地理は暗記じゃない…?!正しく理解した勉強法

よく「社会は暗記科目だから楽勝」だとか「地理も暗記だけで十分対応出来る」といった言葉を耳にします。しかし、だからと言って全ての人が地理を得意にしているかというとそうではありませんよね。それでは、地理が得意な人に共通することって何でしょうか?


地理は暗記じゃない…?!正しく理解した勉強法

はじめに

地理は様々な資料を見て、問題に解答しなければいけないので難しい、面倒くさいと感じる人はたくさんいます。それでもテストで点数を取らなければいけないので、必死に暗記しようとします…。
しかし、「地理を暗記」だと強く考えているほど、地理が苦手な傾向が見受けられます。もちろん、地理のテストが単語を解答する問題のみで構成されているのであれば、それでも十分高得点を取ることが出来ますが、多くのテストでは嫌いな人が多い統計データや資料の読み取り問題、そして記述問題が出題されます…!

これらの問題はただ暗記しているだけでは対応が難しいものなので、そのような問題を解く為には何が一番大切か…それは「地理は暗記するのではなく理解すること」です。
(もちろん単語の暗記もテストで得点する為には大切です)

さてここで「暗記」と「理解」にどのような違いがあるのかと思われた方もいるかもしれません。
「暗記」とは、例えば、「日本海側の気候」のように単語自体を覚えることです。
「理解」とは、「日本海側の気候」はなぜ冬に雪が多く降るのかという原因を理解することです。
当たり前のことを言っていますが、実はこのことを知って(理解)しておくことが、点数アップへの第一歩になります。なぜなら、理解することで暗記の効率を高められますし、もっと大切なことは、地理のテストで点数を取れる人とそうでない人を分けるのは、この原因を理解しているかどうかということになるからです。

例えば「日本で冬に多くの雪をもたらす気候のことを何というか?」という問いに対して、「日本海側の気候」と答えられる人はたくさんいます。しかし、「なぜ日本海側の地域は冬に多くの雪が降るのか?」と問われると、答えられる人の数はぐっと減ってしまいます。日本海側の気候がなぜそのような特徴を持っているのかを理解しているかどうかで暗記の効率が変わりますし、さらにはテストの点数も大幅に上がり始めます。

ただし、細かい部分まで理解しなければいけないかというとそういうことではありません。原因や理由を推測する力というのはどんな場面でも役立ちますし、地理ではその力を身につけることが出来ます。自分の考えが間違っていても問題ありません。とにかく考えてみましょう。理由や原因の多くは教科書等に掲載されています。
それでは「地理は理解することが大切」ということを頭に入れたら、次の章に行きましょう!

大切なポイント①

  • 「地理は暗記するのではなく理解すること」
  • 「地理のテストで点数を取るためには、原因まで理解すること」

このように理解してみよう

それでは早速、具体的な事例を用いてどのように理解していくのかをお伝え致します。その前に一つ意識してもらいたいこととして、ただ読むだけではなく、実際に声を出して誰かに説明出来るように、自分が先生になったつもりで説明してみましょう。そうすることでも、通常よりも早く理解できるようになります。

①畜産が盛んな都道府県ってどこ?
「畜産」という言葉を知っていますか?少し難しい言葉ですが、地理では頻出の単語になります。動物(家畜)を飼育して乳製品や肉、卵を生産する産業のことを指し、これらは我々の食卓にはもはや欠かせないものです。この畜産が盛んな都道府県はどこであるかという問題はよく出題されるのですが、ここで単純に都道府県を暗記するのではなく、大切なのはなぜその都道府県で盛んなのかを知ることです。
それではここで肉用牛と豚の頭数が多い都道府県を見ていきましょう。

【肉用牛】
地理の正しい勉強法_肉用牛
【豚】

地理の正しい勉強法_豚
※赤い道県は飼育頭数上位5位までを示している。

さて、どの都道府県に多いか分かったでしょうか。二つに共通して登場するのは鹿児島県と宮崎県、そして北海道になります。今回は鹿児島県と宮崎県に多い理由を見つけていきましょう。

まず、ここでイメージを掴んでおきたいのは、鹿児島県と宮崎県で盛んな農業のイメージです。
農業のイメージと聞かれると、具体的に思い浮かべられる人はあまり多くありません。

ここで一つ質問ですが、この2県ではお米の生産が盛んでしょうか?
この質問は比較的簡単に答えられると思います。
答えは「No」です。

実はこれにもきちんと理由があります。

お米を育てるには「水田」という言葉からも分かる通り、常に水を張っていなければいけませんし、さらには水はけの悪い土壌が必要になります。

実は、鹿児島県と宮崎県でお米作りが盛んでないのは、土の性質が良くないという理由が挙げられます。

それでは、なぜ「土の性質が良くないのか?」ということになります。

地図帳で九州地方を見てもらうと、九州の中央部には九州山地という大きな山地があることが分かります。そこにはたくさんの火山がありますね。

火山が噴火するとどうなるでしょうか?
当然、火砕流やたくさんの火山灰が地上に降り注ぐことになります。
つまり、長い年月をかけて火山灰や噴火に伴う火砕流によって作られた地面(これをシラス台地と言います)の上に鹿児島県と宮崎県があるということになります。

これではお米作りは難しいので、違う農業に取り組む方が効率は良くなります。
そこで、鹿児島県や宮崎県では、土に大きく左右されない畜産が発達していくことになります。

ちなみに、鹿児島県の黒豚をご存じですか?地元の名産品として全国的に有名ですよね。また、先述の表を見てみると、鹿児島県や宮崎県と同じ九州地方に属する熊本県でも肉用牛の生産が盛んなことが分かりますが、これも同様の理由です。

このように我々の生活や産業というのは、自然環境の上で成り立っていることが分かるのです。

さて、ここまでの流れを整理しますが、暗記と理解の場合ではこのような違いになります。

〇暗記の場合
畜産が盛んな都道府県→鹿児島県・宮崎県

〇理解の場合
たくさんの火山がある→火山灰等の影響で、非常に水はけのよい土壌が広がっている→水を大量に必要とするお米作りには向かない→水はけが良くても出来る畜産→鹿児島県・宮崎県

②発電所はなぜそこに立地するの?
我々の生活には欠かせない電気は発電所で作られています。しかし、発電といっても、水力発電や火力発電、原子力発電、さらには風力発電や地熱発電、太陽光発電まで様々あります。
今回ピックアップするのは水力発電所と火力発電所、そして原子力発電所の場所になります。それぞれの発電所が建設される場所には共通点があります。ですので、適当な場所を選んで建設されているわけではありません…!

地理の正しい勉強法_発電所

上記は図はそれぞれの発電所がどういった場所に立地しているかを示したものになります。

〇水力発電所
水力発電は文字通り、水の力を利用して発電するものです。ご存じの方も多いかもしれませんが、水力発電にはダムが必要になります。そのダムでは、落下する水の力を利用して発電しています。
つまり、水力発電所は、ダムを建設することが出来る場所に立地するということになります。

それでは、ダムの建設出来る場所は、「都市部」、「沿岸部」、「山間部」のどこになるでしょうか。

答えは「山間部」です。
都市部ではそもそも発電所を建設出来るスペースがありません。
沿岸部では高低差を利用するダムの建設は難しいです。
しかし、山間部であれば発電所を建設出来るスペースもありますし、何しろ高低差が場所によって激しいため、ダムの建設には適するということになります。

〇火力発電所・原子力発電所
水力発電所の場所を当てることが出来る人は多くいますが、火力発電所と原子力発電所は立地が少し似ているため、間違えてしまう人が多くいます。しかし、暗記ではなく、こちらも立地する背景を理解することで、簡単に区別すること出来るようになります。

両方とも沿岸部(海の近く)に立地していますが、実はこの点については、理由は共通するものがあります。それは燃料の輸入に最適という点です。

火力発電では、石炭や石油、天然ガスを燃やすことで発電する仕組みとなっています。

原子力発電ではウランを核分裂させ、その際に発生した熱を利用して発する仕組みとなっています。

両方で必要となる燃料は日本では取れないので、海外からの輸入に頼っています。つまり輸入に便利な沿岸部に立地しやすいわけです。
(もちろん、山間部に発電所を建設することも出来るかもしれませんが、港から燃料をわざわざ運ぶ必要が出てくるので、お金も時間も余計にかかってしまい非効率ですよね)

そして、決定的な違いは何か…。

ここでは原子力発電所を例に取り上げて、内容を理解しましょう。

原子力発電は二酸化炭素を排出せず、非常にクリーンな発電方法として知られている一方、原子力発電所で事故が発生した場合、
(事故の程度にもよりますが)周辺地域が放射能に汚染されてしまい、そこに住めなくなってしまう危険性があります。
2011年の東日本大震災では、福島原発事故が発生し、現在でも周辺地域へのアクセスは制限されています。
原子力発電は、燃料の輸入以外にも、事故発生時には施設を冷却する必要が出てくるため、冷却水(海水)を得やすい沿岸部に立地するわけです。

つまり、原発事故が起こってしまうリスクや影響を考慮すると、多くの人や機関、企業等が集まる都市部には建設されませんし、多くの住民から建設への同意を得るのは非常に難しいことです。
(その他には、地震対策で発電所を強固な地盤の上に建設するという理由も挙げられますが、ここでは省略します)

一方で火力発電所は海外から燃料を輸入するところまでは原子力発電所と同じですが、原発事故ほど、大きなリスクはないと言われています。
(誤解してはいけないのは、火力発電所で大きな事故が起きないということではありません)

その為、輸入された港の近くに立地します。日本では輸入に利用される大規模な港は大都市の近くにあるため、火力発電所は都市部付近の沿岸部に立地することになります。

さて、ここでも、暗記と理解の場合を比較してみましょう。

〇暗記の場合
・水力発電所→山間部
・火力発電所→都市部に近い沿岸部
・原子力発電所→都市部から離れた沿岸部

〇理解の場合
・水力発電所→水の高低差を利用して発電するダムが必要→山間部
・火力発電所→輸入に便利な大規模な港がある→都市部に近い沿岸部
・原子力発電所→輸入に便利な港があることと、事故が起きた際の周辺地域への影響が相対的に小さい場所→都市部から離れた沿岸部

さて、ここまで2つの事例を見てきました。理解するというのは、まるで連想ゲームみたいなものです。この点を意識するだけでも、理解度が大きく変わってきます。「そんなに詳しく教科書や参考書に書かれているのか?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、基本的な内容は記載されていますので、チェックしてみましょう!

大切なポイント②

  • 「理解するというのは連想ゲームのようなイメージ」

まとめ

さて、ここまで内容は理解出来ましたか?
完璧に理解出来ていなくても、まずはイメージを掴むことが大切です。
ここまで見てきたように、地理を理解するというのは、どうしてそのようになるのかを考えることです。そのようにすることで、特に意識することなくテストや受験対策をしていることにもなります!
なぜなら、理由を問われる記述問題にも内容を理解していれば、簡単に対応出来ますし、統計データの読み取りも自分なりに問題の背景を推測して解答することが出来るからです。もし、これらの問題を解くことが出来れば、自然に社会(地理)の点数も上がっていくことは言うまでもありません。

実は、この勉強法というのは、地理に限らず、他教科でも活かすことが出来ます。
皆さんの周りにも優秀な成績を残す人がいたと思いますが、その人が皆に勉強を教えているシーンはよく目にしたでしょう。その子は皆に説明しながら問題の解き方を教えていたかと思います。つまり、自身の中でどうしてそのようになるのかを理解出来ているということです。逆に内容を上手に説明出来ない人はそこまでテストの点数は高くなかったのではないでしょうか。

最後になりますが、このように細かい部分まで理解する勉強法というのは、慣れないうちはとても大変です。しかし、地理では自分なりに原因や理由を分析して、自身の言葉で説明出来るかということが見られています。勉強法に慣れ、テストで点数が取れるようになってくると、いつの間にか地理が苦ではなくなっていることでしょう。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

ポイントだけは必ず押さえましょう。

大切なポイントのまとめ

  • 「地理は暗記するのではなく理解すること」
  • 「地理のテストで点数を取るためには、原因まで理解すること」
  • 「理解するというのは連想ゲームのようなイメージ」
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