企業と金融 | 10分でわかる 中学公民まとめ

経済活動において企業と金融は切っても切れない関係です。ごく当たり前にある会社や銀行などがどのような仕組みや役割があるのかに焦点を当てていくことで、経済の根本にあるお金への理解を深めていきます。

はじめに

企業と金融_10分でわかる_中学公民まとめ
本単元では企業と金融の概要や関係性に焦点を当てることで、経済への理解を深めることが最大の目的になります。

タイトルにもなっている企業と金融は経済を取り上げるうえで欠かせないものであり、これらへの理解が深まらなければ経済に関する問題の多くは解けないと言っても過言ではありません。

そのうえ、経済については政治の単元と同等以上に重要かつ頻出の単元ですので、単語の意味やなぜそのようになっているのかといった物事の背景までを細かく理解出来るようになることが目標です。

普段あまり聞きなれない単語や説明が多く登場するため、始めからすべてを理解しようとはせずに、一歩ずつ分からない部分を埋めていくことが、本単元においては効率的な学習と言えるでしょう。

企業の仕組みと形態

企業

企業の生産と利益分配

私たち消費者が日頃消費している財やサービスはどのように生産されているのでしょうか。

まず、商品を生産するためには原料が必要になりますが、それを入手するためにはお金(資本)が必要です。

そして、入手したあとに生産するための場所(自然)も必要になります。

最後に、生産する人(労働)がいることで、ようやく商品が生産されるのです。

生産に必要な資本・自然・労働は生産の三要素と呼ばれ、企業の生産においてはどれ一つ欠けてはいけません。

企業は商品を生産、それを販売して利益を得ますが、この利益は貯めておくわけではなく、例えば、商品の生産量を増やすために新たに工場を建設する費用や労働者の賃金上昇に回すなどして、利益を分配していきます。

企業の種類はどのようなものがあるの?

一言で企業と言っても、様々な種類の企業が存在しておりそれぞれが特色が違います。

企業は出資者(いわばその企業を作るためにお金を出した人)や目的によって、大きく3つに分類されます。

  • 私企業

一般の民間人が出資し、主に利益を生み出すことを目的として設立された企業を私企業民間企業)と言います。

日本には現在400万社以上の会社がありますが、そのほとんどは私企業に該当しており、テレビのCMや電車の広告に掲載されているおなじみの企業はほとんどこれに該当すると考えて問題ありません。

  • 公企業

国や地方自治体が出資し、私企業とは異なり利益を目的とせずに福祉的な意味合いで設立された企業を公企業と言います。

電力やガス、水道、鉄道などが該当し、例えば〇〇市水道局や〇〇市営地下鉄と言ったものが挙げられます。

  • 第三セクター

公企業と私企業が共同で出資された企業を第三セクターと言います。

従来は地域の開発を目的に共同出資された経緯があり、その代表例として地方の鉄道会社が挙げられます。

株式会社とは?

私たちの身の回りにある会社で最も多いのが株式会社で、一度は耳にしたことがある言葉かもしれません。

日本には出資者の責任範囲などに応じて様々な種類の会社が存在します。

中学公民ではその中でも株式会社を一番に理解しておく必要があり、それ以外は基本的には出題されませんので、本項目では株式会社の仕組みを理解することに重点を置きましょう。

まず最初に企業を運営していくためには資金が必要になりますが、これはどのように集めるのでしょうか。

「銀行から融資を受ければ良いのではないか?」と思うかもしれませんが、ある程度業績が好調で財務状況の良い企業はともかく、設立の浅い企業にとっては難しい話です。

そこで、株式会社は株式を発行し、それを一般の人に買い取ってもらうことで、資金を調達することが出来ます。

もちろん、それで得た資金を上手く利用して会社で事業を運営することで利益を上げていかなければいけません。

利益が出たら、株式を購入してくれた出資者(株主)に対して配当という形で利益を分配する形になります。
当然見返りがなければ、一般の人たちはリスクを冒してその企業に出資をするはずはありません

また、株主は保有する株式数に応じて、株主総会での権限が強くなる点も注目です。

株主総会とは、株式会社の最高機関で、会社の方針や取締役などを選ぶために実施され、そこでは株主が議決権を持ちます。

そのため、保有する株式が多ければ多いほど株主総会での立場が強まり、その株主の影響力は大きくなっていくのです。

なお、株主総会で株主から選ばれた取締役で構成される取締役会は、責任をもって株式会社の運営を行います。

企業の集中について

企業は利益を上げ続けて、やがて規模が大きくなっていくと、業界でも大きな地位を占めることになるだけでなく、様々な企業同士が合併していく傾向があります。

企業の合併が起こる要因として、業界のシェアを大きく牛耳ることで他社が参入しづらい状況を作り出して会社の経営を安定させるという思惑があったり、業界内での競争が起こりづらくなることから広告宣伝費や開発費を押さえられたりするというものが挙げられます。

このように企業の集中には上記の要因がありますが、それでは具体的にどのような集中形態があるのでしょうか。

  • カルテル

同業界内の企業同士が競争を止めるため横並びで連携する形態をカルテルと言います。

カルテルでは生産量や価格などで協定を結ぶことで、競争が生まれにくくなり、その結果、安定した市場が形成されます。

  • トラスト

複数企業が一つの企業に統合する形態をトラストと言います。

特に同一業界内で発生すると、その他企業が圧迫され倒産に追い込まれてしまう可能性が上がり、その結果、カルテルと同様に市場が安定します。

  • コンツェルン

親会社が多くの子会社を保有し支配する形態をコンツェルンと言います。

これは様々な業界に利益を上げ、市場に大きな影響を与える一種の集中形態です。

第二次世界大戦前であれば財閥、近年はグループ会社が該当します。

イメージとしては日本を代表する企業グループである三菱が分かりやすいですが、金融部門に三菱UFJ銀行、不動産部門に三菱地所、機械部門に三菱重工業や三菱電機、商社部門に三菱商事など、各業界にグループ会社が多く存在しているのが良い事例です。

上記にように、企業の集中が進むと市場の独占が発生し、その弊害として、不当な金額で販売された際に競争がないために価格が下がらずに消費者が被害を受ける点が挙げられます。

しかし、日本では公正取引委員会によって運用されている独占禁止法があり、独占市場が形成されないように配慮されているのです。

大企業と中小企業

日本において、大企業と中小企業の格差は非常に大きくなっています。

例えば、従業員の賃金や福利厚生、生産力、労働環境などが代表例で、これらは大企業が圧倒的に好条件です。

しかし、日本には400万社以上ありますが、その約99%は中小企業で、大企業はたった1%ほどしかありません。

ただし、先述の通り、大企業は生産力が高いため、中小企業よりも圧倒的に利益を上げることが出来ます。

その結果、企業数が少ないにもかかわらず、製造品の出荷額におけるシェアは大企業が半分を占めているのです。

大企業に圧迫される形で中小企業は経営を続けることが難しくなり、最悪の場合には倒産してしまいます。

そのため、近年は大企業が参入していないような特殊な技術が必要とされる分野に進出するベンチャー企業が増加しており、日本の経済に大きな影響を与える存在になるかもしれません。

企業の社会的責任について

企業が事業を拡大していくと、その企業は社会に与える影響力が大きくなります。

身近な事例を取り上げると、私たちが日常生活を送るうえで様々な製品を使用していますが、これらはどれも企業が生産したもので、私たちが快適に暮らすうえでは欠かせないものです。

言い換えれば、私たちの生活や消費者、ひいては社会にとって有益な製品やサービスを提供することが企業の社会的責任(CSR)と言えますし、この概念は今日の社会において、非常に重要なものとなっています。

金融の役割とその業務

金融

金融機関の役割

金融とは文字通り「お金を融通する」という意味で、言い換えればお金がある人からない人へお金を流すと言えます。

その業務を行うのが金融機関で、代表例が銀行です。

もちろん、金融機関にタダでお金を預ける人はいませんので、金融機関は預けてもらった分に応じて、預金者に利息を支払います。

一方、お金を借りる人もタダで借りることは出来ず、様々な審査を経て、お金を借りることが出来たら、金融機関に利息を含めて返済しなければいけません。そして、金融機関はこの利息(利ざや)で収益を上げています。

金融機関は世の中にお金を融通することで、企業、ひいては経済を活性化させる役割があります。

日本銀行とその役割について

各国の金融をコントロールする役割を担うのが中央銀行で、日本においては日本銀行がそれに該当します。

日本銀行は一般の銀行とは異なり、下記3点の役割を担っていますので、その点を重点的に理解しましょう。

  • 発券銀行

日本銀行はお金を発券することで、市場における貨幣の流通バランスを調整します。

  • 政府の銀行

政府の資金を管理したり、政府に対してお金を貸す機能を指します。

  • 銀行の銀行

一般の銀行に対してお金を貸し借りします。

日本銀行の公開市場操作について

日本銀行は一般の銀行などに対してお金の流通量を調整することで、市場の経済活動をコントロールしています。これを公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)と言い、これは日本銀行が行う金融政策の一部です。

例えば、市場にお金がありふれている状態になれば、商品やサービスの価格は上昇してしまい、これが過度な状態になってしまうことを防ぐために、市場のお金を吸収します。

一方で、市場にお金が乏しい状態になれば、経済活動が停滞してしまうので、積極的にお金を市場へ流入させようとします。

労働者の権利と法律

労働者

労働三権について

日本国憲法第28条では、労働三権を労働者に保障しています。

  • 団結権

労働者が使用者と対等な立場で交渉出来るように労働組合を結成する権利のことを団結権と言います。

  • 団体交渉権

労働者が労働条件の維持・改善や地位の向上を求めて団体で交渉する権利を団体交渉権と言います。

  • 団体行動権

労働者が使用者に要求を叶えてもらえるように団体で行動する権利を団体行動権争議権)と言います。

具体的には、労働者が一斉に業務を取りやめること(ストライキ)や、業務量を落とすことで生産性を落とすこと(サボタージュ:サボるの語源)、使用者が販売する商品を買わないように呼び掛けること(ボイコット)などが挙げられます。

労働三法について

日本国憲法第27条では、勤労の権利や勤務条件の基準などについて触れられており、それに基づいた労働三法と呼ばれる3つの法律があります。

  • 労働基準法

労働するうえでのルール(1週間の労働時間や休日数など)や賃金など、基本的な内容を取りまとめた法律を労働基準法と言います。

  • 労働組合法

使用者と様々な交渉が出来るように労働組合の組織を保障した法律を労働組合法と言います。

  • 労働関係調整法

労働に関するトラブルが起きないようにあらかじめ様々な事柄を決めておいたり、時には第三者による仲裁などを認めたりした内容が取りまとめられている法律を労働関係調整法と言います。

その他の法律について

その他、注目しておくべき法律は1985年に制定された男女雇用機会均等法です。

これは業務内容や賃金、採用面において、男女間の雇用差別を撤廃する目的で制定されたもので、1997年には禁止規定や制裁措置に関する内容が加えられ、より強制力が強くなりました。

さいごに

まとめ
本単元は経済をテーマにした単元の中で最も内容が難しく、覚えるべき点が多いことが特徴です。

しかし、新聞やニュースに登場する話題が多いことから、決して私たちに関係のない話ではありません。

企業が生産活動を行うには資金が必要になりますし、その裏側には金融の存在が必ず必要になります。もちろん、お金があるだけでは成り立たず、そこで働く人がいることで、はじめて経済が回るのです。

このように、これらのジャンルは決して独立したものではなく、互いに関わりあっているため、一つひとつ丁寧に学習することが望ましいと言えるでしょう。

しかし、一度に全てを理解しようとはせずに、分からない点は繰り返し何度も学習していくことが大切です。

経済を取り扱う単元の中でも、最も難しい単元の一つと言えますが、その重要度から非常に出題されやすい単元であるともいえます。しかし、本単元に限らず、経済の全単元では「お金」に注目することが重要です。例えば、お金はどのように生まれているのか・流れてくるのかといったことですが、これは経済がお金に大きな焦点を当てるテーマだからと言えるでしょう。
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