日本の貿易と経済協力 | 10分でわかる 中学公民まとめ

グローバリゼーションが進行した現代において、貿易はより活発なものになっています。そもそも貿易とは何か、ひいては国家間での経済協力に焦点を当てることで日本とその他の国のかかわりを見ていきましょう。

はじめに

日本の貿易と経済協力_10分でわかる_中学公民まとめ
本単元では、日本の貿易とその現状や課題、さらには国際的な連携事業を取り扱います。

グローバリゼーションが進行し、外国との時間的・空間的な距離が縮まっていますので、貿易や国際的な経済協力・連携は必要不可欠と言えます。

その中での日本の立ち位置や、外国とのかかわりを見ていくことで、地球の一員であることを理解しながら、様々な課題を自身で考えられるようになることが本単元の理解には欠かせません。

日ごろのニュースで取り上げられることが多いテーマであるため、テストや高校受験では取り上げられることが多い問題です。

記述問題にも対応出来るように、物事の概要や解決策などに注目して学習を進めていきましょう。

日本の貿易

貿易

貿易とは?

貿易とはいわば国家間で行われる商品の交換取引です。

外国から商品を購入する場合は輸入、自国から商品を売り出す場合は輸出と言います。

私たちの生活において、全ての商品を自国の生産でカバーすることは難しいため、外国から商品を輸入しなければいけません。もちろん、自国で生産した商品を外国へ輸出することは外国にもメリットがあります。

お互いの国同士で得意な商品を交換することが出来れば、お互いに利益を得ることが出来るのです。

日本の貿易

日本の貿易を学習する際にはどのような特徴があるのかを押さえておくことが非常に重要になります。

第二次世界大戦以前に日本の根幹産業となっていたのは繊維品の生産でした。

それに伴い、輸出品目の多くを繊維品が占めていたのです。

しかし、高度経済成長期を経て、工業化が大きく進展した日本は主体となる産業が徐々に変化していきます。原料を輸入してそれを加工して輸出するという加工貿易も大きな原動力となりました。

では近年の貿易にはどのような背景が見られるでしょうか。

  • 輸出について

輸出
日本の輸出品目で多くなっているのが赤丸で囲った一般機械や輸送用機器(主に自動車)、電気機器などの機械類全般です。

これは、高度経済成長期に三種の神器(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)や3C(カラーテレビ・車・クーラー)と呼ばれる機械類や電気機器などの生産が広く普及したことからも分かる通り、日本の技術が大きく進歩したことが大きな要因と言えます。

第二次世界大戦後、復興からいち早く技術を進歩させたことにより、世界トップクラスの技術国としての地位を築くことになり、それは現在の輸出品目から見ても容易に想像出来るでしょう。

  • 輸入について

輸入
日本の輸出品目で多くなっているのが食料品原料品鉱物性燃料(石油や石炭など)です。

先述の通り、日本は技術力が高いため、自国で機械製品を生産し外国へ輸出しています。

一方で、国土が狭く気候の地域差があまりない日本では食料品をすべて国内で生産することが出来ません。

また、石油・石炭・天然ガスなどの資源にも乏しいため、これらのほとんどを外国からの輸入に頼っているのです。

貿易相手国はどこ?

日本における貿易相手国のほとんどはアジアに集中しています。その中でも最も大きな割合を占めているのが中国です。

これは、中国が世界最大の人口を誇る大国であることから、世界有数の巨大市場を形成していることが挙げられます。

日本との距離も近いため、非常に密接な関係を築いていると言えるでしょう。

その他アジア諸国が多い理由としては、中国以外にも人口の多い国が多数分布しており、非常にニーズがある地域であること、さらにはアジアNIES(シンガポール・韓国・台湾・香港)に代表されるような新興工業経済地域の目まぐるしい発展が挙げられます。

アジア以外の国で大きな割合を占めているのがアメリカで、輸出入において非常に大きな関係があります。

貿易摩擦について

国家間で生じる貿易の不利益にかかる問題を貿易摩擦と言います。

非常に重要な問題となりますので、ここでは一つ事例を挙げて説明します。

例えば、外国からある商品Aを輸入しているとします。その商品Aは非常に性能が高くその上安いため、自国で生産されている商品Aは全く勝ち目がありません。

私たち消費者からすれば、価格が安い商品を購入することが一番の選択と言えるでしょう。

そうすると自国で生産している商品Aは中々売れなくなってしまい、結果として商品Aの生産者が倒産や廃業に追い込まれるだけではなく、総じて自国の産業が衰退していきます。

自国の産業を守る観点から、あまりにも他国の影響が大きいというのは良いことではありません。

もちろん、適度な競争下で商品Aが販売されるのであれば、それは消費者にとってメリットが大きいと言えます。

しかし、その度合いが過ぎる場合は自国にとって不利益をもたらすことにつながるのです。

特に1980年代の日米貿易摩擦では、日本の積極的な自動車輸出がアメリカ産業に大きなダメージを与えたことで、この問題に焦点が当てられました。

為替相場について

1ドル=110円など、1ドル=〇円という表現をニュースで目にする人も多いのではないでしょうか。これは1ドルが110円と同じ価値があることを意味します。

もっと簡単に言えば、110円を支払えば1ドルと交換出来るというイメージを持ちましょう。

このように、自国と外国の通貨を交換する際の比率を為替かわせ相場と言います。

為替相場は国家の間で行われる貿易には非常に大きな影響を及ぼします。

例えば、1ドル=110円の際に10ドルと交換したいとなった場合、1100円が必要になります。これが1ドル=100円になった場合、同様に10ドルと交換したい場合は1000円で済み、前者よりも100円お得です。
1ドル=110円のときよりも100円の方が円の価値が高いということができ、これを円高(ドル安)と言います。

逆に1ドル=120円になった場合、10ドルの交換には先述の為替相場よりも多くの円を必要とすることになり、円の価値が低いということから円安(ドル高)と言います。

円高は輸出に不利となり自国産業が停滞してしまいますが、外国の製品を安く輸入出来ます。また、私たちが海外旅行へ行く分には恩恵を受けます。
円安は輸出に有利となり自動車や機械類などの輸出産業が活発になりますが、外国の製品を輸入するとなると円高時よりも払い出しが増えます。逆に外貨の価値が上昇しますので、外国人観光客の増加などが見込まれます。

経済協力と国際連携

経済協力

経済協力のきっかけ

二度の世界大戦や1929年に発生した世界恐慌などによって、世界各国が混乱や停滞してしまった経験から、国際的な経済協力や連携を取っていく動きが見られるようになりました。

特に、各地域での経済的な結びつきを強めるために経済統合が進められました。

それぞれの地域でどのような組織があるかという点に注目していきましょう。

各地域の経済連携

経済連携
先述の通り、第二次世界大戦後に各地域での経済連携の動きが見られるようになってきました。その中でも、特に押さえておきたいのが上記地図に記載した4つです。

①ヨーロッパ連合(EU)
ヨーロッパ連合EU)は、ヨーロッパのさらなる発展と経済連携を目的に1993年に発足しました。

EU内で使用可能な通貨であるユーロの発行や、共通の安全保障政策を実施、関税の撤廃による域内の経済活発化、域外からの輸入物に対しての関税措置によりEU内の産業を保護するなど、ヨーロッパの継続的な発展のために様々な機能が実装されています。

EUの経済圏は世界トップクラスの規模を誇るため、ヨーロッパは今後も世界を牽引する地域であると言っても過言ではありません。

②東南アジア諸国連合(ASEAN)
東南アジア諸国連合ASEAN)は、東南アジア域内の経済・文化・社会の発展と政治・経済の安定を目的に1965年に設立されました。

域内の関税引き下げやより密接な連携が行われることで、東南アジアの飛躍的な成長に貢献してきまたが、加盟国にはインドネシアやタイ、ベトナムなど人口の多い国が集まっているため、今後も巨大市場として目が離せません。

③北米自由貿易協定(NAFTA)
北米自由貿易協定NAFTA)は、関税の引き下げによって経済の促進させることを目的に設立され、アメリカ・カナダ・メキシコの3か国から構成されています。

3か国しかありませんが、世界一の経済大国であるアメリカを中心に大国が並んでいるため、EUに匹敵するくらいの経済圏を誇るのです。

④アジア太平洋経済協力会議(APEC)
アジア太平洋経済協力会議APEC)は、アジア太平洋地域に属する21の国と地域(2019年11月末時点)が貿易の自由化と経済発展を目的に発足しました。

アジアだけではなくオーストラリアやニュージーランドなどのオセアニアや、アメリカ・ロシア・メキシコ・チリ・ペルーなど様々な地域の国々が参加しています。

⑤その他
世界における貿易の自由化を促進する目的では、1995年に設立された国際連合の一機関である世界貿易機関WTO)を押さえておきましょう。前身の機関とは異なり、国家間の貿易に関する紛争仲裁の機能も持ち合わせています。

また、関税の撤廃に重点を置いた環太平洋パートナーシップ協定TPP)もありますが、こちらはアジア太平洋経済協力会議(APEC)よりも参加国数が少ないため、双方を区別出来るようにしましょう。

南北問題について

北半球に多い先進国と南半球に多い発展途上国の間で見られる経済格差を南北問題と言います。

これは資源分布の偏りや技術格差から生じた問題と言われ、石油や石炭などの一次エネルギーが豊富に産出される発展途上国では、それの輸出に頼り経済発展を続けてきたことから、先進国よりも工業化が遅れてしまっているのが現状です。

技術力が低ければ、高単価の商品を輸出することが出来ないので、経済的な恩恵を十分に受けることが出来ずに国家の競争力が落ちていきます。

先進国がいち早く発展を遂げていく中で、発展途上国の資源を搾取されたり、先進国にとって有利な環境が整備されていったりした結果、南北問題が生じたのです。

なお、発展途上国の中でも、資源が豊かな国とそうでない国でも経済格差が見られ、後者は最貧国に分類されます。最貧国はアフリカに多く集中していますが、このような発展途上国間で見られる経済格差は南南問題と言います。

国際社会への援助

  • 政府開発援助(ODA)

様々な国々が存在している中で、特に発展途上国は食糧問題や感染症、保健衛生、水、エネルギー問題など様々な課題を抱えています。

そういった課題に直面する発展途上国に対し、日本は政府開発援助ODA)を行っています。これは発展途上国の経済発展を目的に、公的資金や技術の提供を行うというものです。

一見、日本から援助をする必要はないのでないかと思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

例えば、日本主導で発展途上国の感染症対策を実施したことで、日本はもとより世界の国々への感染症拡大という問題を事前に防ぐことが出来ます。

また、人材の育成や法整備を進める上での技術支援を実施することで、日本企業がその国へ進出するための基盤が完成し、その国へ進出しやすくなります

いずれも政府開発援助(ODA)の実施は、日本にとって潜在的なメリットがあるのです。

  • 非政府組織(NGO)

非政府組織NGO)は、民間の立場から難民や貧困・飢餓、災害問題の解決に取り組む組織のことで、利益を追求しない団体であることが特徴です。

様々な団体がありますが、共通する目的として発展途上国の救済や保護、開発などが挙げられます。

  • 国連平和維持活動(PKO)

国連平和維持活動PKO)は、戦争や紛争などの再発防止や停戦の監視などをすることで、世界の平和を維持しようとする活動のことです。

日本は平和主義を掲げているため、この活動に参加していませんでしたが、1991年に発生した湾岸戦争をきっかけに海外から国際貢献を求められるようになり、参加の是非が議論されるようになりました。

その結果、1992年に国連平和維持活動協力法PKO協力法)が成立し、それから自衛隊の海外派遣が始まりました。

さいごに

まとめ
本単元では、貿易と国際的な連携に焦点を当ててきましたが、いずれも現代を生き抜くうえでは必要不可欠なもので、日々ニュースで取り上げられることが多いテーマとなります。

そのため、出題されやすいテーマの一つと言えますので、貿易面については日本がどのような状態になっているかを頭の中で整理しておきましょう。特に記述問題で問われやすい傾向がありますので、貿易の現状や自身の考えを表現出来るようにしておきたいところです。

一方、国際的な経済協力やその他連携については、どのような機関や活動があるのかについてを簡単に押さえておきましょう

これらは、その他の単元と関連して出題されることがありますので、やはり大枠を理解しておかなければ他単元にまで影響を及ぼしてしまいますので、丁寧な学習が求められます。

本単元の学習イメージについては、貿易面を細かく丁寧に、経済協力面は概要を理解しておく形が良いでしょう。ただし、後者については国際分野に関する単元で関連事項として取り扱いますので、疎かにしないことが重要です。
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