国際連合 | 10分でわかる 中学公民まとめ
世界の秩序と平和、安全を実現するうえで大きな役割を担っているのが国際連合です。本単元では国際連合の歴史から仕組み、課題に至るまで、様々な内容を取り扱い、国際社会における国際連合の立ち位置を理解していきます。
はじめに
公民の国際問題を取り扱う分野として、最重要の項目になるのが国際連合です。
国際連合はどのようにして設立されたのか、そしてどのような機能や仕組みがあるのか、そしてどのような課題を抱えているのか等、多角的に理解することが求められます。
なお、国際連合の前身に国際連盟という組織がありましたが、国際連合との違いはどのような部分にあるのかについても押さえておくことが重要です。
グローバル社会になり、今後も国家同士の密接な連携が欠かせないからこそ、出題されやすいテーマとも言えますので、国際連合の概要を掴みましょう。
国際社会の発達
2019年末時点で、世界には196か国があり、それぞれの国々が独立して自国を治めています。
そもそも国家として独立するのに必要な要素は三点ですので、こちらを押さえておきましょう。
一点目は主権を持っていることで、これは自国のことを自国で決められ、他国から干渉されない権利を指します。
二点目は領土を持っていることで、そもそも国として治める場所がなければ何も始まりません。
三点目は国民がいることで、領土と同様に、人がいなければ国家を運営することが出来ないと言えるでしょう。
先述の通り、世界には196の国がありますので、言い換えれば国家の三要素を持ったまとまり(=国)が196あると言い換えられます。
今日では様々な国々がお互いに関係を構築しながら国際社会が成立していますが、20世紀は「戦争の世紀」と呼ばれていました。
第一・二次世界大戦や中東戦争、湾岸戦争、日本をピックアップしたものでも、日露戦争や日中戦争など、挙げたらきりがありません。
戦争以外にも1929年には世界恐慌に陥り、世界中の景気が非常に不安定となりました。
このように様々な問題が発生するからこそ、国家間での連携を強め、お互いに協力する必要が出てきたのです。
その結果として、国際連合をはじめとした、様々な機能を持つ国際組織が設立されていきます。
前身の国例連盟とは?
国際連合が設立される以前には、1920年に国際連盟という組織が設立されました。
これは、第一次世界大戦によってヨーロッパを中心に世界の国々が混乱に陥ってしまったため、二度と戦争が発生しないように当時のウィルソン米大統領が提唱したものです。
第一次世界大戦後である1919年にパリ講和条約が締結された際に、国際連盟の規約が作成され、その翌年に発足しました。
国際連盟の業務内容として、安全保障や軍事力の縮小、国際的な紛争の仲裁などが挙げられ、国際平和の実現に向かって走り出したのです。
しかし、国際連盟には提唱者であるウィルソン大統領のアメリカが不参加であったり、物事を決める会議では全会一致が必要であったりしたため、円滑に業務が遂行出来ませんでした。
それに加えて、ドイツやイタリア、そして日本は国際連盟を軽視する姿勢を取っていたことから、国際連盟の強制力(影響力)はほとんどなかったと言ってもおかしくなかったのです。
国際連盟の地位が不確かなまま、世界恐慌、ひいては第二次世界大戦が次々に発生したため、国際連盟の役割が完全には果たされませんでした。
国際連合の基本知識
国際連合の目的
第二次世界大戦が発生し、世界中が混乱に陥っていたことから、新たな国際協力機関は設立する動きが見られるようになってきます。
第二次世界大戦終盤になると、アメリカやイギリス、ソ連などが戦後の国際体制をどのようにするかについて話し合うようになりました。
そして、第二次世界大戦が終結した1945年に国際連合(本部:ニューヨーク)が発足することになるのです。
国連憲章(いわば国際連合の憲法)には、世界平和を実現するために必要である各国との連携や平等性の確保(基本的な人権の尊重)などが約束されています。
もちろん、国連憲章で定められていることを実現することは簡単なことではないでしょう。
(先述の通り、第一次世界大戦後に設立された国際連盟も悲惨な戦争を二度と引き起こさないようにする目的もありましたが、第二次世界大戦を防ぐことは出来ませんでした)
しかし、国際連盟がなければ世界はより混乱に陥ってしまっていた可能性も否めません。
様々な人種や民族、文化、宗教があるからこそ、長い歴史で多くの争いが発生してきました。
そうした中で国際連合は多様な国々をまとめ、お互いの国々を尊重しながら世界を牽引しています。
つまり、世界の恒久的な平和を実現するために、国際連合が世界各国や関係機関と調和を図りながら様々な活動を行っているのです。
続いての項目では、国際連合にはどのような仕組みがあるのかを見ていきます。
一見、聞きなれない組織名が登場しますが、テストや高校受験では頻出ですので名称とどういった業務を行っているのかを理解することが重要です。
総会
国際連合における重要な物事を決める機関が総会です。
加盟国はそれぞれ一票ずつ平等に投票権が与えられており、多数決で問題を解決していきます。
基本的な内容については過半数の票が必要になりますが、一部重要事項に関する議題については投票国の3分の2以上の票が必要になる点を頭の片隅に置いておきましょう。
安全保障理事会
国際平和を実現・維持していくうえで最も大きな責任を担っているのが安全保障理事会です。
先述の総会と並び、特に重要かつ頻出の機関になりますので、内容を理解していきましょう。
安全保障理事会はアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の常任理事国(5か国)と、10か国の非常任理事国で構成されています。
非常任理事国は2年に1回、総会で選出されますが、再選することはありません。
安全保障理事会の大きな特徴は、ここで決定された内容には強制力がある点で、これは国際連盟にはなかったものです。
安全保障理事会では国際的な紛争の解決や秩序を乱す国々への制裁などを任務としています。
中でも国際的な平和を維持するために、平和維持活動(PKO)を行っており、これは紛争の監視や平和に暮らせるような体制構築、人道支援などが主な業務です。
特に重要な問題においては、常任理事国に該当する国が全て賛成しなければ可決されない五大国一致の原則が取られており、一国でも反対があれば成立しません。
常任理事国が拒否権を持つことからも分かる通り、非常に大きな権限を持っています。
その他の仕組み
総会と安全保障理事会が中学公民においては非常に大切な機関となってきますが、その他にも機関も簡単に理解しておきましょう。
経済社会理事会は文字通り、世界の経済・社会的な諸問題についての問題を取り扱う機関です。
こちらに属する専門的な機関として有名なものが、世界保健機関(WHO)やIMF(国際通貨基金)、IAEA(国際原子力機関)などが挙げられます。
(これらの機関については詳細を後述します)
信託統治理事会は国連で非独立地域の統治や監視を行う機関です。
ただし、機関自体は存在しているものの、1994年にパラオが独立してからは実質活動をしていません。
国際司法裁判所はオランダのハーグにあり、国際的な諸問題を解決するために設置された機関です。
事務局は国際連合における事務職員から構成されており、日々様々な業務を行っています。
国際連合の活動や機関
先述の通り、国際連合は複数の機関を抱え、それぞれの機関が様々な業務にあたっています。
しかし、それだけではなく、国連が遂行する業務の範囲は「世界」から「地球」にまで広がっているのです。
例えば、1972年には世界で初めて環境問題について議論する政府会合(国連人間環境会議)が開催され、本会議のスローガンである「かけがえのない地球(Only One Earth)」は現在に至るまで、世界共通の概念になっていると言っても良いでしょう。
さらには1992年にリオデジャネイロ(ブラジル)にて、環境と開発というテーマで開催された地球サミットでは、持続可能な開発(Sustainable Development:近年は持続可能な開発目標と名を打ってSustainable Development Goals=SDGsと表記することも多い)を実現するうえでの行動指針(アジェンダ21)が決定されました。
その他にも世界の急激な人口増加に関するもの(国際人口開発会議)や、飢餓や食糧問題に関するもの(世界食糧サミット)などが開催されています。
ここで、話を一度「世界」へ戻すと、先述の通り、国際連合には様々な機関があり、それぞれが様々な目的を達成するために日々業務に励んでいますので、代表的な機関を、名称と事業内容で見ていきましょう。
- ユネスコ
ユネスコ(UNESCO:国連教育科学文化機関)については一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
教育・科学・文化を通じて、世界の連携を深め、世界の平和や安全を維持することが目的です。
具体的な事例を挙げると、世界は識字率や学校への通学率における国家間の格差が非常に大きいのですが、教育の普及が遅れている国に対して、教育使節団の派遣など、様々な教育支援を実施します。
また、世界の文化(自然)を守るために、世界遺産の選定を行い、それを後世に引き継ぐ取組が行われている点にも注目です。
- 世界保健機関
世界保健機関(WHO)は世界の人々が健康で快適に暮らせるように、感染症の撲滅や衛生環境の整備、世界的な病気流行(パンデミック)への対応を行っています。
- 国際通貨基金
国際通貨基金(IMF)は世界の金融情勢や為替相場の安定化を図ることが主な業務です。
国際貿易で収支が悪化した国に対して、一時的な融資をはじめとした支援を行っています。
- 国連食糧農業機関
国連食糧農業機関(FAO)は主に食糧の安定的な生産を実現し、飢餓や貧困を解決することが目的です。
- 国際労働機関
国際労働機関(ILO)は雇用者や国家、そして労働者の協力を得ながら、労働者の地位を向上させることを目的に業務を遂行しています。
国際連合の課題
第二次世界大戦以降、世界の秩序と平和を維持するために大きな役割を果たしてきた国際連合ではありますが、もちろん様々な課題に直面している事実も理解することが重要です。
まずは資金不足という点になります。
国際連合は組織の運営や業務の遂行するうえで加盟国から資金(分担金)を徴収していますが、その資金の納付を滞納する国があったり、平和維持活動(PKO)の必要性が増しその分出費が増加したりしたことが原因です。
(分担金の滞納は80か国以上にも上り、その影響から国際連合の職員へ給料が支払えないという警告を事務総長が出しているという現実です)
資金については、国民総所得(GNI)を基準に決定されるため、基本的に経済が発達しているアメリカや日本、ドイツ、イギリスなどの先進国の負担割合が大きくなっている点にも注目しましょう。
また、安全保障理事会においては、常任理事国の構成主体が欧米諸国になっていることから、アジアやアフリカの意見が反映されにくいことや、常任理事国が議決の拒否権を持つことが加盟国の平等性を失わせている点なども課題となっています。
その他には国際連合の職員不足が挙げられます。
現在、世界の人口が急激に増加しており、様々な問題も次々に発生していることから、それらに対応する職員が不足しているというわけです。
国際連合にとっては様々な問題に対応出来る優秀な人材を確保することも急務になります。
このように世界ではまだまだ大きな問題が山積しており、国際的な平和を実現するうえでは、すべての加盟国がお互いに協力しあうことが重要です。
さいごに
国際連合の単元において、特に重要になってくる点は「前身の国際連盟と何が違うのか」や「国際連合のしくみ(特に総会と安全保障理事会)」、「国際連合に属する機関名およびその役割」、「国際連合の課題」です。
様々な機関があるため、すべてを覚えきらないといけないように見えますが、これはあまり重要ではありません。
むしろ、国際連合における本質は一体何であるかを掴むことが重要ですので、他単元と比較すると理解すべき項目は明白です。
本単元については、他単元以上に赤文字と青文字の部分を特に重点的に学習することで要点を押さえることが出来るように配慮していますので、その点を意識しましょう。