家計と消費者 | 10分でわかる 中学公民まとめ
本単元から経済の単元になりますが、その導入テーマとして家計と消費者について取り上げます。家計とはなにか、価格はどのように決まるのかなど、経済の仕組みを理解する第一歩として学習に臨みましょう。
はじめに
本単元は中学公民の中では経済に属するテーマで、私たちの日常生活にも大きく関わってくる単元と言っても過言ではありません。
普段何気なく耳にする「家計」とはどのようなものであるのか、そして私たちが商品やサービスを購入する際に必ず向き合わなければいけない価格とその裏側や消費者としての権利を理解することが大きな目標です。
本単元の学習は「ただの公民」のように捉えるのではなく、私たちの日常生活でどのような作用が働いているのかなどを当事者として考えることで、賢い消費者になることが望まれます。
経済の導入テーマとしては最適な単元ですので、本格的な経済の単元に入る前に、初歩的な経済知識を身につけていきましょう。
家計について
家計とは?
普段よく耳にする家計とは一体どのような意味合いがあるのでしょうか。
家計とは私たちが属する家庭(家族)の中で行われるお金のやりくりのことを指します。
私たちはお金がなければ生活することが出来ません。一方でお金があっても使わなければ意味がないため、お金を得て使ってを繰り返すことで私たちの生活は営まれています。
家計のやりくり
家計や収入と支出のバランスを取ることが非常に重要です。
収入の代表例には給料が挙げられます。私たちの両親は一家を支えるために働いて、その対価として給料を得るのです。その他には不動産を貸すことによって得られる不動産収入や退職後に支給される年金なども家計の収入に該当します。
一方で、支出の代表例には税金や食費、住居費、交通費、教育費などが挙げられます。いずれも私たちが暮らしていくためには必要不可欠なものばかりです。
本項目の冒頭に記載した通り、家計のやりくりはバランスが重要になります。
それは使いすぎても使わなすぎてもいけません。
具体的な事例を挙げると、月20万円の収入があったとします。その20万円すべてを自由に使えるわけではありません。そこから税金が引かれたり食費が引かれたりなどして、手元に残るお金は元の収入から減ります。
当たり前ですが、収入以上に支出してしまえば赤字となり、家計は破綻してしまいますので、お金はどのように得て使っていくのかということが非常に重要になると言えるでしょう。
先進国と発展途上国における家計の違い
家計という概念は世界共通ですが、そのやりくりは先進国と発展途上国の間では大きな違いが生じてきます。
その中でも特に顕著な違いが生まれるのは食費です。
発展途上国は先進国と比較すると収入が少なくなりますが、食費は生きていくうえで欠かすことが出来ません。したがって、家計の支出に占める食費の割合が大きくなります。
一方で、先進国は収入が多く食費以外にも使用出来る支出が増えるため、家計の支出に占める食費の割合が相対的に小さくなります。
このように発展途上国、さらに言えば収入の少ない家庭になるにつれ、家計の支出に占める食費の割合が大きくなることをエンゲルの法則といい、その割合はエンゲル係数と呼ばれます。
消費者の権利と様々な問題
消費者とは?
消費者とは様々な財やサービスを利用する人のこと、つまり私たちのことを指します。
財とは私たちにとってメリットがあるものです。英語ではgoods(良いもの:グッズ)と言われ、世の中の財はお金を支払うことで得ることが出来ます。
サービスとは私たちがお金を払って髪を切ってもらったりコース料理を提供してもらったりなど、一般的には形がないものです。
私たちは得たお金(収入)を何にも使用しないのではなく、それを支払って様々な財やサービスを得て、そしてそれらを消費しているのです。
消費者の権利
財やサービスを提供する側からして、それらを提供する代わりにお金を求めることは普通ですが、お金を支払う消費者にも守られるべき権利があります。
消費者の権利は1962年に当時のJ・F・ケネディ米大統領が唱えた、以下の4つが代表的です。どれも考えれば当たり前に思われる内容ですが、今一度内容を理解しておきましょう。
- 安全を求める権利
商品を購入して怪我をしたり健康被害を受けたりすることが予測される場合、消費者は安心して商品を利用することが出来ないということだけでなく、そもそも商品の購入には至らないでしょう。
私たちが安全に商品を使えるよう保護されなければ、消費者としてお金を払うわけにはいきません。
そのため、商品を提供者は安全な商品を届けることが消費者保護に繋がります。
- 知らされる権利
消費者向けに販売する商品が一体どのような特徴を持つのか知らされていない場合、消費者が不利益を被る可能性があります。
私たちは商品を購入する際にそれがどのような性質を持っているのかを確認したうえで購入するかどうかを決定することが多いので、商品の情報は広く開示されていなければいけません。
これはお金を支払う以上、消費者にとっては重要な情報になります。
- 選ぶ権利
当たり前ですが、私たちは商品の購入を強制されているわけではなく、たくさんの種類がある中から、様々な条件を考慮して商品を選択します。
後述しますが、選ぶ権利がない(もしくは選択肢が少ない)場合、不当に高い金額設定になっている商品を購入しなければいけなくなりますので、それは消費者保護の観点で見ると良いことではありません。
- 意見を聞いてもらう権利
例えば、消費者が商品を使用して不満に思った部分を企業(場合によって国家規模になることも)へ聞いてもらうことで、商品の質向上や再発防止に役立てることが出来ます。
このように商品は消費者の意見を反映させることでより良いものへと進化していきますので、この権利を尊重することでより良い社会へ発展する可能性があるのです。
消費者被害と保護
現在の日本は商品の大量生産・大量消費社会となっていますが、その中で私たち消費者がその商品を使用し被害を受けたという事例が後を絶ちません。
これは企業が利益を追求するあまり、大量生産する際の安全管理を怠ったことで消費者被害を発生した事例が多く見られます。
この被害事例ですが、表示されていた性能とは異なっていた、商品が元から壊れていた、食品に異常が見つかった(この場合、企業が自主回収するといったニュースが定期的に見られます)などが挙げられます。
このような消費者被害を食い止めるために、1995年(平成7年)には製造物責任法(PL法)を制定し、消費者が購入した商品の欠陥が原因で被害を受けた場合、企業は過失の有無を問わずに損害倍書責任を果たさなければいけなくなりました。
さらには、2004年(平成16年)に先述の消費者4つの権利を保障した消費者基本法を制定しています。
2009年(平成21年)には消費者庁を設置し、より消費者が安心した生活を送れるように国をあげて取り組んでいく体制を強化しました。
また、訪問販売で購入した商品を一定期間で契約解除出来るクーリングオフ制度というものもあります。これと同様に2001年(平成13年)に制定された消費者契約法も不当に結んだ契約を一定期間取り消すことが出来る重要な法律です。
困ったときには、国民生活センターや各地方にある消費生活センターに相談出来るのも消費者の権利を守る仕組みと言えます。
価格の決まり方
基本的な価格の考え方
お店で販売されている商品やサービスの価格はどのように決められているのでしょうか。ここでは具体的な事例を取り上げてみてきましょう。
例えば、1個2,000円の商品Aがあるとします。この商品の大まかな内訳として、商品Aを作るためにかかった費用(生産費)やこれを作った人へ支払う費用(人件費)、さらには商品を販売する企業の利益などが挙げられます。
当然ですが、商品Aを作る際にかかったお金が1,000円の場合、1,000円で販売してしまうとこれを作った意味がありませんので、先述の人件費や企業の利益を考慮して2,000円で価格設定されます。
つまり、商品の価格は様々な経費と利益が組み合わさって構成されていると言えるのです。
そのため、一般的には、生産するのに時間がかかったり高度な技術が必要とされたりする商品の価格は相対的に高くなりますし、そうでないものについては価格が低くなります。
市場価格について
先述の項目で価格の成り立ちについて記載しましたが、価格を決定する要素はこれだけではありません。
例えば、2,000円の商品Aは価格設定が高く、中々消費者に購入してもらえない場合、売り手はその価格が下げざるを得ないのです。
しかし、仮に1,000円で販売した場合、価格設定が安く消費者にはものすごく売れますが、利益が出ないどころか赤字になってしまうため、売り手にとっては損失になります。
消費者は出来るだけ安く買いたいという気持ちが働きますし、売り手は出来るだけ高く売りたいと考えるのが一般的です。
また、そもそもの商品販売数が少ない場合には価格が上昇し、多い場合には価格が下落します。
例えば、非常に価値の高い商品Bがあったとして、それを求める人が多い場合、多少価格が高くても売れてしまいます。
一方で、商品Cは大量に余っている場合、売り手は何とかして売りたいと考え、その結果、価格を低めに設定して消費者に購入してもらえるようにします。
市場は消費者の需要と売り手の供給で成り立っています。
需要とは消費者が求めること(欲しいと思うこと)で、供給は売り手がどれだけの商品数を売ることが出来るかというものです。
一般的に、商品の価格が上昇すれば需要量は減り供給量は増えます。例えば、商品Aの価格が3,000円になれば消費者は購入しづらくなり、市場には商品Aが余ってしまうということです。
逆に、商品の価格が下落すれば需要量は増え供給量は減ります。例えば、商品Aの価格が1,500円になれば消費者は購入しやすくなり、市場には商品Aが少なくなってしまうということです。
このように、需要と供給のバランスによって成り立つ価格のことを市場価格と言い、需要と供給が一致する価格のことを均衡価格と言います。
独占価格について
どうしてもジュースを飲みたいと思ったとき、私たちは様々な企業のジュースから価格や味などを考慮して購入するジュースを決めます。
しかし、このジュースを販売する企業が1社しかなかったとしたらどうでしょうか。
消費者の需要は大きいにも関わらず、競合他社がいないため、企業が自由に価格を設定することが出来ます。
この価格を独占価格と言いますが、あまりに高ければ消費者には不利益になってしまいますし、様々な企業がいるからこそ、価格競争が発生して、よりよい商品を消費者に届けようとする状態になります。
独占市場にはデメリットが多いため、日本では独占禁止法が制定されており、それを公正取引委員会が運用することで、適正な市場になるよう促され、消費者の権利が守られるというわけです。
その他の価格には何があるの?
商品やサービスを提供する企業が少ない状態を寡占(かせん)と言いますが、この状態も独占と同じようなデメリットがあります。
しかし、例えば、電気やガス、水道などは参入出来る企業が少なく、独占(寡占)状態になりやすいです。
それに加え、私たちの生活には欠かすことが出来ないものであるため、不当な価格が設定された場合、私たち消費者は大きな打撃を受けます。
このような場合、企業ではなく国や地方自治体が一定の価格を設定し、それを公共料金という形で私たちから徴収します。
こうすることで私たちも安心して生活を送ることが出来ますし、消費者の権利が守られます。
さいごに
本単元は私たちの生活にも大きく関わっているだけでなく、非常に身近な内容です。
だからこそ、基本的な内容は押さえておく必要がありますし、身近な内容であるからこそ、今後の経済に関する単元では非常に重要になってきます。
特に経済は「お金」に焦点を当てる機会が多いため、家計の概要と価格の決まり方については今後の学習に活かせるように内容を理解しておきましょう。
また、先述の通り、大量消費・大量生産の時代ですし、ネットで動画を閲覧するなど形のないサービスが多く登場しているからこそ、私たち消費者には便利な反面、様々な問題が発生しています。
私たちが生活するうえで、一人の消費者として賢くなれるように消費者の権利を理解しておけば、実際の生活でも活かすことが出来ます。