世界規模の課題 | 10分でわかる 中学公民まとめ
世界には多くの問題が山積していますが、その中でも国を越えた世界が直面する課題があります。本単元ではその課題の概要を取り上げ、世界の一員としてどのような問題に直面しているのか、そしてどのように歩みを進めているのかを見ていきましょう。
はじめに
グローバリゼーションが進行した現代において、世界の国々は連携しながら歩みを進めてきました。
特に第二次世界大戦後は、国際連合やヨーロッパ連合(EU)、東南アジア諸国連合(ASEAN)に代表される地域連合の設立が相次いだことから、各地域の国々は大きな経済発展を遂げることになります。
このように世界にとってプラスになる出来事が多かったわけですが、それとは別に直面する課題もあることを忘れてはいけません。
本単元で取り扱う世界規模の課題は、一国の問題ではなく世界で協力して改善・解決していかなければいけない問題ばかりです。
そして、この世界規模で拡大した問題は、一見プラスに見えるような経済発展が原因で発生したものばかりで、世界の発展による弊害とも言えます。
世界はなぜこのような問題に直面しているのか、そして世界はどのようにしてこれらの課題を解決しようとしているのかについてを重点的に学習しそれらを理解することが本単元の目標です。
そして、世界規模の課題については私たちが世界の一員として考えなければいけない問題であるため、テストや高校受験で頻出のテーマ(特に環境問題)になっています。
そのため、自身であればどのように行動するかを考えることも大切です。
環境問題
地球温暖化
地球の気温が長期的に上昇する現象を地球温暖化と言います。
地球温暖化の原因となっているのは二酸化炭素やメタンガス、水蒸気などに代表される温室効果ガスで、これが地球上の熱を逃さない性質を持っているのです。
そもそも温室効果ガスの排出量が増加した背景には産業革命があります。
産業革命以降、機械を利用した工業が大きく発達していき、特に重工業においては石油や石炭に代表される化石燃料の消費が爆発的に増加しました。
そして、この化石燃料の消費によって、二酸化炭素の排出量が比例して増加していき、地球温暖化の原因にまでなったのです。
つまり、世界の経済や工業が大きく発達したことによって発生した環境問題と言っても過言ではありません。
高度な文明発達の裏側にはこのような代償がある点を理解しなければいけないのです。
ではここで、地球温暖化になると世界にはどのような影響があるのでしょうか。
代表的な事例として、気温の上昇によって氷河が溶け、その結果海面上昇が発生し、海抜の低い地域が水没してしまうケースが挙げられます。特に太平洋のオセアニア地域に数多く点在する島国(ツバルやフィジー、キリバスなど)が将来的に水没してしまう恐れがあるのです。
地球温暖化については環境問題の中でも特に出題されやすい項目ですので、原因とその背景まで理解することが求められる点に注意しましょう。
酸性雨
化石燃料を消費する自動車や工場から排出される窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)が大気中で溶け、その影響で降る酸性度の強い雨のことを酸性雨と言います。
これも地球温暖化と同様に急激な経済成長や工業化(特に工場から排出される排気ガスや自動車の普及)によって新たに浮上してきた問題です。
酸性雨はその性質から、森林や農作物の枯死を引き起こします。
実際にその被害に遭っているのが、ドイツのシュヴァルツヴァルト(ドイツ語で黒い森を意味)や中国、アメリカ東部です。
酸性雨は偏西風や季節風の影響を受けてると広範囲に拡散してしまい、特に偏西風の影響を受ける上記の地域は被害が深刻になっています。
オゾン層の破壊
オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きを持ちますが、昨今はフロンガスが原因となりオゾン層の破壊が顕著です。
フロンガスは人工的に作られたもので、冷蔵庫やエアコンなど私たちの身の回りにあるものに使われています。
オゾン層が破壊されると有害な紫外線が増加するため、皮膚がんや白内障など様々な病気に罹患しやすくなるため、環境問題という枠組みに留まらず私たちの健康のためにも阻止しなければいけない問題です。
砂漠化
急激な人口増加や灌漑(かんがい:農地へ人工的に水を供給すること)家畜の増加などが原因で、世界では急激に砂漠化が進行しています。
一見、家畜の増加は関係なさそうに見えますが、家畜が水を飲んだり草を食べたりすることでその周辺の砂漠化につながっているのです。
そのような被害が顕著にみられるのがサハラ砂漠の南縁に位置するサヘルと呼ばれる地域で、ここは年間を通して降水量は少ないうえ過放牧や急激な人口増加が原因となり砂漠化に拍車をかけてしまいました。
また、灌漑は降水量が少ない地域で行われており、付近の河川から人工的に水を引っ張ってきます。
しかし、急激な灌漑によって土壌の塩類が地表に集積した結果、土壌の地力が落ちてしまい、その結果砂漠化が進行したのです。
その他にも、カザフスタンとウズベキスタンにまたがるアラル海という湖は、かつて世界第4位の面積を誇っていた湖でしたが、急激に拡大した灌漑によってその面積が縮小してしまった事例となります。
アラル海に流入するアムダリア川とシルダリア川から人工的に水を引っ張ってきた結果、周辺の綿花生産量は急激に増加しましたが、その代償としてアラル海に流入する水量が激減してしまったのです。
これもそこで生活する人が快適に暮らせるようにしたり農作物を生産したりしたことで発生した問題と言えます。
環境問題を解決するために
環境問題を解決するためには世界の国々が協力することが不可欠です。
第二次世界大戦以降、世界の急激な発展により顕在化した環境問題に対して、どのようにこれらの問題に向き合っていくかが話し合われるようになっていきます。
例えば、1972年には「かけがえのない地球(Only One Earth)」をスローガンに掲げた国連人間環境会議がストックホルム(スウェーデンの首都)で開催されました。
また、1992年にはリオデジャネイロ(ブラジル)で地球サミットが開催され、地球を守るうえでどのように行動していくべきか、そして協力体制の確認が行われたのです。
地球温暖化に関しては、1997年に採択された京都議定書は先進国の温室効果ガス削減目標が定められました。
(ただし、アメリカが京都議定書から離脱するなど問題は別途生じています)
私たちは普段から地球のことを意識する機会は少ないかもしれませんが、考えてみれば非常にかけがえのないものです。
世界にとって環境を守りながら持続可能な開発(Sustainable Development:最近は持続可能な開発目標=SDGsを掲げることも多い)を実現することが大きな課題と言えます。
資源とエネルギー問題
資源とエネルギー消費
私たちの生活で当たり前のように使用している電気は様々な方法で作られていますが、それぞれどのように作られているのでしょうか。
その代表例が火力発電です。
火力発電は化石燃料を燃やして発生させた蒸気を利用してタービンを回すことで発電しています。
それ以外に主流な発電方法に挙げられるのは水力発電と原子力発電です。
水力発電は落水の力を利用、原子力発電は原子核が分裂する際に生じる熱エネルギーを利用してタービンを回すことで発電する仕組みです。
水力発電は豊富な水を活用することが出来るため非常にクリーンな発電方法として知られていますが、水資源が不足した場合は安定的に電力を供給出来なくなる可能性がデメリットですし、そもそも豊富な水資源を持つ国はそこまで多くありません。
火力発電は化石燃料を利用するため、それらを得ることが出来れば比較的参入が容易な発電方法と言えます。特に多くの先進国は火力発電に大きく依存している状態で、中国や日本、アメリカなどが代表例です。
ただし、安定的に電力供給が出来ますが、温室効果ガスの排出を助長してしまうため、環境汚染が問題として挙げられます。
原子力発電は二酸化炭素を排出しないクリーンな発電方法として、世界各地で取り入れられている発電方法です。
しかしその反面、原子力発電のリスクには放射能汚染が挙げられ、2011年に発生した東日本大震災の影響で発生した福島第一原発事故のように広範囲が放射能に汚染されたり放射能廃棄物の処理が発生したりしますし、1986年に旧ソ連(現在のウクライナ)で発生したチェルノブイリ原子力発電所事故では、2020年1月末現在でも入場規制が敷かれています。
このようにそれぞれの発電方法にはメリットとデメリットがありますので、それらの特徴を掴んでおきましょう。
そして、上記以外の発電方法には自然エネルギーを利用した風力発電や地熱発電などが挙げられます。
これらは地球元来のエネルギーであるため非常にクリーンで枯渇するものではありませんが、安定的に多くの電気を供給出来ない可能性がありますので、その点を留意しておきましょう。
資源をめぐる国際的な問題
化石燃料に代表される資源の多くが有限であることは知っているかもしれませんが、資源の分布は世界で遍在的(散らばっている)になっている点も理解する必要があります。
例えば、石油は中東やヨーロッパ、メキシコ湾、石炭は中国など、資源に恵まれている国とそうでない国の格差は大きいのです。
しかし、中でも石油は石油メジャーと呼ばれる巨大企業によって支配されてきた歴史があります。
それに対抗するために石油産出国の間で石油輸出国機構(OPEC)が設立され、石油メジャーに立ち向かっていきました。
そして、1973年に発生した第四次中東戦争の際にOPECが石油の価格を大幅に引き上げ、国際的な混乱に発展したのが石油危機(オイルショック)です。
これを機に石油産出国の間で「自国の資源は自国のもの」という資源ナショナリズムの考え方がより浸透していくことになりました。
限りある資源をいかに使っていくのかというテーマは石油産出国とそれ以外の国に共通する課題と言えるでしょう。
人口問題
人口増加の背景
2019年時点で世界人口は約77億人とされ、その数は年々増加を続け将来的には100億人を突破すると言われています。
その背景には医療の発達や衛生面の改善によって死亡率が低下したことや子どもを労働力を見なす文化において出生率が上昇していることなどがあり、特にアジアとアフリカで急激な人口増加(人口爆発)が顕著です。
一方でヨーロッパや北アメリカなど先進国が集中している地域の人口増加率は停滞しており、人口増加は地域によって大きく様相を変えてきます。
食糧問題
人口増加に伴って、世界的な食糧不足に陥る可能性も考えられる中、地域的な食糧の偏りも大きな問題です。
というのは、先進国は大量の食糧が消費されたり捨てられたりしていますが、発展途上国では十分な食糧供給がなされず深刻な栄養不足に陥る人たちも多くなっています。
このような現状に対し、国連食糧農業機関(FAO)は食糧支援や農業技術の提供などを実施し、地域的な食糧不足や飢餓問題の解決に取り組んでいることがポイントです。
領土問題
領土問題の背景
様々な国が集中していたり文化・歴史的な問題が発生したりした地域では、その領土を巡って対立する傾向があります。
特に日本においては、周りを海に囲まれた島国でその島をめぐった領土問題が見られますので、それぞれどの島がどの国と外交上の課題に挙がっているのか確認しましょう。
日本の領土問題
- 北方領土
北方領土は北海道東部に位置し、択捉(えとろふ)島、国後(くなしり)島、色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島の四島で構成されています。
択捉島と国後島は日本固有の領土ですが、日ソ共同宣言後の平和条約で返還が確定している色丹島、歯舞群島についても2020年1月末時点でロシアとの間で進展がありません。
- 竹島
1965年に日韓基本条約が締結され国交が回復しましたが、日本海に浮かぶ竹島(韓国名は独島:ドクト)をめぐって対立しています。
- 尖閣諸島
東シナ海の尖閣(せんかく)諸島では付近に資源が眠っていることからその領有を主張しているのが中国です。
さいごに
世界には非常に多くの国があるからこそ、様々な問題が発生しています。
冒頭でも記載した通り、なぜこのような問題が発生したのかという背景やそれを解決するために世界はどのように行動してきたかという点が非常に大切です。
私たちにとっても決して他人事ではないテーマばかりの単元ですので、別単元のテーマと合わせた複合問題として出題されることもありますし、環境問題においては記述問題として出題されることが多くなっています。
公民はいかに「当事者意識」を持つことが出来るかという点が学習理解の差に表れてきますので、その点は忘れずに学習を進めていきましょう。