家族と地域社会 | 10分でわかる 中学公民まとめ
普段から当たり前の存在になっている「家族」はそもそもどういったものであるのか、そして日本における家族はどのような現状に直面しているのかを見ていきます。また、さらに視野を広げ、家族が所属する地域社会についても焦点を当てていきます。
はじめに
本単元では、ごく当たり前となっている「家族」という概念に焦点を当て、そもそも家族とは何なのか、現代の日本における家族の現状について学習していきます。
また、日本には多くの家族が存在しますが、そのすべてが地域社会の一員と言えるでしょう。
地域社会とはどのようなコミュニティであるのか、さらには少子高齢化が進行する日本において、地域社会が直面する課題やその対策法について理解を深めていきましょう。
家族とその現状
そもそも家族とは?
普段何気なく使用している家族という言葉ですが、そもそも家族の定義は何なのでしょうか。
家族とは、両親や夫婦、親子、兄弟姉妹など、同じ血縁関係を持ちながら一緒に生活している集団のことを指します。
世の中には様々な社会集団がありますが、その中でも家族は私たちが初めて所属する集団であると言えますし、今後所属するであろう社会集団でもその経験は活きてくるでしょう。
それでは、社会集団とはそもそもどういったものであるのか、そして具体的にどのような集団が挙げられるのかを見ていきます。
社会集団について
社会集団とは、共通する規則や道徳、慣習、目的などによって分けられたグループのことを指します。
簡単に言えば、例えば私たちが通う学校には、生徒自身が勉強することで得た知識や社会的な道徳や規則を身につけることで、社会に出たときにも順応出来るようにするという理念があります。つまり、学校も一つの社会集団と言えます。
その他にも、会社やクラブ活動といった身近なものから、市町村や国、さらには世界と様々な範囲の社会集団があると言えるでしょう。
社会集団には、家族のように血のつながっている血縁集団や、学校や会社、クラブ活動など目的に合わせて分類される機能集団に分けられます。
家族の形にはどういったものがあるのか
- 核家族
夫婦のみ、夫婦とその子ども、一人親とその子どもから構成される家族形態を核家族と呼びます。
イメージとしては、クレヨンしんちゃんの野原一家やドラえもんの野比一家が分かりやすいでしょう.
核家族は未婚率の上昇や少子化の進展などが影響し、昨今の日本では急激に増加しているのが実情です。
また、核家族の人員構成は大家族のそれと比較すると少ないことから、世帯の平均人員も減少の一途を辿っています。
よって、核家族だけではなく、一人暮らしの単身世帯も大きく増加しているのです。特にその傾向は一人暮らしをする人が多い東京圏や中京圏、関西圏などに多くなっているという点を頭に入れておきたいところです。
- 大家族
核家族のように親とその子どものみではなく、同じ家庭内に叔父や叔母、子どもの兄弟家族など、一つの家族が様々な人員で構成されている家族形態を大家族と呼びます。
イメージとしては、サザエさん一家が分かりやすいでしょう。
先述の通り、核家族が急激に増加していることもあり、大家族の割合は小さくなってきたいます。ただし、地方では都市部よりも大家族が多く見られる傾向があります。
家族の相続問題について
相続とは、様々な財産(遺産)を別の人へ引き継ぐことを言います。
第二次世界大戦直後の1947年に民法が改正されるまで、日本においては家督相続が原則でした。これは、亡くなった人の長男がその人の遺産をすべて引き継ぐというもので、遺産相続をめぐる家族間トラブルを防ぐために、鎌倉時代以降にその制度が設けられたのです。
しかし、民法改正に伴い家督相続は廃止され、現在は均分相続となっています。これを例に挙げると、両親とその子ども2人から成る4人家族で、その父親が亡くなった場合、母親(妻)が相続財産の2分の1、子ども二人が残りを分け合う形となり、それぞれ4分の1を相続します。
相続問題は戦後日本における新たな家族問題の一つと言っても過言ではありません。
変化した家族の概念
私たちにとって家族に関する問題や規則については、日常で当たり前となっているため、どのような点が変化したのか、どの様な点が問題であったのかなどは中々思いつかないでしょう。
しかし、第二次世界大戦直後まで維持されていた旧民法とそれ以降に改正された新民法では、家族の概念には大きな違いがありました。
例えば、家族の中でも長男に大きな権利が付与されていた旧民法に対し、新民法では男女や年齢によって権利の制限は撤廃されました。同様に夫婦でも夫の力が強かった旧民法とは異なり、新民法では夫婦の関係性は平等です。
先述の均分相続を見ても分かる通り、家族間の力関係は平等に近づいて生きていると言えます。
今後の家族はどうなるのか
少子高齢化が進行する日本においては、今後も核家族の増加が見込まれ、大家族はますます減少していきます。
しかし、家族数については世帯の平均人員も減少していることから、単身世帯が増加していき、家族自体の数が減少していくでしょう。
この問題は何も少子高齢化だけが原因ではありません。ライフスタイルの多様化や都市部への人口流入によって、家族形態は大きく変化してきた点を理解しておきましょう。
地域社会とその背景
地域社会とは?
私たちは家族や学校、会社、クラブ活動など様々なコミュニティで共同生活を営んでいると言えますが、このコミュニティは地域社会と言い換えることも出来ます。
地域社会はどこにでも見ることが出来るごく一般的なものですが、時代の変化に伴い、その概念は薄れていっているのが現状です。
ここからは、地域社会の課題とその対応策などの具体例を見ていきましょう。
地域社会の概念が薄れたきっかけ
地域社会という言葉はしばしば田舎の農村社会や漁村などのイメージを喚起させます。
これは、地域社会に根付く伝統文化や地域固有の慣習が今でも地方に多く残っていることに起因するかもしれません。
しかし、1950年代半ば頃に始まった高度経済成長期によって、日本では都市部への急激な人口流入が発生し、都市化が大きく進展しました。これは、高度経済成長期を支えた重化学工業などの産業が太平洋ベルトに集中する大都市へ集中していたためです。
これによって地方の人口が徐々に都市部へ流出するようになり、地域文化の継承が難しくなってしまったのです。
また、都市化が進行した影響で様々な問題が発生しました。
例えば、急激に人口が流入した大都市では、住宅の供給が追い付かないという住宅問題が浮き彫りになりました。
その他にも満員電車や渋滞の慢性化などの交通問題や、大気汚染や環境破壊などの公害問題などが挙げられます。
このように、急激な都市化やそれに付随した問題が発生した裏側は、地域社会という概念が薄れるという問題にも直結しているのです。
しかし、だからといって地域社会がなくなったわけではありません。先述の通り、地域社会というコミュニティは今でもいたるところで見られます。
ただし、都市部と地方では地域社会の在り方や生活にも大きな違いが生じてきますので、その点を簡単に押さえておきたいところです。
都市と地方における生活の違い
- 都市の生活
都市には様々な背景を持つ人々が暮らしているため、共通の価値観や伝統的な文化が生まれにくいという傾向があります。
そのため、その地域固有の慣習に縛られずに自由に生活することが出来るため、様々なライフスタイルが普及していると言えるでしょう。
しかし、一人ひとりが自立していることから、地域とのかかわりが薄れ、お互いに助け合うという文化が浸透していません。
また、近隣住民との人間関係も希薄になりやすい傾向があります。都市の生活では、職場や自身の所属するコミュニティでの人間関係が重視されやすいのです。
- 村落の生活
村落では農業や林業、水産業に従事する人が多い傾向があり、その中でも人間関係を特に重視する傾向があります。
都市の生活とは異なり人間関係は非常に密接なもので、例えば、村落での共同作業は結(ゆい)と呼ばれますが、これらをお互いに助け合いながらこなしていくのです。
その他にも、村での祭りや民謡などその地域固有の伝統文化が根強く残っており、それらを次の世代へも継承していこうとする動きが見られます。
しかし、村落での人間関係が強く結び合っている弊害として、外界に出にくかったり、外部者への排他的な思考を持っていたりするなど、非常に狭いコミュニティになっている点が挙げられます。
地域社会の維持と活性化
先述の通り、地域社会の概念は徐々に薄れていく中で、その文化を維持したり活性化させたりしようとする動きが全国で見られます。
では、その事例を具体的に見ていきましょう。
- 条例による地域社会の維持
条例はその地方自治体で効力を発揮する法律のようなものですが、その条例を制定することによって、地域社会の文化を守っていこうとする動きが見られます。
その一例として、かつて平安京など、明治時代に東京へ移転されるまで首都であった京都市では、様々な伝統文化財やその歴史的な景観を条例によって保全する取組が行われてきました。
例えば、建物には建築の高度制限を設定したり、屋外広告物の色を限定したりするなどして、その伝統的な景観を守る仕組みが整備されています。
これも地域社会の維持というテーマにおいては代表的な事例と言えるでしょう。
- 町おこしや村おこし
人口が流出し続けている地方では、その地域の魅力を知ってもらうことで、移転者や観光客を呼び込もうとする町おこし(村おこし)が行われています。
その代表的な事例として挙げられるのが、その地域の特徴を模したキャラクターであるゆるキャラの活用や、B級グルメと呼ばれる地元名産品のアピールで、いずれもご当地名物となっているものです。
例えばゆるキャラであれば、そのキャラクターグッズの販売によって大きな経済効果をもたらします。代表的な事例は熊本県のくまモンで、関連グッズなどの累計販売額は6,600億円(日本経済新聞:2019年3月4日付)を超えるなど、熊本県に大きな利益をもたらしました。
B級グルメであれば、2006年から継続的に行われているB-1グランプリという全国のご当地グルメでNo.1を決めるイベントが有名です。こちらでグランプリに輝いたご当地グルメは非常に大きな注目を集めるため、ゆるキャラと同様に大きな経済効果を見込めるでしょう。
このように、町おこし(村おこし)で成功している事例を取り上げましたが、これはほんの一部でしかありません。大半のイベントは中々上手くいかずに厳しい現実にさらされているのが実情です。
- 住みやすい街づくり
住みやすい街づくりを実施していくことで、地域社会の活性化を画策する自治体も多くなっています。
住みやすさとは様々な観点がありますが、例えば、人が集まりやすいように複合商業施設や大学を誘致するといった施設的なものもあれば、高齢者や障がい者が暮らしやすいようにバリアフリーを充実させるという福祉的なものもあります。
また、グローバリゼーションが進行している中で、外国人に住んでもらいやすいように外国語の案内板を設置するといった施策も住みやすい街づくりの一つと言えるでしょう。
さいごに
本単元で一番押さえておかなければいけないポイントは、現在の日本における家族形態の特徴やその背景と、私たちが所属する地域社会がどのような課題を抱えているのか、そしてそれを解決するために自治体がどのような取組をしているかです。
家族に関する問題は、少子高齢化や日本社会がどのように発展してきたのかというテーマと絡めて出題されることがありますので、それらの背景を押さえておくことで、自身の考えを述べる記述問題では対策法として有効になります。
また、地域社会に関してもなぜこのような問題が発生しているのかは、少子高齢化やライフスタイルの変化、都市問題などに起因していますので、本単元ではなくその他単元の知識と併せて理解していくと良いでしょう。
本単元は「10分でわかる 中学公民まとめ」シリーズにおいて、「私たちの生活と日本」というテーマに該当します。
このテーマでは今まさに私たちが暮らしている日本で発生している問題に焦点を当てることが多いため、普段の生活から垣間見える日本の諸問題を理解しておき、自身での解決策などを考えられるようになることがベストです。