルと言っても過言ではありません。

  • 条約の締結

様々な条約を締結します。なお、締結には国会の承認が必要です。

行政の意味と現状

行政とは文字通り「政治を行う」ことで、国会で可決された法律の執行や外交など、ありとあらゆる業務をこなすことを指します。

しかし、日本におけるすべての業務を内閣が実施することは難しいため、それぞれの分野に応じた行政機関を設置し、これらが代わりに行政の仕事を実施するのです。

国の行政機関として挙げられるのは1府12省庁で、先述の総務省や国土交通省、経済産業省、さらには文部科学省や厚生労働省、農林水産省、外務省、財務省などです。これらは日常のニュースでも登場することが多いため、耳にしたことがある方も多いかもしれません。

例えば文部科学省では、日本における教育や文化、スポーツなどの事業を計画・実施していますし、財務省であれば国の予算や決算、税金に関する事業の計画・確認などを行っています。

現在は1府12省庁の形が取られていますが、2001年の半ば頃までは22省庁ありました。あまりに組織が大きくなりすぎ、業務効率が悪くなった点などを改善するために、行政改革が実施され、行政組織のスリム化に成功したのです。

裁判所【司法】

裁判所

裁判所の仕事

裁判所の仕事は国会や内閣と比較すればシンプルで、犯罪を犯した人の判決や個人間の紛争を裁判によって決定・解決し、国民が安心して生活出来るように努めることです。

その他には、法律が憲法に違反しているかどうかを審査する違憲立法審査権を持ちます。

裁判の種類

  • 民事裁判

お金の貸し借りや、土地・相続など、個人の利益に関することがきっかけで発生した争いごとを解決する裁判を民事裁判と言います。

  • 刑事裁判

強盗や殺人など、個人の権利を侵害した事件を対象に行われる裁判を刑事裁判と言います。

  • 行政裁判

万一、国や地方自治体のミスにより国民に損害が出た場合、国民はこれらに対して行政裁判を起こすことが出来ます。

  • 裁判の基礎知識

裁判で訴えを起こす人を原告、訴えられた人を被告と言います。それぞれ弁護人をつけたうえで裁判に臨むことが出来ますが、様々な事情で弁護人をつけることが出来ない場合は国から国選弁護人が派遣される場合もあります。

裁判所の種類

  • 最高裁判所

最高裁判所は日本における最上位に位置する裁判所です。

司法においては最も力がある裁判所であるため、最高裁判所の裁判官は不適切なことがあった場合に国民審査によって罷免することが出来ます。

また、先述の違憲立法審査権について、最高裁判所は法令が合憲か否かを判断出来る最後の裁判所であることから、憲法の番人と呼ばれています。

  • 下級裁判所

下級裁判所には高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所が該当しますので、まずはこの点を押さえておきましょう。

三審制

一つの案件にかかる裁判は三度まで実施することが出来る制度を三審制と言います。

これは、公平かつ慎重な裁判を行い、当事者の人権や利益を守る意味合いがあるのです。

裁判の結果に不服の場合は、第一審から第二審へ訴えることを控訴、第二審から第三審へ訴えることを上告と言います。なお、一部の刑事裁判においては二審で終える場合もあります。

裁判で不利益を被った場合は?

裁判で有罪判決を受けた後に刑務所に入り、その後無罪に判決が一転した場合、刑務所に入っていた時間は戻ってこないため、その損害の補償を国家に請求する権利(刑事補償請求権)が日本国憲法第40条で定められています。

このように本来無罪であったにも関わらず、誤った判決を下されることを冤罪(えんざい)と言い、当事者の人権を保護する観点から度々問題視されているのです。

裁判は推定無罪の原則が基本的な考え方で、これは有罪判決を受けるまでは無罪であるとする考えです。

また、刑罰はあらかじめ法律で定められているものでなければ科すことが出来ない罪刑法定主義という考え方もあります。

いずれも当事者の人権を保護し、裁判による不当な不利益享受を避ける目的があるのです。

司法権の独立

法律に則って、様々な判決を下す機能を持つのは裁判所しかありません。たとえ国会や内閣であっても介入することは出来ないのです。

これは一見当たり前のことのように思えますが、司法権の独立は明治時代に発生した大津事件によってより強固なものとなりました。

大津事件は1891年に現在の滋賀県大津市で、訪日していたロシア人皇太子が日本人巡査によって切り付けられ負傷したというものです。

ロシアとの国交悪化を恐れた日本政府は、日本人巡査の死刑を求めて裁判所に圧力をかけてきましたが、通常の刑法に則って、裁判所は日本人巡査を無期懲役に処しました。

これは政府(行政)の圧力に屈さず、司法権の独立を守ったという点では、日本の司法史上における大きな転換点であったと言えるのです。

三権分立

三権分立
三権分立とは、国会(立法)・内閣(行政)・裁判所(司法)のそれぞれが分かれて独立している権力形態のことを言います。

これはフランスの法学者であるモンテスキューが「法の精神」で、それぞれが分立して抑制しあうことでバランスを保つことが重要であると述べたことから来ています。

お互いはそれぞれ独立していますが、すべての機関、さらには国民が監視しあえるような仕組みを設けることで、健全な国家運営を図ろうとする目的があるのです。

さいごに

まとめ
本単元は三権分立に該当する各機関の役割を見てきましたが、その内容は非常に膨大でかつ大変重要なものばかりです。

しかし、「はじめに」で述べた通り、出題されやすい内容は共通しています。

本稿はそれらの内容をピンポイントでまとめたものであるため、まずはこちらの内容を理解することに重きを置きましょう。なお、それらについては赤文字や青文字で記載した部分で、特に重要な内容となります。

日本国憲法の単元と同様に、一度に全てを理解しようとはせず、まずは大まかな内容を把握してから詳細部分までを学習するようにしましょう。

そうすることで、効率的に要点を学習することが出来ますし、テストや高校受験においても有効的な学習法です。

それぞれの機関が持つ権利や業務、様々な制度については、それらの内容からなぜそのような制度があるのかなど、それらの背景に至るまで出題される可能性が高いと言えます。また、日本国憲法第〇条と記載した部分については、様々な形で問題として出題されやすい傾向があるため、その内容を頭に入れておきましょう。ただし、第〇条であるかを押さえる必要性は中学公民においてはあまりありません。「さいごに」でも述べたように、内容量が膨大であるため、それぞれの内容を少しずつ理解していくことから始めましょう。
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