選挙と政党 | 10分でわかる 中学公民まとめ

選挙と政党に関する内容は、私たちが日頃から触れることが多いテーマです。しかし、現在当たり前になっていることでも、時代の移り変わりとともにアップデートされてきました。そして、今日で見られる問題にも注目していくことで、政治を多角的に見ていけるようにしましょう。

はじめに

選挙と政党_10分でわかる_中学公民まとめ
本単元の冒頭では日本の選挙制度がどのように歩んできたか、そしてそもそも選挙はどのようなルールの下で行われるのか、現行の選挙制度で問題となっているテーマについて学習していきます。

そして、私たちが選挙で投票する候補者が所属する政党ってどういった存在なのか、ニュースでよく耳にする「世論」の意味や役割を理解していくことがゴールです。

2016年には選挙権の年齢が引き下げられ、より一層私たちにとって選挙は身近な存在となりました。

現在、国民の多くが選挙に参加することが出来ますが、なにもこれは選挙制度が始まった当初から続いているものではありません。

私たちにとって「当たり前」であるものが当たり前ではなかったという背景を押さえて、どのような部分に違いがあったのかに注目することが大切です。

日本における選挙制度の歩み

歩み

公職選挙法について

日本には選挙のルールを定めた公職選挙法という法律が存在します。これは1950年に制定され、これは現在の日本における、いわば選挙のルールブックのようなものです。

2016年にこの公職選挙法が改正され、選挙権の年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。

それまではそれぞれの選挙が別々の法律に基づいて実施されていたため、公職選挙法でそれらを統一した形になります。

明治時代の選挙制度

今では18歳以上の男女に広く認められている選挙権ですが、選挙制度が整備された明治時代はそのような制度ではありませんでした。

明治時代に制定されていた当時の選挙法では、満25歳以上の男性直接国税15円以上を納めていた人にしか選挙権は与えられていなかったのです。

15円という値は今の15円と同等の価値ではなく、これらの厳しい条件を満たす人は全人口の1%ほどしかいませんでした。

ここから、選挙制度が整備された当初はほとんどの人が選挙に参加することが出来なかったことが読み取れます。

昭和に実現した普通選挙法の制定

明治維新以降、日本は急速な工業化や近代化が進行し、アジアはもとより世界でも有数の大国として、その地位をより強固なものにしていきました。

その中で日本においても民主主義の普及を目的とした国民の運動が活発化していきます。

これがきっかけに起きたのが大正デモクラシーで、この際に選挙権に関する参加条件の緩和を求める流れが発生したのです。

そして、1925年に当時の加藤高明内閣が普通選挙法を制定し、満25歳以上の男性に選挙権が与えられ、1928年の第16回衆議院議員選挙で適用されました。さらには以前は納税額に関する一定条件があったわけですが、これは撤廃されたのです。

これによって、有権者の割合は全人口の20%ほどにまで増加しましたが、それでもまだ全体の5分の1ほどで女性には選挙権が認められていませんでした。

女性の選挙権が実現したのは戦後

先述の通り、1925年の普通選挙法制定によって、満25歳以上の男性に選挙権が認められたわけですが、女性には依然として選挙に参加する権利が与えられていなかったわけです。

では、女性の選挙権が認められたのはいつになるのか。

それは第二次世界大戦直後に普通選挙法が改正された1945年12月になります。

これによって、満20歳以上の男女に選挙権が認められることになり、1946年にはこの条件下で戦後初の衆議院選挙が実施されたのです。

選挙権年齢の引き下げ

先述の通り、2016年には公職選挙法が改正され、選挙権は満18歳以上の男女に与えられていますが、選挙権年齢の引き下げにはどのような背景があるのでしょうか。

これは若者の政治参加をより広く普及させていきたいという思惑があります。

現在、日本は世界でも有数の超高齢社会になっており、若者と比較すると投票率が高いお年寄りをターゲットにした政策が広く掲げられている状態になっているのです(シルバー民主主義)。

こういった中で、社会を変えていくには若者の力が必要になります。より若いうちから政治を考えるきっかけを与えることで、国を変えていかなければいけません。

しかし、18歳にはまだ早いのではないかと思う方もいるかもしれませんが、オーストリアやアルゼンチン、キューバなどでは16歳からの投票出来る権利があるなど、世界では若者の政治参加を促進させる動きがみられます。
(もちろん20歳以上でなければ選挙権が付与されない国もたくさんあります)

選挙の原則と今日の問題

選挙と政党

4大原則

公平な選挙を実現するうえで、そのルールを明確に決めておくことが重要です。

日本においてはそのルールが4つありますので、それらを覚えておきましょう。

  • 普通選挙

現在の選挙制度は満18歳以上の男女であれば誰でも投票することが出来ますが、このように幅広い人が選挙に参加出来る選挙を普通選挙と言います。

一方で、明治時代のように細かい条件が制定され一定の人しか参加することが出来ない選挙を制限選挙と言い、日本では現代に近づくにつれ、その色合いは薄まっていきました。

  • 平等選挙

投票する人の選挙権の価値はすべて等しい選挙を平等選挙と言います。

選挙において、出身地・収入・社会的地位などによって選挙権の価値が異なれば、民主政治に反してしまうので、平等選挙が維持されているのです。

なお、特定の人が複数票を投じることが出来る場合も平等選挙に反します。

  • 秘密選挙

今日の選挙は投票時に誰が誰に投票したのかは公開されない無記名投票です。これは誰に投票したのかについて責任を問われることがなく、公平な選挙制度を維持するうえで欠かせない制度と言えるでしょう。

このように、投票に関する情報を秘密にする選挙を秘密選挙と言います。

  • 直接選挙

投票者が直接候補者に選挙することを直接選挙と言います。

投票者が候補者を選ぶことは当たり前のことではないかと思う方もいるかもしれませんが、そのような制度ではない国もあるのです。

その代表例がアメリカですが、ここでは有権者が大統領選挙人を選挙で選び、選ばれた当該の人がアメリカ大統領を選挙する形になっています。

このように、有権者が間接的に候補者を選ぶ選挙を間接選挙と言います。

衆議院選挙のルール

日本では国政選挙(衆議院・参議院選挙)から地方選挙(都道府県知事や市町村長など)まで、様々な種類の選挙が行われていますが、その中で特に理解しておかなければいけないものが衆議院選挙のルールです。

衆議院選挙では小選挙区比例代表並立制が導入されています。

非常に難しい言葉ですが、これは小選挙区選挙比例代表選挙を並行して行うと意味があるのです。

原則、衆議院選挙の投票日には2枚の紙をもらいます。1枚は小選挙区選挙用でもう1枚は比例代表選挙用です。

では、これらの選挙はどういったものなのでしょうか。

  • 小選挙区制選挙

小選挙区とは定員が1名の選挙区のことを指し、その1名を選ぶ選挙のことを小選挙区選挙と言います。

2019年12月末時点での小選挙区数は全国で289です。簡単に言えば、衆議院選挙では289人が小選挙区選挙で選ばれるのです。

  • 比例代表選挙

各政党の得票数に応じて議席を分け与える選挙を比例代表選挙と言います。

では、具体的にどのような方法で議席を分け与えるのかという点について、現在はドント方式という手法が取り入れられています。

具体的な事例を挙げてみていきましょう。
ドント方式
上記の表は定数を6とした場合のドント方式による試算例です。

ドント方式では各政党の得票数を÷1、÷2…と割っていき、その数字を算出していきます。

そのあと、数字が大きくなる順に議席を6つ配分して完了です。

上記例の場合はA党が3議席、B党が2議席、C党が1議席となります。

2019年12月末時点で衆議院選挙の比例代表選挙からは176名が選ばれます。

一票の格差問題について

今日の選挙において大きな問題とされているのが一票の格差です。

一票の格差とは、文字通り有権者が投じる一票の価値に格差が生じている状態を指します。

これは平等選挙が保障されている以上、大きな問題と言えますが、具体的にどういった状態なのでしょうか。

  • 具体的な事例

一票の格差は人口の多い都市部と人口の少ない地方で最大化します。

例えば、A区とB区の2選挙区があったとします。

A区は人口に多さに比例して有権者が多く、候補者が当選するには多くの票数が必要です。一方B区は人口が少なく有権者が少ないため、A区と比較すると少ない票数で当選出来ます。

仮にB区で当選するには2万票だとしましょう。しかし、同じ2万票でも有権者の多いA区では、その候補者は落選となってしまいます。

ここで一つ問題になるのは、同じ2万票でも「当選するB区」よりも「落選するA区」の方が一票の価値が低いということになってしまうことです。

選挙で落選した票は死票と呼ばれますが、有権者の多い選挙区になればなるほど、死票が多くなり、民意が反映されにくくなるという問題点もあります。

この一票の格差は各選挙区に該当する有権者数の違いから生じる問題のため、根本的な解決は極めて難しいと言えるでしょう。

しかし、この格差を是正するために、有権者の多い選挙区では定数を増やしたり、逆に有権者の少ない選挙区では定数を減らしたりして、一票の価値を可能な範囲で同等にする措置が取られてきました。

非常に大きな問題であるため、内容と格差が生まれる背景を理解しておきましょう。

選挙に行かない人たち

昨今では選挙に行かない人が増加している点も大きな課題となっています。

国民の意見が反映されやすい衆議院選挙において、2017年実施分の投票率は53.68%と戦後2番目に低い数値となりました。

例えば、お年寄りと比較して投票率が低い若者向けの政策を掲げる政治家が少なくなってしまい、若者が直面する問題を解決するような潮流が生まれない可能性があります。

それはなぜかと言えば、理由は簡単です。

政治家はたくさん投票してくれる層に向けて政策を掲げます。

投票率が高い層はお年寄りであるため、彼らの向けた政策を掲げ、期待に応えようとするわけです。

多くの若者が投票するようになれば、若者の期待に応えようとする政治家が多く登場してくるでしょう。

政党と世論

政党と世論

政党とは?

政党とは同じ政治的意見を持つ人が集まり政治を行う組織のことです。2019年12月末時点で、自由民主党・立憲民主党・公明党・日本維新の会・社会民主党など、政治情勢に合わせて様々な政党が分立しており、日本は多党制となっています。

政党は選挙の際、政策(マニフェスト)を掲げ、有権者の支持を得て、国会で政治を行いますが、政権を運営する政党を与党と言い、主に与党から内閣を組織し政治を行います(政党政治)。
一方、与党の政治を監視しながら責任を追及していく政党を野党と言います。

世論とは?

世論とは、世間一般の大多数が共通で持っている意見のことを指します。もっと分かりやすく言うのであれば「国民の意見」とでも言いましょう。

例えば、政権与党がある政策を実施しようとしている中、それを大多数の国民が反対しているのであればそれが世論です。

政治の究極的な目標は世論をすべて政治に反映させることですが、それは現実的に不可能と言えます。

そのため、世論を広く反映させるために取られる方法が選挙です。

先述の通り、選挙時に政党が公約を掲げ、それを見て有権者はどの党に投票するかを決めます。

ですので、選挙で有権者に選ばれた政党や個人は相対的に世論を反映していると言えるのです。

もっと言えば、世論は政党(政府)を監視する役割があると言えるでしょう。

もし、投票した政党の政策に納得いかない場合は次の選挙でその政党に投票しなければ良い話です。

その他にも、デモを実施したり圧力団体として政党に圧力をかけたりするなどの方法を通して、世論を政治に取り入れていきます。

さいごに

まとめ
本単元で特に注目したいことは日本の選挙制度が具体的にどのように推移してきたのか、そして選挙の基本的なルールと昨今の課題です。

私たちにも大きく関係するテーマであるため、穴埋めや選択肢だけでなく記述問題でも出題されやすい傾向があります。

本稿で取り扱った内容は日常のニュースでも多く取り上げられるため、それらにアンテナを張っておくことも重要です。

そうすることで、中学公民では出題されやすい時事問題の対策にもなりますので、効率的な学習を進めていくうえでは欠かせないと言えるでしょう。

選挙制度においては細かい条件が問われやすいため、選挙権の年齢や性別に関する時代の変遷を押さえておきたいところです。また、選挙に係るルールや問題点、政党などについてはそれらを学習しておくことで、今後の生活にも活かせますので、一般教養として身につけましょう。
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